写真集『インドネシア残留元日本兵』独立の英雄110名の姿が語るもの

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「インドネシア残留日本兵」。

第二次大戦をインドネシアで戦った後、戦争が終わっても日本に帰らず、インドネシアに残ることを選択した日本人たちのことです。日本が撤退後、オランダがインドネシアの再占領を目指します。対オランダの独立戦争が始まるわけですが、それに向かって貢献しようとするわけです。

この「インドネシア残留日本兵」という歴史の一側面。風化させるべきではなく、ぜひより多くの人の記憶にとどめおかれるべきものだと私は思っています。

写真集 インドネシア残留元日本兵  -なぜ異国で生涯を終えたか-

写真集 インドネシア残留元日本兵 -なぜ異国で生涯を終えたか-

長 洋弘
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インドネシア残留日本兵という存在

私は「インドネシア残留日本兵」最後の生き残りである小野盛さんに、東ジャワのご自宅で何度かお目にかかったことがあります。

記録によれば、終戦を迎え、インドネシアへの残留を選択した日本兵たちは約1000人。今回、そのうち110名の姿を写真に収めた写真集が発売されたとの報道がありました。題名は「写真集 インドネシア残留元日本兵 -なぜ異国で生涯を終えたか-」。著者(写真家)は、長洋弘(ちょう・ようひろ)さんです。

風化しつつある「インドネシア残留日本兵」の歴史。その記憶をとどめようとする意欲的な作品で、実に貴重な存在だと私は思います。

出版のきっかけは最後の残留日本兵、小野盛さんの死去

「じゃかるた」新聞の記事には、こうあります。

「生きた証し残したい」 元残留日本兵の写真集、発売 長さんが撮影、110人の晩年の素顔 | じゃかるた新聞 インドネシアの日刊邦字新聞
インドネシア全域に散った元残留日本兵を訪ね歩いた30年間の取材の集大成。登場する110人の写真からは、「忘れられた」日イ関係の一面が浮かび上がってくる。

「インドネシア残留元日本兵」には、長洋弘さんが取材した約200人の元残留日本兵、軍属、一般邦人などの中から110人が登場する。本人の晩年の写真に加え、遺族、家族らから入手した戦中や日本での写真なども交え、元残留日本兵各人の半生が分かる構成となっている。

本の企画は、2014年8月、最後の元残留日本兵の小野盛(おの・さかり)さん(享年95、東ジャワ州マラン在住)の死がきっかけだった。「小野さんの死で、今後、残留元日本兵の存在が埋もれてしまうという思いがあった」と長さん。

東ジャワのマランに住んでいる私は、昨年、小野盛さんにお目にかかって、直接お話をうかがうことができました。とてもインパクトのあるお話で、今でも記憶に新しいです。

その小野さんが昨年亡くなって、生存中の「インドネシア残留日本兵」がいなくなったことにより、私自身も、歴史の風化を懸念していました。こういう写真集が出ることは、非常に意義深いことです。

最後のインドネシア残留日本兵、小野盛さんと語ったこと

小野さんにお目にかかった時の内容は、ブログでも書いたことがあります。うかがったことの全てをまとめたものではなく、記載したことは一部でしかないのですが、ご関心のある方は、ぜひご覧ください。

インドネシア残留日本兵|最後の生き残り、小野盛さんに会ってみた。
「インドネシア残留日本兵」の最後の生き残り。今年で95歳を迎える小野盛(おの・さかり)さん、インドネシア名:ラフマット小野)のお宅にお邪魔す...
インドネシア残留日本兵|小野盛さんとインドネシア語で会話してみた。
今日は、「インドネシア残留日本兵」の最後の生き残り、今年で95歳を迎える小野盛(おの・さかり)さんのお宅にお邪魔しました。インドネシア名は、...
インドネシア残留日本兵|小野盛が死の8ヶ月前に語った期待と伝言
今の若い皆さんは、日本語で何と言いますか、メンタル・ブルジュアガンが足りない気がしますな、当時の彼らと比べますと。 そう私に語ってくれ...

昨年の8月25日に94歳で亡くなった小野さん。もっとたくさんのお話をうかがいたかったです・・・。

インドネシア残留日本兵、最後の生き残り。小野盛さん(インドネシア名:ラフマット・小野)
【写真:94歳とは思えない程、たくさんの話を聞かせてくれた小野さんと】

『インドネシア残留元日本兵』の出版の背景

今回の写真集の出版背景について、「じゃかるた新聞」は、こうも伝えています。

「生きた証し残したい」 元残留日本兵の写真集、発売 長さんが撮影、110人の晩年の素顔 | じゃかるた新聞 インドネシアの日刊邦字新聞

元残留日本兵の晩年はさまざまだった。経済的に恵まれた者は少なく、多くは貧しさの中で最期を迎えた。取材の中で「『生きた証しがほしい。このままでは死ねない』とよく言われました」。

終戦から70年、元残留日本兵の存在は「今こうして、日本人がインドネシアで仕事ができていることの礎ではないか」と長さんは思っている。

インドネシアで暮らしていると、日本に好意的なインドネシア人の多さに気づきます。「インドネシア残留日本兵」の意味と意義、戦後のインドネシアでどのような役割を果たしたか、等々・・・、

もっともっと多くの人に知られるべきことだと私は思います。今回の写真集を通じて、「インドネシア残留日本兵」のことがより広く伝わることを願っています。

写真集『インドネシア残留元日本兵』の詳細について

今回ご紹介した写真集『インドネシア残留元日本兵』の詳細は、以下のとおりです。

写真集 インドネシア残留元日本兵  -なぜ異国で生涯を終えたか-

写真集 インドネシア残留元日本兵 -なぜ異国で生涯を終えたか-

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写真集 インドネシア残留元日本兵(社会評論社ホームページより)

祖国の敗戦で戦地インドネシアにとどまった「残留元日本兵」。写真家・長洋弘は、その晩年をカメラに収め続けた。本書は、現地名を名乗り生きた元兵士およそ110名がカメラを直視する一瞬を刻む。

「生きた証がほしい。このままでは死ねない」と誰かは口にした。笑顔を向けるものの戦争の記憶をいっさい語らぬ人もいた。取材35年、ついに存命最後の元陸軍曹長・小野盛の苦渋に満ちた一瞬を撮る──。

戦後70年の今年、日本国の行方に警鐘を鳴らすべく、今は亡き元日本兵たちのまなざしをまとめた。

■長洋弘(ちょう・ようひろ)さん(社会評論社ホームページより)
著述・写真家。1947年生まれ。著作『帰らなかった日本兵』(朝日新聞社)、『海外日本人学校』『二つの祖国に生きる』(草の根出版会)、『遥かなるインドネシア』『ぱんちょろ よーちゃん』(燦葉出版社)、『インドネシア残留元日本兵を訪ねて』『冒険に生きる』(社会評論社)など

なお、著者である長洋弘さんは、「帰らなかった日本兵」という本も出版されています。

帰らなかった日本兵

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【参考】インドネシア残留日本兵に関するブログ記事

インドネシア残留日本兵に関するブログ記事を集めました。こちらの記事も、ぜひどうぞ。

インドネシア残留日本兵|東ジャワ州マランの「日本人慰霊碑」で墓参
私が住むインドネシア、東ジャワのマラン(Malang)には、「日本人慰霊碑」があります。オランダ占領期から存在する墓地の中に建てられているも...

サムスル
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時の運と人の縁を極める日々の記録 】  渡邉 裕晃
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