『無国籍』レビュー|無国籍だった研究者の体験的ノンフィクション

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「無国籍」という身分を選んだ人がいる。皆さん、信じられますか?

今回ご紹介する書籍「無国籍」は、実際に「無国籍」だった横浜在住の研究者、陳天璽さんによる体験的ノンフィクション。とても衝撃を受けました。無国籍の人が日本にもいたとは、びっくりで・・・。これ、小説ではないんです。

本にはこうあります。

日中国交回復により、「台湾籍」が認められなくなった結果、「無国籍」という身分を選んだ人たちがいた。

えー、ほんとに!!! というびっくりの一冊です。




「無国籍」という衝撃を、あえて淡々と分析する良書

370ページくらいある分厚い本ですが、バランスよく、かつ非常に読ませる流れになっていて、大変興味深く読み進めることができました。

ジャーナリスティックではなく、研究者として、たんたんと著述されています。

ご自身の経験もふんだんに盛り込まれていますが、変な偏りを感じることなく、安心して読むことができます。

改めて思う、やはり国家は想像上の共同体だと

本書で取り上げられているテーマ。
「国籍とは? 民族とは? アイデンティティの基盤とは何か?」などなど。

私自身は「無国籍」ではありませんが、「日本とインドネシアのハーフ」です。私の場合は、そんな出自もあって、もともと国籍や民族というものに対して自らのアイデンティティを依拠させる度合いは弱いです。

そういう意味では、著者に非常に共感できることも多くありました。つくづく思いますね、やはり国家は想像上の共同体なのだと。

さらなる展開に大いに期待したい「無国籍」研究

「無国籍」をテーマにした本は、おそらく少ないのではないでしょうか。

筆者は研究者として、「華僑・華人問題をはじめ、移民・マイノリティ問題、国境・国籍問題に取り組む」とあり、今後のさらなる研究成果に大いに期待したいです。

とても読み応えのある素晴らしい本でした。
いつかセミナー等の機会があれば、ぜひ参加したいです。

■無国籍 (新潮文庫) 陳 天璽

出版社からのコメント
パスポートは? 選挙権は? 愛国心は? はじめて明らかになる無国籍の実態。国籍のなかった私が、半生を綴りながら無国籍で生きるとは何かを問う。

内容(「BOOK」データベースより)
日中国交回復により、「台湾籍」が認められなくなった結果、「無国籍」という身分を選んだ人たちがいた。そんな家庭に生まれ、横浜中華街で育った著者は、ある日、台湾への入国も日本への帰国もできず、空港から出られない衝撃的な経験をする。国籍とは?民族とは?アイデンティティの基盤とは何か?国家と家族の歴史に向き合い、深く掘り下げた体験的ノンフィクション。

サムスル
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時の運と人の縁を極める日々の記録 】  渡邉 裕晃
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