「丸善」の書店内書店「松丸本舗」の取り組みをテーマとするコラム。前回コラムの続きになります。もし前回コラムをご覧になっていないようであれば、ぜひ、こちらをご覧下さい。
【写真:「松丸本舗」のロゴ】
目次
オンライン書店が「検索」なら、松丸本舗は「探索」
「松丸本舗」のような書店と、オンラインブックストアとの違い。先程は、松丸を「線」に、オンラインを「点」に比喩しましたが、乱暴を承知で、言い変えるならば、こうも表現できそうです。
オンライン書店が「検索」なら、松丸スタイルは「探索」だと。
長くなるので、あまり書きませんが、「松丸本舗」をお気に召したら、ここをプロデュースした松岡正剛さんの「多読術」、ぜひともオススメします。
書店内書店を作ってみる
さて、最後に。では、「松丸本舗」を参考にして、リアル書店は今後どうすべきか? という話。
解決策は一つではなく、それぞれいろいろな事情があるかもしれませんが、私なりの回答は、自らの書店に「松丸本舗」をつくること。書店内書店をつくること、です。
現在の経済状況下で、全店を昔のような書店に切り替えることは現実的ではありません。中長期でファンをつくることはできても、短期的には業績ダウンを招く可能性が高いからです。
経済合理性の観点からすると、「意義深いけど儲からない」は、存続を危うくしますから、それでは意味がありません。だからこそ、書店内書店を設けるところからスタートすることをオススメしたいと思います。
来場者の視野を広げられるような店主のこだわりを
まずは「書店内書店をやってみる」。
例えば、店主のおすすめコーナーをつくる。そこには店主のこだわりを存分に発揮させることが大事。
かといって、店主の独りよがりになるのではなくて(それだと、新興宗教系書店と変わらないので)、読者にメリットのあるようなかたちでメッセージングすることが大切です。
松丸本舗のように、来場者の視野と世界を広げる契機をつくること、メリットを提供することがポイント。
【写真:「本が動いて日本が変わる」深い!】
「書店内書店」ゆえの狭さがあるはずですが、期間限定で、キャンペーンをはるのです。店主のこだわりは、オリジナルのPOPをつくって、できるだけ来場者の世界観を広げるお手伝いに努めるべきです。
「へぇ、こんな本があるんだ」
「古いけど、面白そう!」
そう思わせればベスト。
世界を広げてあげる。次なる世界に誘ってあげる・・・。そうして、買い求めた本が面白ければ、「また店主のアドバイスを聞いてみよう!」となるでしょう。そうすると、その本屋に行かなくてはいけない理由が発生するのです。
求められるのは店主の読書量と世界観
もちろん、この条件が成立するには、来場者の知的好奇心を満足させるだけのセンスと教養、幅広い読書量が要求されます。
そこで「私には無理だなぁ」と思うのであれば、地元の博学者、有力者、専門的なキーマンなどに、定期的に、「書店内書店」の店長をお願いするのも一方です。
こうして「書店内書店」が成功すれば、おのずと、来場者も増え、問い合わせも増えるはず。読書家が増えますから、おのずと新刊本も売れ始めます。
店主のこだわりを発信する
そして、大事なことは、自らの「書店内書店」の試みを、定期的にメルマガ、ブログ、twitterなどで情報発信することです。
こだわり書店、目利き書店として、同じ志をもつ人たちからのファンを生み出せるはずです。そして、こうした生臭いホンモノのこだわりは、オンライン書店には、なかなか創りがたい仕掛けのはずなのです。
昔の個人経営の書店の多くは、本来こういうことをやっていたはずです。ところが、そうしたこだわりの本屋は退場を余儀なくされ、経済効率の高い、大型店舗、新刊本店舗が中心になる。「目利き」が必要なくなり、お決まりの本だけが並ぶようになる。問い合わせがあっても、検索を要求する・・・。
その果てに起きるのは、「オンラインブックストアで買えば良いじゃん」です。
人としてのレコメンド機能を
哲学ある書店がだいぶ減った現在、「松丸本舗」のような書店の誕生は本当に貴重で、かつ実に意義深いチャレンジだと感心させられました。
目利きとしての、コンサルタント機能をもった書店。機械的レコメンド機能を超越した、まさに、機械によって代替され得ない「知」に基いた、来場者の世界を広げる、水先案内人としてのレコメンド書店。
これこそが、「リアル書店」のあるべき姿ではないかと、私は思います。
「松丸本舗」ぜひとも訪れてみて下さい。オススメです! 必ずや、たくさんの刺激を受けるはずです。「松丸本舗」を訪問することで、本の意味や、書店の役割を再考させられるでしょう。そして、プロデューサーである松岡正剛ワールドにハマり出す人、きっと少なくないのでは?と思っています。
■追伸:
書店の活性化として「書店内書店を!」という提言ですが、私は書店経営者でないので、現実の厳しさを知らずに、軽々しく主張してしまっているだけかもしれない・・・、ということを付記しておきます。
書店経営の現場で日々闘っている方からすれば、ひょっとしたら、「若造め、そんなこと言うなら、お前がおやんなさいよ、でも儲からないよ」って言われるんでしょうね・・・(笑)。
【このテーマ:おわり】
【関連ブログ】
2010年2月1日 渡邉 裕晃
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【社長ブログ】時の運と人の縁をきわめる日々の記録
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