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「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳す感性(1)
"I love you." というせりふ。
あなたなら、どう訳しますか?
直訳すれば、「私はあなたを愛しています」となります。
□ □ □
でも、好きな人に向かって、
面と向かって「私はあなたを愛しています」と言う人は少ないでしょう。
あまりにも仰々しく、伝わる心も伝わらない気がしてきます。
おそらく、異なる表現をするはずではないでしょうか。
(あえてストレートに! というアプローチも、演出としてありですが)
ぜひ、ここで、
あなたが相手の方に伝えた愛情表現を
思い出してみて下さい。
きっと、いろいろと異なる表現を使っていたはずです。
□ □ □
ただ、いろいろな表現形態があるにしても、
例えば、これを「月が綺麗ですね」と訳すとしたら、
びっくりしませんか?
現代において、
これを愛情の伝達手段として理解してくれる人は、
そうそういないはずです。「何、言ってるの?」となりかねません。
(逆に、これで伝わったとしたら、
その文学的知識としての奥ゆかしさを感じますよね)
□ □ □
さて、この「I love you.」という英語。
明治の時代、
これを「我、汝を愛す」と訳した青年に対し、
「それはおかしい」
そう言ったとされるのが、英語教師をしていた夏目漱石。
「月が綺麗ですね、程度に言っておけば、
まともな女性になら、伝わるはずだ」と。
□ □ □
この話を聞いた時、私は実に素敵だなと感じました。
漱石の感性というよりも、その時代の感性を表しているように思いました。
今となっては想像し難いことですが、
当時、「愛する」という表現は無くて、
「慕う」とか「焦がれる」という表現が主流だったようです。
□ □ □
つまり「love」にあたる日本語は、
そうそう簡単に見つかるものではなかったようなのです。
二葉亭四迷は、
「I love you.」の翻訳に、非常な苦労をしたようで、
こんな訳をあてています。
「(あなたの為なら)死んでもいい」と。
□ □ □
現代の時代環境をふまえれば、
これらの訳を見たところで、
「なんじゃそりゃ?」と思うのも、無理はありません。
でも、だからこそあえて、
こうした表現の裏側にある「感性」に、
もっともっと、注目すべきではないかと私は思うのです。
【このテーマ:次回につづく】
| ■2009年7月 7日 「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳す感性(2) http://www.samsul.com/column/i-love-you2.php |
このコラムは、2009年7月1日に配信したメールマガジンを加筆・転載したものです。
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2009年7月7日 渡邉 裕晃

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コメント
渡邉さん、こんにちは。
じぞうです。ご無沙汰しております。
漱石のそんな「感性」にもっと注目すべきではないか、私も同感です。
つい先日は、オバマ大統領が日本の天皇陛下に面会した際に「お辞儀をした」ことを
「低姿勢過ぎる」と批判した米国メディアが多数あったようです。
そして、その報道を見たり読んだりしたアメリカ人の中にも、
大統領のお辞儀を不快に感じた人が少なくなかったとか。
こうした批判について、ほとんどの日本人は次のように感じていることでしょう。
自分が知っている範囲の知識だけから、
「お辞儀」=「悪いことをして謝罪するときの動作」という“その地域にだけ通用する常識”を絶対視してしまう人たち。
広い世界には「また別の常識や礼儀作法が存在する」かもしれない
ということを想像できない人たちダヨネー、と。
「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳した漱石の名翻訳は、
もちろん日本語についてのセンスがなければ出てこない面もあるでしょうが、
それと同時に英語とイギリス文化さらにはイギリスの歴史やイギリス人の国民性といったものまで理解できて初めて可能になる、
そういう至高の技ではないかと感じます。
それはおそらく「自分の知識をひけらかすため」に勉強したということではないだろうと
私は想像してしまいます。
漱石はおそらく、イギリス文学を読んでいるうちに
「これを書いた人や、ここに書かれているような人たちはいったいどんな暮らしをしているのだろう」
という比較的素朴な疑問を感じ、
そうした疑問を持ちながら、あれこれ小説や文献を読むうちに
漱石の頭の中に「イギリス人の生活している様子」が自然に構築されていき、
そうした積み重ねの結果として、このような訳が出てきたのではないかと私には思えるのです。
まぁ私の勝手な想像ではありますが。(笑)
(続く)
続きです。
オバマ大統領も、初来日に際して
「日本人とはどのような文化を持った国民なのか」、
「天皇とはどのような歴史を背負っている人か」という、
ごく自然な疑問や興味がまずあって、
その上で側近から出されてくる様々な情報を読んで頭に入れていった結果、
いざ対面したときに思わずあのような所作として出てしまった
ということなのではないかと私は思っています。
もしそうだとすると、あのオバマ大統領という人は
本当に尊敬に値する人物だと思います。
我々がブッシュ大統領から感じた印象とは、
(=これは典型的なアメリカの政治家と言われて連想するイメージに近いですが)
ベクトルの向きが逆方向なのではないかと感じました。
我々も「北朝鮮」や「アメリカ」、「在日米軍兵」、「確定死刑囚」、「容疑者」といった国や人に対して、
偏った固定概念やごく少数の集団の中でしか通用しない「常識」によって、
偏った「決め付け」をしていないでしょうか。
私は自分自身について、正直なところ心配です。
故永山則夫死刑囚の一連の著作を読み、
読む前までの自分の視野が狭かったことを感じました。
そして「政治家」「官僚」という人たちについても、
彼らが毎日何を思って仕事をしていて、
どんな悩み・苦労を抱えていて、
どんな生活をしていて、
家族とどんな会話をしているのだろうかということを
きちんと考えてみたことはあるでしょうか。
ここで言っている「きちんと」とは、
週刊誌やテレビやインターネットで言われている批判を一旦頭の中から追い出して、
自分の目と耳と脳みそを使って考えたことがあるだろうか
ということです。
あるいは「学校の先生」や「コンビニの店員さん」にしてもそうです。
「コンビニでたむろしている高校生」だってそうです。
(続く)
続きです。
「北朝鮮人」や「アメリカ人」、「在日米軍兵」、「確定死刑囚」、「容疑者」、
「政治家」、「官僚」、「学校の先生」、「コンビニの店員さん」、「コンビニでたむろしている高校生」
みんな「違う環境」で暮らしている「同じ人間」のはずです。
暮らしている環境は違うのでもちろん相違点はあるだろうけれど、
起きて食べて仕事して寝て、
親や兄弟がいて、恋人や妻や夫がいるかもしれないし、片思いかもしれないし、
「そろそろ結婚しないの?」なんて言われているかもしれないし、
明日会社に行くのはイヤだなと思っているかもしれない。
同じ人間なのでけっこう共通点も多いに違いないと思うのです。
私が苦労しているのと同じように彼らもきっと苦労している。
コンプレックスもある。
想像力があればそのことに気付くことができると思うのです。
我々の多くがイメージする「日本人のいいところ=心の温かさ」は、
このような想像力が働いた結果としての産物だと私は思っています。
ただ、最近の日本人にはそういう想像力がなくなってきているような気がしてなりません。
「相手を思い遣る」それが日本人のいいところ、
古くから伝わる日本人の感性なのだと思います。
私も忘れないようにしたいです。
渡邉さんが指摘しておられる「感性」について、私はこのように解釈しました。(笑)
長文、失礼しました。
じぞう
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