約70年前に誕生した、東ジャワ・マラン特有の新言語「マラン語」の魅力

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インドネシアに「マラン語」という言語があるのをご存知ですか?

私は東ジャワにある「マラン」という場所に住んでいます。インドネシア第2の都市「スラバヤ」から南に100キロほど行った場所にある高原都市。オランダ占領期には、オランダ人避暑地としても知られていました。

インドネシアの公用語はインドネシア語ですが、ジャワ島にはジャワ語があり、バリ島にはバリ語がある・・・という具合で、言語の多さはとても有名。先日のブログでも、「インドネシアは使用言語数が707言語と、世界で2番目に多い国!」として、紹介しました。

そんなマランには、「マラン語」という言語があります。しかも、約70年前にできたばかりの言語。この若さ。不思議な感じがしませんか?

東ジャワの教会が主催するマラソンイベントに参加して【写真:マラン語で記載された食事引換券】

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この写真は、先日参加した地元のマラソン大会で配られた食事券。マラン語で書いてあります。

“Nopuk Nakam”と書いてありますが、インドネシア語学習者ならピンと来るかな・・・と。

“Nopuk” は逆に読んで “Kupon” つまり「クーポン」のこと。
“Nakam” も逆に読んで “Makan” つまりインドネシア語で「食べる」のこと。

マラン語の面白さは、「既存の言語を逆さに読む」という点。人造の言語なんです。

そのブログで、私はこんなことを書きました。

海外に行ったら地元のイベントに参加しよう!(東ジャワの教会が主催するマラソンイベントに参加して)
これ、実はマラン語なのです。私が住む「マラン」というエリアだけで通用する言語。特徴は、地元で使われるインドネシア語やジャワ語の単語を、すべてひっくり返して使うという言語。

だから、「クーポン=Kopon」は、「Nopuk」になり、「食べる=Makan」は「Nakam」になります。むかし、インドネシア独立運動の際に、オランダ軍やイギリス軍のスパイを摘発すべく編み出された言語なんですよ。面白くないですか?

インドネシア語で「おはようございます」は「スラマット・パギ」で「Selamat pagi」ですが、マラン語だと「タマレス・イガップ」になります。「Tamales igap」ですね。

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もしかしたら「マラン語」に興味のある人もいるかもしれないと思い、改めてネットで検索して調べて直してみました。

ちなみに「マラン」の場所は、こちら。

先述の通り「マラン語」は、インドネシア独立運動の際に、オランダ軍やイギリス軍のスパイを摘発すべく編み出された言語。当時マランで活動していた「市民ゲリラグループ」が、秘密の保持のために、つまり、情報の漏えいを防ぐため、そして敵か味方かを識別するツールとして生み出されたものなのです。

第2次大戦で日本が撤退したあとのインドネシア。再びオランダが再占領を目指してインドネシアにやってきます。この時、インドネシアも独立をかけ、すさまじい戦いが繰り広げられます。

そんな中、オランダ軍もたくさんのスパイを派遣し、ゲリラグループの情報を取りに行こうとします。中にはインドネシアの地元の人がスパイとして送り込まれることも。当然、インドネシア語だったり、地元で使われるジャワ語も理解する・・・。情報は筒抜けになります。

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そこでマランの「市民ゲリラグループ」、記録によれば、Suyudi Raharnoという人物は、「仲間たちのために新しい言語をつくろう」と考えたようなのです。メンバーのアイデンティティーを保つことができ、情報の安全を守るためには・・・と。

それは、パスワードよりも豊かな言語である必要があり、かつ、公用語であるインドネシア語や、地方語(ジャワ語、マドゥラ語、アラブ語、中国語)の文法に縛られないものを・・・と考えたとき、様々な言語を取り入れて「逆に読む」という方法を思いついたといいます。

でも、実際のところ、逆に読むって難しいですよね。

「おはようございます」は「スラマット・パギ」で「Selamat pagi」ですが、これを聞いて急に逆から「タマレス・イガップだ!」って言える人は、そうそういないのではないかと。「Tamales igap」になるわけですが、ちょっとは考えてしまいますよね・・・。

以前、マランのレストランで店員を読んだら「オイ・サム!」って言われたことがあります。

「なんのことだろう?」ってしばらく考えていたのですが、「あっ、マラン語か・・・」って。「Oyi Sam」の「Oyi」は、逆に「Iyo」で、ジャワ語の「はい」かなと。「Sam」は逆に「Mas」で、「お兄さん」という意味。「あぁ、なるほど・・・」って、理解するまで時間がかかってしまいましたから。

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そんなふうに言語としての難しさはあるものの、ゲリラグループのメンバーの団結により、毎日親しくこの言語を使うようになり、メンバー間の理解が深まっていくのにそれほどの時間はかからなかったと言います。

でもスパイたちは、いつもそんな会話の中にいるわけではないので言語習得が追いつかず・・。すぐにバレるようになったと。

この言語の特徴は、自由でルールがゆるいこと。いろいろな言語を借りてくることができます。例えば、2年くらいまえに聞いてびっくりしたのは「Wols Wols!」という表現。「なんだろう?」って思ったら、なんと英語の「Slow」をひっくり返しただけなんです。「ゆっくり、ゆっくり・・・」って。

インドネシア語だけでなく、ジャワ語だけでなく、英語からも借りてきてしまう。言語の発達が可能性に満ちているんですよね。

特定の専門用語については、メンバーみんなの同意を必要とするケースもあったようで、というのも逆から読むのが難しい単語については、より適した言語を探してきたり、読み方を変えるなどの工夫を必要としたためです。そういう中で、仲間うちでしかわからない言語が次々に生まれ、結束も固まっていき、スパイの発掘も容易になったということなのかもしれません。

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「警察」を意味する「Polisi」(インドネシア語)は、「Isilop」ではなく「Silop」と規定され、「中国」を意味する単語は、「Cino」(ジャワ語)から引用して、ちょっと変形させて「Onet」になり・・・。

「私」を意味する「Saya」(インドネシア語)は、そのまま「Ayas」になり、でも「君」を意味する「Kamu」(インドネシア語)は、なぜかマドゥラ語の「Riko」から引用して「Okir」にしたり・・・という具合。

言語の柔軟性という意味では、例えば「Tamales Igap Ngalamers」という表現。

「Tamales Igap 」は「Selamat Pagi」で「おはようございます」ですが、「Ngalamers」は、「Ngalam」+「ers」です。「Ngalam」は、現地マランの「Malang」を逆さにしたもので(Ngの組み合わせだけは順番を入れ替えないというルールがあります)、「ers」を付加しているのは英語的表現ですよ。つまり、「おはようございます、マランの皆様!」という感じですね。

どうですか、この柔軟性・・・というか「なんでも、あり!」という性質!

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ただ残念ながら、歴史の積み重なった言語というわけではないので、「これって、言語ではなく、単なる言葉遊びでしょう?」って受け取られるのもたしか。でも、このマラン語って、ものすごく脳を酷使する言語だと思うんですよね。それこそ脳トレの世界。

インドネシアは、流通言語数が世界第2位ということもあって、言語に対する柔軟性は非常に高いと思うんですよね。暮らしていても、みんなが普通に複数の言語をあやつって、異なる言語に対して感じるハードルは、日本と比べると非常に低いな・・・というのが実感。

もっともっとマラン語を楽しめる人が出てくるといいな・・・って願っています。でも、実際のところ「マラン語」を会話で使っている人は、まずいないんですけどね。でも、もっともっと注目されても良いんじゃないかな、とも思っています。

すっごく面白い言語だと思うんですけどね・・・。まいあがっているのは私だけでしょうか・・・。

(参考:samsul.comブログから)
 
■2015年11月25日up
 インドネシア語、英語、ジャワ語、日本語、中国語、マラン語の6つの言語に囲まれて過ごす海外生活

サムスル
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時の運と人の縁を極める日々の記録 】  渡邉 裕晃
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