2015年6月、私の住むインドネシアの東ジャワの一部エリアが、
ユネスコの指定する「生物圏保存地域(BR:Biosphere Reserves) 」に
認定されたとのニュースが入りました。
「ブロモ・スメル・トゥングル、アルジュノ」エリア(Bromo-Semeru-Tengger-Arjuno)
と呼ばれる場所がそれにあたります。
私の住むエリアも含め、自然のとっても美しい環境です。
ユネスコの保存地域に指定されたと聞き、とても嬉しい気持ちです。
photo credit: Three Volcanoes – Mt. Bromo, Mt. Batok and Mt. Semeru via photopin (license)
生物圏保存地域、別名は「ユネスコ・エコパーク」
「生物圏保存地域」は「生物圏保護区」とも言われるのですが、
名前が難しいこともあり、日本では「ユネスコエコパーク」と呼ばれています。
ユネスコといえば「世界遺産」の認定をしていることで有名ですが、
この「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」という制度も運営していることは
意外と知られていません。私も今回はじめて知りました。
ちょうど私の住む高原地帯「マラン」からもエリアが近いということもあり、
さっそく調べてみました。このエリアは本当に素敵な場所なんですよ!
「世界遺産」との違いは?
簡単に言ってしまうと、
世界遺産には「自然遺産」「文化遺産」「複合遺産」の3種類がありますが、
「世界自然遺産」は、手付かずの大自然を「保全する」ということに主眼が置かれています。
それに対して「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」は、
「保全と利用の調和を保つ」ということに特徴があります。
現地の豊かな大自然を守るだけでなく、
そこで人が住んだり利用したりしつつ、持続可能な地域として運営していこうということです。
参考までに、日本ではすでに7件が「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」に登録されていて、
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となっています。
【画像:国内のユネスコエコパーク(環境省ホームページより)】
なんとなくイメージはつきますか?
インドネシアで指定された2つのエリアはここ!
今回インドネシアで指定されたエリアは、2つ。
冒頭に書いた、東ジャワの
「ブロモ・スメル・トゥングル、アルジュノ」エリア(Bromo-Semeru-Tengger-Arjuno)に加え、
南スラウェシのスラヤル諸島にある
「タカ・ボネラテ(Taka Bonerate-Kepulauan Selayar)が、
ユネスコに認定されました。
「ブロモ・スメル・トゥングル、アルジュノ」エリアについては、
グーグル・マップで地図を載せると、このようになります。
【画像:ブロモ・スメル・トゥングル、アルジュノを線でつなぐと・・・】
【画像:美しい山に囲まれています!(グーグル衛星写真より)】
「どのあたりか見当がつかない・・・」という方もいるかもしれません。
さらにわかりやすく、
インドネシアの「ジャワ島、バリ島」全図で示すと、このあたり。
(青いマークの「マラン」が私の住んでいる場所です)
【画像:ジャワ島全体で見た時の位置】
それを拡大すると、このようになります。
【画像:東ジャワのエリアマップ】
インドネシアで指定された場所は、これで10ヶ所に
ユネスコの発表によれば、今回20件を追加したことで、
世界120ヶ国、合計651件が「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」に
認定されたことになるそうです。
インドネシアで指定された今回の2件は、
インドネシア国内では9番目と10番目の案件に当たります、
参考までに、インドネシアで過去に認定された8ヶ所は次の通り。
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今回インドネシアで2件の「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」が認定されたことは、
日本では報じられていないニッチネタだと思いますが・・・、
インドネシアでは、
6月10日付の現地「アンタラ通信」の記事で、
「ブロモ・スメルとタカ・ボネラテがユネスコにより承認」
(Bromo-Semeru dan Taka Bonerate diakui UNESCO)と題して報じられています。
また、翌6月11日付けの現地英字紙「The Jakarta Post」でも、
同じく「ユネスコがインドネシアの生物圏保存地域を承認」
(UNESCO recognizes RI biosphere reserves)と題する記事を載せています。
【画像:現地英字紙「ジャカルタポスト」ホームページより】
ちなみに、私の家からは、アルジュナとスメルが見えます。
早朝に家の近所をジョギングする時、いつもアルジュナとスメルを見ながら、
「あぁ、これこそ神の創造物なのだなぁ・・」と、うっとりしています。
美しい高原エリア!
ちなみに、日本の知人に「インドネシアに住んでいます」と言うと、
「灼熱の場所でいいね」とか「いつも夏の陽気でいいな・・・」とか
言われることがあります。
でも私が住む、東ジャワのマランは標高500メートルの高原地帯。
昼の時間こそ暑いものの、
朝と夜はとても涼しくて、実に気持ちよく過ごせる場所です。
なかなか信じてもらえないかもしれませんが、
我が家には冷房があるものの、一度としてスイッチをオンにしたことがないのです。
【画像:同エリアの一風景(観光サイト「Info Tempat Wisata」より)】
見渡す山々も本当に美しくて、強い日差しが緑をイキイキと映し出します。
庭の草木や花も、1日1日と目に見えて成長していくので、
自然のエネルギーの偉大さが、肌感覚で感じられる、そんな場所です。
今回、ユネスコが「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」に認定したと聞いて、
「おっ、ユネスコ、ちゃんと見てるじゃん!」と思ったくらいです(笑)
(ただ、最初に申請するのはインドネシア側なんですけどね)
「人間と生物圏計画」(MAB計画)とは?
参考までに書いておくと、
この「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」の認定というプロジェクトは、
ユネスコが1971年に定めた「人間と生物圏計画(Man and Biosphere Programme:MAB計画)」
というプログラムの中のワンプロジェクトと位置づけられています。
文部科学省のホームページでは、「MAB計画」について、こう説明しています。
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また環境庁のホームページでは、「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」について、
こう説明しています。
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つまり、MAB計画にもとづいて、
世界の貴重な自然エリアを「生物圏保存地域」に認定。
そしてこれを、3つのゾーン、つまり、
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に分けた上で、エリア全体が人間と共生できる状態で維持していけるようにする、
ということですね。
【画像:ユネスコエコパークの3つのゾーニング(環境省ホームページより)】
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前述の通り、「世界自然遺産」が手付かずの大自然を「保全する」という狙いであるのに対し、
「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」は、
「保全と利用の調和を保つ」ということに特徴があります。
「世界遺産」と「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」。
どちらが上で、どちらが下・・・というものではないですね。
「日本MAB計画委員会」のページによると、
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との指摘もありました。
それぞれのエリアに合わせ、
「世界遺産」と「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」という、
異なる維持の仕組みでアプローチしていくというというスタンスが見えてきますね。
と、少し難しくなってしまいましたが、なんとなくわかりましたでしょうか?
魅力あふれるインドネシアの大自然、海も良いけど山も良い!
私が住む自然あふれる東ジャワ。
経済成長にともない、都市をはじめとして、だんだんと自然が失われているところもあります。
でも一方、実際に住んでいると、
自然に恵まれた、とっても素敵な場所だな・・・と日々実感を重ねています。
それこそ「神」を感じるほど。
朝のジョギングだけでなく、山でトレイルランニングなどをしてみると、
目に見えるもの、肌で感じるものが、もう、なんとも言えないのです・・・。
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今回の指定によって、このエリアが実際にどう保全されるのか、
どう共生が維持されていくのか、まだ見えないところもあります。
しかしながら、ユネスコの数々の審査をくぐりぬけて指定に至ったことは
喜ばしいことです。
またこれからも、ブログで東ジャワの魅力を伝えていけたらと思います。
「インドネシアと言えばバリ島!」という印象があるかもしれませんが、
インドネシアは、海も良いけど山も良い!
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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