今回ご紹介する映画は、想田和弘監督によるドキュメンタリー映画「選挙」。いやぁ、これは、すごい映画です。2時間、とにかく釘付け・・・。
なぜ自民党は、これを放映禁止にしなかったのでしょうか?そんな疑問がおさえきれないくらいです。「えっ、これ流しちゃって良いの?」と、そんな作品です。上映はミニシアターなのですが、大手映画館に配給されなかったのは、圧力ゆえか?と、疑ってしまいたくなるくらい、すさまじい内容なのです。
今回は、ドキュメンタリー映画「選挙」を紹介するとともに、追記として「映画のその後」や関連作品についてもまとめました。
(その後、本作品は「選挙」としてDVD化されています)
目次
ドキュメンタリー映画「選挙」の内容は?
映画「選挙」は、2005年に行われた、川崎市議会議員の補欠選挙がテーマです。川崎市に住んでもいなかった、政治の素人が(素人と言っても、将来の立候補願望はあったようですが、政策ゼロのようでした)、自民党公認というラベリングをもとに、組織選挙で当選を勝ち取るまでのドキュメンタリーです。
■「選挙」公式サイト
( http://www.laboratoryx.us/campaignjp/ )
いやぁ、これ、まずいですよ。
いろいろな想いがあるのですが・・・、例えば、今まで、いろいろな選挙活動を見ていて、政策よりも名前を連呼するのはなぜか疑問でした。
でもこの映画「選挙」を見て、なるほどと思いました。もし私が同じ時期に同じ立場であったとしたら(政治家になる気は全く無いですが)、同じく、政党名の連呼、名前の連呼をすることになると思います。
理由? それは映画を見ればわかります。日本の組織選挙とは、こうなっているのか! と、すごいものを見てしまった思いです。
選挙で当選するまでの驚きのプロセス、そして名言の数々
小泉旋風に加えて、補欠選挙だったという特異性もあるのですが、それを考えても、この当選過程には、びっくりしました。
「政党活動ってね、体育会系なんだよ」
「人は3秒しか演説を聞いてくれない。その3秒に込めるべきメッセージは何か?」
「怒りたくても、はい、はいって、ただ聞いていればいいんだよ」
その他、いろいろな名言が飛び出します。
また、映像も、うまくとらえています。
例えば、幼稚園の運動会で、大勢の幼稚園児を前にして、先輩議員が有権者向けのまじめな演説を繰り広げる姿などは圧巻。それに対しておじぎをする子供たち・・・。
ネタバレになるので、あまり書きませんが、監督の撮影テクニックは見事。主人公とは旧知の仲とは言え、選挙活動の合間の昼寝だったり、夫婦喧嘩だったり、よく自然に撮れたなとびっくりします。
あるいは、選挙スタッフが語るちょっとした一言も、「これ、流しちゃ、まずいんじゃないの?」というきわどいものまで、続出します。
某宗教団体とのつながりとか。
(あえて、書きませんよ・・・)
カメラが入っているのに、あんな内容をしゃべるとは・・・。おそれいりました。
素人を選挙の道具として使いあげ、用済みになったら捨てる。日本の組織選挙と民主主義の実態が浮き彫りになったように感じます。
(自民党の名誉のために、「用済み」と言っても、ひょっとしたら本人の資質による部分もあるかもしれない、という点を付け加えておきます)
映画「選挙」は「日本型民主主義」という名のコメディーショー
前述の2点の特殊性(小泉旋風+補欠選挙)があったとは言え・・・、政策の無い素人を、あらゆるサポーターを動員し、「小泉自民党」+「名前」の連呼だけで当選させてしまう組織力。
おぞましいくらいです・・・。
ぜひ見るべき!
「日本型民主主義」という名のコメディーショーが、ここにはあります。
「これがノンフィクションだとしたら恐ろしい・・・」って言うか、これ、本当にノンフィクションなんですよね・・・。
(ちなみに、先輩議員たちの演説力、あらためて驚きます)
■(参考引用)解説:
2005年秋に行われた川崎市議会議員補欠選挙で、自民党公認で出馬した山内和彦氏に密着したドキュメンタリー。 日本の政治を支配してきた自民党がいかに”政治の素人”を”公認候補”に仕立て上げ、選挙戦を展開するのかを観察し、日本の選挙活動の本質をあぶり出す。 監督・製作・撮影・録音・編集を1人でこなしたのは、山内氏とは東大同級生の想田和弘。党関係者に事あるごとに怒られながらも、前向きに選挙活動に励む「山さん」の姿に胸が熱くなる。 2005年秋、東京で切手コイン商を営む「山さん」こと山内和彦は、市議会議員の補欠選挙に自民党公認候補として出馬することになった。 政治は全くの素人である彼の選挙区は、縁もゆかりもない川崎市宮前区。「電柱にもおじぎ」を合言葉に、小泉首相(当時)や自民党大物議員、地元自民党応援団総出の過酷なドブ板選挙が始まった。(シネマトゥデイ) |
【参考】映画「選挙」の主人公、山内和彦さんのその後
映画で主人公をつとめ、実際に当選を果たした山内和彦さんですが、このような刺激的な内容ゆえ、その後の活躍が気になります。調べてみたところ、書籍を出され、また続編となる映画「選挙2」にも出演されているようです。
書籍「自民党で選挙と議員をやりました 」を出版
この映画から数年後、実際に立候補された山内和彦さんは「自民党で選挙と議員をやりました 」と題する書籍を出されています。
続編となる映画「選挙2」に出演
その後、2011年4月の川崎市議会選挙を舞台とする映画「選挙2」も公開されています。映画「選挙」で取り上げたのは、川崎市議会選挙(宮前区選挙区)に自民党から立候補したものでした。「映画2」では、同じく宮前区選挙区から無所属で立候補を取り上げています。
予告編映像と、DVD作品(amazon)はこちらです。
想田和弘監督、観察映画第5弾『選挙2』。選挙費用総額8万4720円。スローガンは脱原発。山さん、怒りの再出馬。
舞台は2011年4月の川崎市議会選挙。映画『選挙』(07年)では自民党落下傘候補だった「山さん」こと山内和彦が、完全無所属で出馬した。カネなし、組織なし、看板なし。ないないづくしの山さんに果たして勝ち目は?山さんが丸腰で挑む選挙戦から浮き彫りになるのは、ニッポンの民主主義の姿だ。 選挙イヤーの日本。「わたしたち」は、いったいどこへ行こうとしているのか? 想田観察映画が、再び世界に問いかける! 2013年6月、シアター・イメージフォーラムにて緊急ロードショー、他全国順次公開!! |
【参考】選挙の「泡沫候補」に焦点を当てた作品
さらには、選挙の「泡沫候補」という点で、以下のような書籍や映画がリリースされています。やはり注目テーマなんですかね。3つの作品をご紹介します。
「黙殺・報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」
「泡沫候補」
映画「立候補」
なお、こちらの記事もぜひご覧ください。
【追記】マック赤坂さんが港区の区議会議員選挙で当選へ
なお、長い間に渡って「泡沫候補」とされ、映画「立候補」にも登場するマック赤坂さんは、2019年4月21日の統一地方選挙により、港区の区議会議員選挙で当選されました。
実に14回目となる立候補で、これが最後の立候補と宣言してチャレンジされた選挙戦でした。
【マック赤坂最後のお願い】
全ての街頭活動は20時に終了し、ツイートもこれが最後となります。2007年の港区議選に始まった選挙人生、今回の港区議選をもって最後とする事にしました。その間多くのご批判を頂きましたが同時に本当に多くのご支援も頂きました。まずは厚く御礼申し上げます。— マック赤坂【公式】 (@macakasaka) 2019年4月20日
【参考】国会議員のドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」
監督は異なりますが、2020年には国会議員のドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」が公開になりました。
映画監督の大島新さんが、衆議院議員、小川淳也さんを17年間にわたって見続けた記録です。家族をまきこんだ、政治の裏舞台が描かれた作品です。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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