「 やる気にかけては日本に負けぬ!! 」 −バリで出会った経営者−<後編>

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☆ 前回のコラムの要約 ☆
三年前に二ヶ月ほどバリへ旅行をしたときのこと。いろいろな方々と出会って話をしてみたところ、どうやら自分で人生を切り開こうとする人たちが割と多いらしい。では、インドネシアやアメリカにおいて、自分で人生を創っていこうとする人が日本に比べて多いという背景には、いったい何が?
ある日、現地の友人と夕食をとりに出かけることになりました。その友人は別の友達も連れていきたいと言います。そこで、彼らの働いているショッピングセンターに向かいました。
バリにはいくつかのショッピングセンターがありますが、その中の一つ。現地人がよく利用するようなタイプの、ちょっと大きめのショッピングセンターの一角に、小さな宝石店があります。一緒に食事をするメンバーとして加わったのは、その店の経営者と従業員のあわせて3人でした。私は、3人ぐらいなら、まぁ大丈夫だろうと、ほっとしました。というのは、こちらではお金に余裕のある人が費用をまかなうのが通常です。「礼儀」というよりは「当然のこと」であって、いちいちお礼を言われるほどの行為ではないのです。
あまりお金を持ち合わせていなかった私は、いったい何人の食事代を負担しなくてはならないのか、ちょっと心配になっていたのです。「おいおい待てよ。いったいいくらになるんだよ」と友人に小声でささやいてしまったほどでした。ところが、それは杞憂でした。しかもただの杞憂にとどまらず、私にとってはかえって非常にためになる体験となったのです。
その経営者は、まだ30代前半ぐらいの方でした。車に乗せてもらい、レストランへ向かいました。レストランで注文をしてからしばらくして、その経営者は、かたことの日本語で、こんな話をしてくれました。


私は今、宝石を売っています。その前は、全然違う商売をしていました。昔は仕事をもらって一生懸命に働きました。少しずつお金を貯めて頑張りました。ある程度のお金がたまったので、小さなお店を開きました。そこでまた一生懸命、働きました。いっぱい苦労もしました。でも頑張りました。
二年ぐらいして、儲けがたまってきました。そこで私は、それをやめて、また全然違う商売を始めました。勉強しながら、一生懸命に頑張りました。つらいこともありました。でも、一生懸命やると、少しずつ、少しずつ、お金が貯まります。お金も増えていきます。
そこで今度は、また全然違う店を始めました。それがいまの宝石屋です。勉強もしました。いま一生懸命にお店をやっています。少しずつ、儲かってきました。うぅん、そうですね、あと二年、いや三年ぐらいしたら、うまくたまれば、レストランがつくれます。レストランは儲かります。私は、もともとレストランがやりたいのです。私たちが今いる、このレストランみたいなお店です。そのために、私は今までずっと苦労をしながら一生懸命頑張ってきました。
このレストランは、そうですね(まわりを見回して)だいたい毎月○○ぐらいの収入があると思いますね。でも、バリでは、従業員のレベルがとても低いです。しかし、それでもこのお店は儲かっています。だから、従業員のマナーとサービスをきちんとすれば、もっと儲かるお店ができると思います。そのために私はいま頑張っています。それが私の夢なんです。いまは苦労もしているし、失敗もあります。でも、いつかレストランをつくりたい。だから、仕事は楽しいです……。
三年も前のことなので、細かい部分までは覚えていません。私の記憶をたどるかぎりでは、ざっとそんな感じのお話だったと思います。私は当時、学者志望で、経営には関心がありませんでした。ですが、私にとって彼のような生き方は、非常に新鮮に感じられました。ふぅん、こんな面白い人もいるのかぁ、と思いました。そういう人生もあるんだなぁ、と思いました。じわりじわりと、心が動かされていくような気がしました。
そして、そうした観点から周りの人々を見てみた場合、たしかに、ある程度定められた人生を受動的に受け入れていく人もいます。しかし、たとえ生活上の必要に迫られての選択であるにしても、自分で自分の人生を創り上げていこうとする人々が他にもたくさんいたということに気づいたのです。今になって振り返ると、あれがベンチャー精神の原点なのではないかとつくづく思います。大袈裟な言い方かもしれませんが、私はベンチャー経営者から直接のレクチャーを受けたことになります。当時の私は「ベンチャー企業」「ベンチャー経営者」というものを全くと言っていいほど知りませんでした。それだけに夢や計画の進み具合いについてを、また、事業をやることの楽しさややりがいについてを、熱っぽく語る彼の姿は、今でも強く印象に残っています。
このコラム、あるいは、メールマガジン「Samsul’s Choice」の読者の方は、実際にベンチャー企業を経営していらっしゃる方や、起業・経営にお詳しい方も多くいらっしゃるようなので「なにをまたそんな些細なことで……」と思われる方もいらっしゃると思います。はたから見れば、たしかにそうかもしれません。しかし少なくとも私にとっては非常に衝撃的な出来事として受け止められたのです。インドネシアが経済的な危機に直面している昨今、その経営者の方がどうしていらっしゃるのか、本当に気がかりでなりません。
経済状況に不安があるとは言っても、そして素朴な楽観主義であると言われても、それでもなお私は、アジアの若者が未来に向かって挑戦している姿に惹かれてしまいます。たしかにバリに行けば、とっかえひっかえ日本人女性と遊びつつ貢がれて暮らすビーチボーイもいるようです(日程をうまくやりくりして何人もの女性と同時につきあっている人がいて、その人からはそれぞれの女性たちの写真まで見せてもらいました(^^;))。しかし、一見ちゃらちゃらしていそうなビーチボーイでも、陰でせっせと日本語を勉強したり、ビジネススクールに入るためのお金を貯めていたりする人もいます。「いつか日本に行ってみたい」「バリで日本人相手のビジネスがやりたいんだ」「そのためには日本語を勉強したり、ビジネススクールに入って勉強する必要があると思うんだよ」と。職場でシンガポールやオーストラリアの無料研修の話が出ると、「ぜひ行かせてくれ」と飛びつくフットワークの軽さ……。
もちろんバリの事例がインドネシア全体に当てはまるわけではないですし、インドネシアの事例がアジア全体にあてはまるわけでもありません。私が言いたいのは、そういう点での、いわゆる「アジアの人々の元気さ」に強く惹かれてしまうということなのです。
経済危機がおとずれる前から、アジアの経済的基盤の脆弱さを指摘する声はありました。しかしながら、将来の潜在的な可能性をも勘案すれば、やはりアジアは「大きな市場」です。「アメリカのアジア市場に対する依存度は低い」。そんな統計結果もあります。ですが、長期的に考えた場合は、やはり要注目地域であるはずです。マイクロソフトもコンパックも、アジアが元気になってくれないと困ることになるのではないでしょうか。
アジアの停滞で、アジアの庶民が苦しんでいると言います。しかし、同時にアジアの元気を取り戻そうとする、元気な若者たちもいるわけです。私はそこに注目していきたいと思っています。そしてそれは、月並みな言い方かもしれませんが、定められたレールに乗って生きていくことから生まれるのではなく、自分で人生を切り開こうとすることから生まれてくるということを今回の様々な人との出会いを通じて実感させられた思いがしています。「自分を変える」ということは、「一流の人に出会って感動するところから始まる」といいます。「人生を自分でつくりあげるという点にかけては一流である人々が多い」という意味で、アジアはそういう作用が多く発生する場として注目できるのではないかと思うのです。

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