『日本復興計画』レビュー|震災後という新パラダイムを考える基本書

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今回ご紹介するのは、経営コンサルタントの大前研一さんの書籍、『日本復興計画』 です。まさに「震災後」という新パラダイムを考えるための「基本書」と言っても言い過ぎではないくらいの決定版。ぜひオススメしたい一冊です。

日本復興計画 Japan;The Road to Recovery
 

☆ 今回のポイント ☆ <簡単な内容紹介>

■出版社からの紹介コメント(アマゾンより)
東日本大震災からわずか2日後の解説映像が大評判になり、YouTubeでの再生は180万回を超えました。それもそのはず、大前氏はMITで原子力工学の博士号を取得、日立製作所で原子力プラントを設計していたのです。さらに国家コンサルタントとしての視点から、復興の財源、エネルギー問題、外交政策など緊急提言します。
なお、大前氏は印税を一切放棄、売上げの12%は被災地救援に寄付されます。まずは私たちから「新しい、もっと強い日本」への第一歩を。

大前研一 著、文藝春秋 (2011/4/28)

書籍「日本復興計画」
【写真:書籍「日本復興計画 Japan;The Road to Recovery」】


 
 
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「震災前」と「震災後」とで、世界のパラダイムが変わってしまったかの感覚をもった人は多いのではないでしょうか。それは、被災地における直接の被災者にとってだけでなく、その他、多くの人たちにとっても、です。

今回の震災を「いま」という近視眼的に捕らえるだけでなく、

(1)「起こった事象の意味」を冷静に理解すること。
(2)これによって今後の世の中がどうなっていくのかを見据え、
(3)そうした世界の流れの中で個人がどうしていくべきなのか。

というところまでを見ていくのは大事なこと。

そうした意味で、本書はわずか126ページという短さにも関わらず、必要なことが全て盛り込まれた、実に優れた一冊だと言えると私は思います。
 
「日本復興計画」
【写真:本書の中身(表紙の内側より)】

新たな世界パラダイムが現出したと言っても過言ではない・・・。

この状況下において、ただ、今を悲観して、近視眼的に場当たり的に騒ぐのではなく、長期的な展望をもって、自分の人生観を再構築していこうとすることは、実に有意義なことだと思います。

その意味で、この「日本復興計画」は、本当にオススメしたい良書です。
 
 
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本書は、経営コンサルタントで著名な大前研一さんが、かつてマサチューセッツ工科大学で原子力工学を学んで博士号を取り、実際に原子炉の設計にも携わったという経験も踏まえて展開される内容になっています。

「ビジネス・ブレークスルー 大前研一ライブ」で放送された内容が主で、構成は3章に。

(1)「2days after」
   3/13午後8時放送「これで原子力の時代は終わった」

(2)「a week after」
   3/19放送「三分の二に縮小する生活」

(3)「days ahead」
   日本復興計画

(1)(2)の放送分をふまえ、(3)で分析と考察を行うというスタイル。

この放送分は、Youtube で放送された際にも相当な反響を呼びました。

震災後には、様々な情報や憶測が飛び交い、どれを信じていいのかわからない状況になりました。そうした中で、当時のこの Youtube 放送は、多くの人に冷静さを取り戻させるだけのきっかけになったと思います。

実際、震災当時、この映像内容を私なりに解説してあげた知人の中には、「なるほど、そういうことだったのか。ようやくわかったよ。将来は不安でも、理解できて安心できた」と言ってくれた方が少なからず存在します。
 
 
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驚くべきは、この2章の内容が、その時の場当たり的な論評ではなくて、その後を見据えた、時の経過を耐えうる内容になっているということ。

当時の放送であるにも関わらず、震災後1ヶ月以上を経た今になってから読んでも、現状理解に役立つという、珍しいコンテンツだと言えます。
 
「日本復興計画」
【写真:本の帯(背面)】
 
 
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また、大きなところとしては、今回の原発事故は、想定外の事故の連続によって対応が不可能になった、まさに「確率論を超える奇跡」として起きた事象であることが、理解できるところです。

したがって、全世界に存在する原発においても、福島と同じようなことが起きる可能性が高い・・・というわけではないということが、理解できます。
 
 
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また、こうした状況下においても、安易に「原発反対!」(代替案無し!)を叫ぶのではなくて、きちんと「私は原発推進論者」と明言され、「でも原発の時代が終わってしまった。なぜならば・・・」と持論を展開し、その後の方策までを具体的に提起されているところには好感が持てます。

(こういうことを書くと安易に反感をもつ方がいると思うので念のため書いておきますが・・・、
推進論者であることに好感が持てるのではなく、態度表明を明確にしていること。そしてその主張展開が非常に論理的であることについてを言っています。ぜひ本を読んでみて下さい)
 
「日本復興計画」
【写真:印税は寄付に・・・】
 
 
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若干、ズレるかもしれませんが、今回の本書の優れたところとしては、やはり、大前さんのマルチスキルによるところが大きいなと思いました。

「ロジカルなコンサルタント」
「政治を含めて、日本再生プランを出し続け、行動もしてきた」
「原子力で博士号をもち、設計という現場の最前線にいた」

こうしたスキルが複合されると、これはおのずと差別化ポイントになってしまうのですね。
 
 
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例えば、

・原発の専門家
・コンサルタント
・日本の政治を良くしようとする人、

そういう肩書きの人はたくさんいるでしょうが、これらが重なり合わさると、とたんに該当者がいなくなってしまうということ。

しかも大前さんの場合は、なんと、被爆された経験(!!!)まであり、そこまでくると、もう類似存在がいなくなります。まさにオンリーワンの存在に・・・。
 
 
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また、もう1点。
「才ある人は、世の中に貢献しないといけない」ということ。

能力のある人は、能力がある分、余計に社会に貢献していくだけの義務があるのだろうなという点も、本書を通じて痛感したことです。

youtube映像や本書を通じて多くの人に理解を与え、与野党にも適切な提案をして、自体の沈静化と復興に貢献している大前さんの努力は、素晴らしいことです。加えて言えば、原発対策のリーダー的な存在として政府の中に入って動いてくれたら、もっともっと良かったのではないかとすら思える点。

これは大前さんを批判する意図はありませんが・・・、能力のある人は、世に出て、余計に社会に貢献しなくてはいけないということ。
 
 
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これは、一部の人にだけ言えることではありません。
なぜなら、誰にでも、何らかの「長所」が備わっているからです。

つまり、長所は磨いて活かす義務があるということです。

長所は率先して社会貢献に使う。
これは今後の社会で大事な視点になるのではないでしょうか。
 
 
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長くなりましたが最後に。

大前さんの一連の著作に共通する点ですが、共感でき、また非常に重要だと思えるのは、最後の、この部分でした。

「あなた自身を復興する、あなた自身があなた自身を救ってサバイブする。この世の中、どんな乱世になっても生き残ってみせる、というメンタリティ、極端に言えば、世界のどこに出かけて行っても稼ぐぞ、というメンタリティがもてるかどうか」

「個人は最小経済単位だ。あるいは家族が最小の経済単位だ。政治家に頼ってはいけない。政府に頼っていてもいけない。国がなんにもしてくれないことは、すでに明らかだ。自分自身だけが頼みの綱と覚悟を決める。そうしなければ、この日本も元気になりえず、復興もありえない」

 
 
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このブログの冒頭で、「震災前」と「震災後」とで、世界のパラダイムが変わってしまったかの感、ということを書きました。

実際そうだと思うし、
個人の行動や価値観という点においても、
様々な影響を与える契機になっているように感じます。

そうした点で、上記の部分はとりわけ重要なことだと思います。

・ただいたずらに大騒ぎする、
・ただいたずらに批判をする、
・ただいたずらに移住する、

そういうあり方は、私は疑問です。
そういうことでは決してないのだと、私は思います。
いまオススメの一冊です。

■参考:このテーマに関連するブログ記事です。

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