ジャカルタのテロ事件「複数エリアでの爆発」は誤報と認定。TVOneなど厳重注意へ

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ジャカルタのサリナデパート前の爆発テロ事件について、先日のブログで指摘した「複数エリアでの爆発という誤報」の件の続報です。

前回のブログでは、同時多発という誤報の謎を追いかけましたが、正式に誤報と断定されました。今回は、その内容について現地メディアの記事を紹介しながら詳しくとりあげてみます。




ジャカルタ中心部で発生したテロ事件

2016年1月14日に発生したジャカルタのテロ事件は、ジャカルタの中心地で発生したということもあり、多くの人にショックを与えました。「サリナデパート」周辺で発生したものですが、複数の爆発だけでなく銃撃戦まで発生。実行犯を含む7人が死亡したとされています。

テロが発生した場所を地図で示すとここになります。

インドネシアのメディアの続報が

1月14日付のkompasの記事によると、この度、インドネシア放送倫理委員会は、今回の件を誤報であると認定。人々の不安を引き起こしたとして、放送指針違反としての制裁(文書による厳重注意)を課す決定を下したそうです。

1月15日の段階で同ブログ記事に追記をし、また
facebookとtwitterでも書いたことなのですが、詳細について、改めて本ブログでも備忘録としてまとめることにしました。

「複数エリアでの爆発」は誤報と認定

今回Kompasが報じたのは、

「デマを流し不適切な映像を流したとして、3つのテレビ局がインドネシア放送倫理委員会から制裁」Tayangkan Berita “Hoax” dan Visual Tak Layak, 3 Stasiun TV Diberi Sanksi KPI(14 Januari 2016 | 22:58)

という記事です。概要は次の通り。

Kompasの記事より【写真:Kompasの記事より】

サリナの爆弾テロに関連して、放送指針違反と思われるテレビやラジオの放送があった。KPI(インドネシア放送倫理委員会:Komisi Penyiaran Indonesia)は、いくつかのテレビ局と1つのラジオ放送局について、サリナ爆発テロの取材放送の内容ゆえの制裁を課すことを決めた。

文書による厳重注意を与えるのは、3つのテレビ局と1つのラジオ局。インドネシア放送倫理委員会が2012年に定めた「放送行動ガイドと放送プログラムスタンダード」(Pedoman Perilaku Penyiaran dan Standar Program Siaran (P3 dan SPS) に違反するため。

テレビ局は、TV One、Indosiar、 iNewsで、ラジオ局はElshinta。

TV Oneのテレビ番組「Breaking News」は、交番近くに横たわる死体映像を写した。ボカシ処理なしで流した映像は、明瞭にわかるほどだった。また、不正確な情報を流したことも問題視された。つまり「スリピ、クニンガン、チキニでも爆発があった」との誤報を流したこと。

「放送で流れたこの誤報は、その後に訂正はあったものの、人々の不安を引き起こした」と、1/14付の文書による説明でインドネシア放送倫理委員会が述べている。「ニュースの正確性に関するジャーナリスト原則に違反している上、犠牲者や死体を詳細に写すことを禁じたことにも違反している」と。

Indosiarのテレビ番組「Patroli」でも、インドネシア放送倫理委員会は11時5分の段階で、死体が写っているのを発見した。ボカシ処理なしで流しており、明瞭にわかるほどだった。インドネシア放送倫理委員会は、これらを不適切であり、ジャーナリスト倫理にも反すると判断。また、視聴者に対して不快な感情を引き起こすものだとした。

爆発の犠牲者の死体を写すことは、iNews TVの「Breaking News」でも見つかった。また同番組は「パルメラでも爆発があった」との不正確な情報を流してもいた。「他の場所でも爆発があったという情報は正しくないのに」と、インドネシア放送倫理委員会は語る。

ラジオ局「Elshinta」については、サリナ以外でも何ヶ所かのエリアで爆発が起きたと繰り返し伝えたことが問題視された。

これら合計4つの放送局は、「放送行動ガイドと放送プログラムスタンダード」に定めたジャーナリスト原則に反すると判断。書面による厳重注意は、すでに交付された。

インドネシア放送倫理委員会は、この厳重注意が他の放送局にとっても教訓となることを望んでいる。「放送機関は、放送が担う機能を理解すべき。つまり、正確でバランスのとれた責任ある情報を与えるということだ」とコメントしている。

緊急事態では情報が錯綜するものの・・・

先日のブログにも書いたことですが、こうした緊急のテロともなれば、情報が錯綜するのは当然です。でも「1ヶ所の爆発事件」と「複数のエリアでの同時多発」とでは明らかに事象のレベルが異なります。

冷静になって、各方面に確認取材をすれば、きちんとしたメディア機関、取材力あるジャーナリストであれば、おそらくそれほど長い時間をかけずとも把握できそうな気がします。

実際、この「複数のエリアでの同時多発」という誤報には、ジャカルタの人たちも大いに惑わされたようでした。

テロともなれば、速報性も重要なので、「速報性」と「正確性」のせめぎあいというところでしょうか。「確認中の情報ですが・・・」と枕詞を協調して報じる等、何らかの工夫はあってしかるべきだったかと思います。このあたりは今後のこともあるので、議論が分かれるかもしれません。

期待される、放送倫理のさらなる向上

なお、「放送倫理」という点で、私が気になった点がもう一つあります。それは今回の死体映像とは別に、爆発テロの犠牲者が病院に搬送される姿を放送していたこと。苦しまれている表情がありありとわかるかたちで、実に痛ましい映像でした。

今回、インドネシア放送倫理委員会は問題視しなかったようですが、ぜひ今度の対策が望まれるところです。

いずれにしても、将来の話を考えるならば、たとえ不確かな状況の中にあっても、「どう行動するべきか」を、一定の情報だけをもとにして、瞬時に判断しなければいけない・・・、そういう局面は、今後もたくさん出てくるはず。

そうした意味でも、「情報を見極めること」については、常に磨いていきたいものです。

メディアのリテラシーや、情報に対して判断する感覚は、一定の経験を通じて磨かれるところも大きいと思います。今回、インドネシア放送倫理委員会が瞬時に(事件当日中に)判断を下したことは、とても良いことだと感じました。

なお、こちらの記事もどうぞ。

インドネシアのデマ拡散の防止策|ソーシャルメディア利用4指針とは
フェイクニュースやデマの拡散をいかに防ぐかは、インドネシアで関心の高いテーマです。テロやデモ事件の報道で話題になるのがニセ情報(Hoax)の拡散問題です。「インドネシア・デジタル協会」のソーシャルメディア利用の4指針を取り上げてみます。

サムスル
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時の運と人の縁を極める日々の記録 】  渡邉 裕晃
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