『ネゴ(交渉)の法則』レビュー|日本人カリスマ交渉人が語る交渉術

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今回ご紹介する本は、『ネゴの法則』です。

☆ 今回のポイント ☆ <簡単な内容紹介>

■内容紹介(アマゾンより)
どんな相手も必ず落とせる! 交渉の法則。「松井秀喜に会いたい!」を実現させよ。
カリスマ交渉人はどうやっていくつもの高いハードルを乗り越えるのか?

■内容(「BOOK」データベースより)
カリスマ女性交渉人はどうやっていくつもの高いハードルを乗り越えるのか?
交渉を成功させる3つの法則。


 


 
 
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本書の著者は、ニューヨークを拠点にして、
テレビ番組、ニュース、ドキュメントビデオなどを制作している
フリーのディレクター・プロデューサー。

インタビューや取材許可の交渉をするケースが多いようで、
とりわけ大物と呼ばれる方との交渉がどのように行われているのか、
そこにどんなコツがあるのか、というのが本書のテーマです。
 
 
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といっても、もともと私は交渉というものに強い関心があるわけではありません。

ちょうど、明日の朝食会の講師をつとめられると知り、事前にどんな方か知っておこうと思ったのが、本書を読むことになったきっかけ。

「築地朝食会」で「ネゴの法則」著者の松本ちあきさんに会ってみた
以前から参加してみたかった「朝食会」、「築地朝食会」に参加してきました。「築地朝食会」は、毎月1回、朝7時にスタート。毎回、本の著者をゲスト...

目次を開いてみると、ケーススタディの最後にインドネシアにおける事例があり、いわゆる「交渉もの」の本でインドネシアが出てくるのは珍しく、この点にも関心をもって読むことができました。
 
 
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冒頭で、「メジャーリーガー松井秀喜に取材のアポをもらうには?」という大きな宿題が出されます(著者に訪れた案件の実話)。

このテーマが本書全体で展開されながら、「交渉」をめぐるあらゆるテーマが論じられていきます。

テーマの面白さもさることながら、話の展開もスピーディー。さらに200ページ弱という薄さもあって(実は、もう1章書くつもりだったのでは?と思えるほど:笑)とても読みやすいです。
 
 
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「交渉とは何か」を定義することから始まるわけでなく、
また、「交渉を成功させるコツ」から始まるわけでなく、
まず「交渉に成功しない理由」を分析。

その後、著者自身が交渉する様々な現場を
物語のようにして同時進行で追体験できるように展開。

・状況の把握
・時間の把握
・自分の把握
の3点を軸に、ついつい先が読みたくなるような話の運び。

交渉の実務書というよりも、小説を読むような感じで、実に読みやすい。
 
 
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と、それ以上はネタバレになるので本書を読んでいただきたいのですが、私が好感をもち、また大いに共感したのは、ここ。

「交渉は、単なるテクニカルなものではない」ということ。

本書の前半は、交渉におけるテクニックがいろいろ紹介されます。ただ、読み進めるうちに、著者が交渉において使っている技術はテクニックを超えていることが自然と伝わってくるのです。
 
 
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さらに言えば・・・、

交渉は、相手を説得して提案を通すということにとどまらず、日常的な生活におけるあらゆる課題解決の営為、それ自体が、より良い暮らし、より良い状況を導くための手段なのだと。

もっと言えば、できるだけ多くの人に幸せになるように動くこと自体が、「生活における交渉」の本質なのだということがわかります。

このあたりは本書を最後まで読むとわかってきます。
 
 
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実は冒頭のテクニック論は、人によっては「そんなこと、誰だってわかってるよ」とでも言われかねないような、さらっと単純なルールが紹介されます。

そのため、私が感じたことを正直に言えば、交渉を学びたいと思って本書を手に取った人の中には、途中で読むのをやめてしまう人もいるだろうなと思います。

ところが後半を読み進めていくうちにわかるのは、著者の交渉成功の背景にはテクニックを超えたものがあり、それこそが、交渉成功術であり、なおかつ、より良い状況を実現させるための手法(交渉ではない!)なのだということです。
 
 
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例えばそれは、本書の156ページで展開されます。

交渉の本質は、
「自分の言葉を相手に信じてもらうこと」であるが、
それは「単なる約束」という薄っぺらいものではなく、
「名誉にかけて誓う」ということ。

日本語の「名誉にかけて誓う」を超えて、
それこそ、誠実と信頼とを超越したさらに先にある、
英語の「I give you my word.」に匹敵する重みのある営為なのだと。
 
 
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それは単にテクニックを超えたもの。

私が以前からブログで何度か書いている
「全人格を鍛える!」「ありのままの状態を鍛える」ということに
つながることなのだと、私は共感した次第です。

よき出会いを引き寄せる方法|ドイツの哲学者フンボルトから学ぶ
今回のテーマは「出会いの哲学」。「よき出会いを引き寄せる方法」についてを考えてみます。ドイツの哲学者フンボルトが、素晴らしい言葉を残している...

(「当たり前の状態を鍛える」というテーマ、
 「自分の日常の普通の状態そのものを鍛える」というテーマについては
 上記ブログ以外にも何度か書いたような記憶があるのですが、
 検索しても出てこないので、取り急ぎ上だけ紹介しておきます)
 
 
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そうすると、たとえ交渉における失敗があったとしても、それは次なる成功を招くためのラーニングプロセスであり、それゆえに、

失敗を恐れるが故に安全圏内だけで行動し、失敗したときの体験が怖かったからといってそれを顧みないのではなく、もっと自由に自分を解放してあげる勇気を持ってください。

そうすれば、きっとあなたも社会で素晴らしい活躍ができるはずです。(157ページ)

という話につながって展開されていきます。
 
 
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交渉を超えた、生き方講座にまでなっていることが、本書の最大の特徴だと言えるでしょう。著者自身の生き方が、交渉をより成功に導いているポイントなのだということが、本書を最後まで読み進めていくと、じわじわと伝わってきます。

というわけで、交渉における単なるテクニック的なものを求めている人には、本書は物足りないと私は思います。

ただ、交渉はテクニックを超えたところにこそ、その重要ポイントがあるということ。本書を通じてその理解を深めておくことは、損にはならないはずです。
 
 
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最後に一つだけ苦言。

もうちょっと編集に力を入れると、もっと良い本になったのに・・・という思いが禁じえません。それは前述の通り、大したテクニックが載っていない薄っぺらい本との勘違いを起こしかねないつくりになっているためです。

また、テクニックを超えたところにポイントがあるということも、本書をだいぶ読み進めていかないと気づきにくい構成になっています。そのあたりは編集の力の見せ所で、ここをいじることで、もっと売れる本に仕上がったような気がしてなりません。
 
 
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また、まだ著者にお目にかかっていないのですが、本書を読む限り、著者は、静よりも、現在進行形の動態の人。書籍という静態では、人物の魅力を表現しきれないように私は感じました。

静態ではおさまらない人物的魅力があると感じたのです。

ここも、きっと編集の腕の見せ所のはずで、若干、著者にまかせっきりになっていたのでは?という思いがします。
 
 
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ともあれ、読みやすい本。

「交渉の本」と思わずに、
「日常を、もっと楽しく快活にすごすにはどうしたら良い?」
「ありえないことを、実現させてしまう秘策は?」
という本として読むことを、私はオススメします。
 
 
 
 2010年10月27日             渡邉 裕晃
 
 
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