今回ご紹介するのはワタミ創業者、渡邉美樹さんが書かれた本、『父と子の約束』です。
どんなに多忙な時でも毎週開催してきた「父と子の勉強会」や、「父と子の約束事5ヶ条」の生まれた背景、運営を通じて得たものなど。これらを通じて、親とは何か、人を育てるというのはどういうことか、その根底に必要なものは何か、どんな努力が不可欠なのか、そういったことが、氏の体験に即してまとめられています。
子育てだけでなく、社員教育にまで展開されているのが特徴です。
父と子の約束 (日経ビジネス人文庫)
渡邉 美樹 日本経済新聞出版社 2007-12-03
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居酒屋経営からスタートしたワタミフードサービスは、近年では、ワタミへ社名変更し、飲食事業だけでなく、介護事業や教育事業まで手がける会社になっています。
教育まで手がけるということもあって、同社の渡邉社長の教育熱心さは、つとに知られています。朝7時からの早朝勉強会なども有名ですね。本書は、そんな教育熱心な渡邉社長がまとめた、氏のオリジナルの子育て本です。
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子育て本ではありますが、子供のいない方にもおすすめの一冊。子育てというテーマを通じて、人を育てることの意味を追求しているところが本書の特徴です。
「育てることを通じて人は教わるのだ」 |
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本書を通じて一番伝わってくるのは、氏のエネルギーです。
もう、それこそ半端ない(笑)。
どんなに多忙で、睡眠時間が限られている時期であっても、必ずスケジュールをこじあけて、毎週開催してきた「父と子の勉強会」。
優先順位を上げて必ず行うということが、それ自体、すでに子供への愛情表現として子供に伝播されていることがわかります。
ここにかけるエネルギーは、子を持つ全国の親御さんたちに、ぜひ触れてもらいたいと思いました。
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以前、ある社長さんが、
「本気で部下を育てようと思うなら、まず自分自身が部下の誰よりも勉強し続けないとダメなんです」 |
と言っていましたが、これはまさにその通りで、本書から伝わってくるものでもあります。
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渡邉社長は、「子育て」の延長に「部下育て」を位置づけられており、これは面白い視点だと感じました。
言い方を変えれば、
子育てを放棄した父親に、本当の部下教育などできるはずもなく、子育てに力を入れる父親であれば、部下教育を放棄できるはずがない、ということでもあります。
家族への愛情を、どこまで外の人たちに対して広げられるか。これが人間の器を決める、ということです。
ただ、父子の関係を社員との関係に持ち込む見方は、ひょっとしたら気持ちが悪いと思う人も、もちろんいるでしょう。それは、仕事とプライベートを完全分離してやっていこうとする人と、両者を統合させて相乗効果を発揮しようとする人とのスタンスの違いだと言えそうです。
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いろいろ紹介したい視点が豊富に入っている本ですが、適度な挫折経験を味わわせることの重要さや、書くことの大事さを述べている点、とても共感します。
この2つは、経験の浅い若い人たちには、なかなかわからない点のようで、「挫折は回避すべきもの」「書くのは面倒なこと」と思う人がとても多いというのが実感です。
でも、これらは、うまく進めると、とてつもない財産となって昇華していくことは、一定の経験をされてきた方々なら、心の底から理解されている点だと思います。
それを、渡邉社長は、子育ての中にも、社員教育の中にも、うまく取り込まれているなというのが印象的でした。
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それは、渡邉社長が幼くして経験されてきた、大きな挫折。
お父様の事業の失敗、倒産や、
お母様が若くして亡くなられたという経験や・・・、
まさに、
「現実は全て絶望で満ちていることから、 希望は心の内にしかないことがわかった」
という、それほどまでの経験に裏付けられた、深みあるものだということです。
人生は成長をかけた戦いであり、その過程にある成功も失敗も、栄光も挫折も、それらをひっくるめてワンセットでの幸福なのだということを感じさせます。成功や栄光だけが幸せではないということです。
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「父は子の夢の伴走者であれ」 |
そう渡邉社長はおっしゃいます。
そのためにどれだけの愛情と時間を注ぐことができるのか、そのパワーを、家族だけでなく、社員や仲間たちに対しても、どこまで注ぐことができるのか、
そのためにこそ、まずは自らが、誰よりもたくさんの努力と成長を遂げなくてはいけない。そのことを強く感じさせる、体験本となっています。
子供をもっている親御さんの皆さんだけでなく、これから子供を授かろうとしているご夫婦の方々、あるいは、部下教育に悩んでいる人たち・・・、そんな皆さんにとって、大いに刺激になる一冊になることは間違いありません。
子育てハウツウ本や、社員教育ハウツウ本が、とても陳腐なものに感じられてしまう、それほどの価値をもつ一冊でした。
ちなみに、最後に、2人のお子さんに対するインタビューがあるのですが、これまた、なかなか考えさせられますよ。
2008年3月21日 渡邉 裕晃
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