『多読術』レビュー|博覧強記の読書家、松岡正剛の東洋的読書道とは?

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今回ご紹介する本は、松岡正剛さんが書かれた『多読術』です。

☆ 今回のポイント ☆ <簡単な内容紹介>

■内容紹介(アマゾンより)
読書の楽しみを知れば、自然と本はたくさん読めます。著者、松岡正剛の読書遍歴を振り返り、日頃の読書の方法を紹介しながら、達人による多読のコツを伝授します。「棚から選書する方法」「読書する場所」「最初に読むべき頁」等々、そのコツは多岐にわたります。本書を読んで、あなたに適した読書スタイルを再発見してみてください。

■内容(アマゾン「BOOK」データベースより)
読書の楽しみを知れば、自然と本はたくさん読めます。著者の読書遍歴を振り返り、日頃の読書の方法を紹介。本書を読めば自分に適した読書スタイルがきっと見つかります。読書の達人による多読のコツを伝授。
松岡 正剛 著、筑摩書房(2009/4/8)

一定量の本を読んでいらっしゃる方には、ぜひともおすすめしたい一冊。「過去の読書経験、現在進行中の読書案件、そうしたものを振りかえってみて、ものすごーく多くの発見を与えてくれる」・・・、そんな本です。

ロングセラーの予感がする、実に素晴らしい本。久しぶりにワクワクしながら読めたヒット作品です。




博覧強記の読書家、松岡正剛さん

著者である松岡正剛さんは、博覧強記の読書家として、つとに有名です。

いかにすごいかは、一日一冊の書評を展開する、「千夜千冊
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya.html)をちょっと見ただけでも、その、すさまじいまでの情念が感じられるはずです。

私は昔から松岡正剛さんのことを注目していたのですが、そのとっつきにくさゆえ、ついつい回避してきたのが実態。でも、知り合いの社長の中でも、とりわけ文化的なことに造詣のある社長たちに松岡正剛さんを慕う人が多く、「いつか松岡正剛ワールドを体感したい!」と思っていました。

今回、「新書」で松岡正剛さんの本が登場し、しかも発行わずか1ヶ月で4刷という反響ぶり。

「これは読まねば!」と一念発起して、頑張って読んでみた次第です。読んで正解でした。最近の新書ラッシュで、質が落ちている状況下、これだけ良質な新書は、はっきり言って、かなり珍しいです。

読書を指南する本は多いけれど

読書術と呼ばれるジャンルの本は、非常にたくさんあります。

どれも似たり寄ったりの本ばかりの印象がありますが、とりわけ古典として重視されているのは、モーティマー・J. アドラーの「本を読む本」ですね。

同書が、「ロジカル」な「リーディング」を推奨する、いわば、西洋的な「読書メソッド」であるとするならば・・・、この『多読術』は、「エモーショナル」な、「書との対話」を推奨する、いわば、東洋的な「読書道」だと位置づけることが可能だと思います。

前者は、論理的に分解しながら攻めて吸収していくイメージなのに対し、後者は、読み手の全人的な姿勢でもって、相互作用で創造していくイメージ。
(厳密には、エモーショナルとは言えず、著者の文脈からすれば「エディトリアル」が正しいはずですが、わかりやすく、あえてエモーショナルと書きました)

いやぁ、素晴らしい本です。興奮しながら読みました(笑)。

「多読」の意味と方法をQ&A形式で

本書は「編集者との対話」という珍しい形式をとっていて、Q&A形式で、「多読」の意味と方法についてが展開されています。

相当な読書実績を経ていらっしゃるだけあって、それゆえの表現をされています。この表現が、これまた、刺さるんですよね・・・。すとんと落ちるのです。

例えば、書物は「世の中の痛快な交差点」であり、読書の活動は「言葉に入って言葉の外に出る」奥深さがあると。

あるいは・・・、類似テーマの本をいくつも読み進めていくと、勝手に読書スピードが上がっていく点も、それは、「略図的原型」ができあがっていくからで、その自動生成されたマッピングゆえに、スピードが加速してしまうのだ、と。

このあたり、読書家の方であれば、ゾクゾクするところ、きっとあるのではないでしょうか? 表現力が素晴らしい。

「表現できないのは、その人自身がわかっていないからだ」

しかも、単なる読み手のプロであるというだけでなく、読み手であり、書き手であり、それをつなぐ編集者でもあって・・・という「3者におけるプロである」という特異な経歴もあって、その表現力は、非常に的確です(そして美しい)。

「読書」とは若干ズレますが、例えば表現力の問題について。

よく、「これ、うまく表現できないんだよね・・・」というケースがありますが、松岡正剛さんに言わせると、「表現できないのは、その人自身がわかっていないからだ」と手厳しく指摘。

たしかに世の中には、言葉にできないことも多い。しかし世の中で使う言葉の限界と、自分で使う言葉の限界を勘違いするな、と。うまく表現しきれないような複雑なこともあるが、およそ大半は、その人自身の理解力と表現力の無さに帰結すると。

こういう心がけは、普段きちんともっているかどうかで、生きる世界も、人とのコミュニケーション密度も大きく変わってくる気がしますね。

魅惑的な表現が盛り沢山の松岡ワールド

その他にも、魅惑的な表現が盛り沢山です。

例えば・・・、前述の東洋的読書道、ともからんでくるのですが、

「読書は、読み手と書き手の交際」であり、
「ともかく書物というのは、(中略)読み手がいつ、どのように読んだかという条件とともに生きているんです。客観的な良書なんてものはないし、客観的な読書体系なんてものもないんです」
ということ。

「書物の本文は著者が書いたものだが、その中のどの部分かには、読み手が待っていた意味がひそんでいる読書はそういう潜伏性をもってパンドラの箱を開けるということだ」と。

読み手と書き手の相互作用であるからこそ、書物は、「読み手の思考の流れをアラインメントしてくれる存在だ」と。

一定の読書家なら「なるほど!」と共感できるだろうし、なおさら、もっと本を読もう!と思うだろうし、過去に読んできた本の蓄積が、倍旧の意味をもって自らに迫って来るはずなのです。

読書術は「効率」を求めるだけでよいのか?

本書を貫く読書道は、私は大賛成で、もっともっと注目されて良いのでは? と感じました。

読書というものは、読書前からすでに始まっており、「読前、読中、読後」があると。これも前述の「東洋的読書道」とつながるのですが・・・、

近年特に感じられる、効率を重視した読書指南の傾向や出版の傾向、私は、違和感を覚えるのです。「本当にそれでいいの?」と。そうした点からすると、松岡さんが本書で引用している、ダニエル・ベルの言葉は、深く考えさせられるものがあります。

政治が「公正」に追いやられ、
経済が「効率」に追いやられたとき、
文化は「価値」を矛盾をもってかかえざるを得ない、と。

読書ひとつとってみただけでも、こんなに深いのか!!

さて、かなり長くなってきたので、そろそろ閉めますが・・・。

本書は、松岡さんご自身の体験に根ざしたものでありながら、独善的ではなく、非常にバランスのとれた実学となっていて、非常に素晴らしい本だと思いました。

ご自身で作成される「クロニクルノート」や「引用ノート」など、あるいは、本棚へのこだわりなどを拝見すると、非常にマニアックだったりもします。

例えば「東洋的読書道」の原則からして、読む本に応じて、その時の服装も変える!などは、マニアの絶頂という気もしますが、でも、本書を読むと、それが非常に論理的に一貫していることがわかります。

長くなるので割愛しますが、音読の歴史と黙読の歴史、マクルーハンが指摘する、音読と身体感覚の話、このあたりは、非常に示唆的に思いました。ぜひ読んでみて下さい!

内向的なイメージのある読書、でも実は世界につながっている!!

著者が、「多読と討議」を重視する文化は、ぜひ見習うべきだいう点、私も同感です。

自分の周りを見渡してみると、「多忙な人ほどよく本を読んでいる」というのが実感で、会社の経営者でありながら、1日1冊!などと言う方が、意外と珍しくなかったりもします。

そして、そういう人に限って、コミュニケーションもうまくて、日々を幸せに謳歌していたりするんですよね・・・。一般的に、読書好きは内向的なイメージがありますが、実態としては、逆ですね。

まぁ、そこまでの読書量までいかないにしても、「いろいろな本を読むのが好き!」という方には、ぜひともチャレンジしてほしい一冊です。
(でも、「ビジネス書などの即効性ある実用書しか興味が無い!」という人には、あまり向かないかもしれません)

若干とっつきにくい本かもしれません。でも、一定の読書好きなら、ハマると思います。ぜひおすすめです。

#今回のブログ、簡潔にできず、すみません・・・。本当に素晴らしい本なのですよ。
 

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2009年7月6日             渡邉 裕晃

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