私が会社をはじめたのは24歳の時でした。
社長であるにもかかわらず、
若さゆえの幸運と言うべきか、
いろいろな人から、いろいろなアドバイスをいただくことに
本当に恵まれたと感じています。
その中で、こんなアドバイスがありました。
「大変苦労している会社、あるいは、
大変な苦労を死に物狂いになってくぐりぬけ、
その結果として、成長を遂げている会社、
そういう会社の決算書の数字をじっくり眺めた時、
自然と涙が出てくるかどうか。
もし将来、そんな場面で涙が出ることがあったとしたら、
それは君が一人前の経営者に近づいた証拠だと思いなさい」と。
よくわからないながらも、
なぜか非常に気になった言葉でもあったので、
ずっと心に留めていました。
先日、ある社長さんから呼ばれました。
もう、それこそ努力の固まりのような方で、
私は以前から、とても敬意を抱いていました。
「ちょっとね、ぜひ渡邉君に聞いてもらいたいことがあるんだよ」
社長歴数十年という大変な方が、
どうしてまた私なんかの意見を? とも思いましたが、
少しでもお役に立てるならと、お会いしたのでした。
□ □ □
会社の現状と、今後に向けた改革案のプレゼンを受けました。
私には門外漢の業種でもあり、
理解するのに必死でした。
いろいろなことを教えてもらい、
私なりに、いろいろな意見もお伝えしました。
そうした中、冒頭の言葉を急に思い出したのです。
なぜか。
詳しいことは書けませんが、
いくつかの業績数字をうかがった時、
私は、つい泣きそうになってしまったのです。
この感情は何だろう? と思った時、
それを思い出したのでした。
□ □ □
大変な努力を重ねて、今の会社へと導かれた社長さん。
現状を分析し、改革プランをつくられた。
それを私に熱く語り、
随所で意見を求め・・・。
その間ずっと、社長さんの顔に悲壮感はありません。
でも、ある数字を聞いたとき、
私は急に涙が出そうになったのです。
数字だけで涙が出るなんて、おかしなことです。
相手が悲しい表情をしているわけでもないのに。
でも、その表情の奥に隠れたものとして、
想像を絶するような大変なご苦労があっただろうこと自体は、
容易に想像できました。それに涙が出そうになりました。
□ □ □
創業経営者のほとんどは、
必ずと言って良いほど、
何がしかの苦労を経ていることと思います。
でも、多くの経営者がそう感じさせないのは、
常人にとっての苦労を、
苦労とは思わない人たちだからだと思います。
(私も、そうなりたいものですが)
どんなに成功した方であれ、
どんなに収入の多い方であれ、
それが創業経営者であれば、
例えば、吉野家で330円の「豚丼(並)」をいただく時も、
ついつい、それを食べるに必要となる利益と売上を
自然と暗算してしまうことがあると思います。
私自身、1円の重みを本当に知ることになったのは、
経営者になってからでした。そしてそれを知ったことは、
とても幸せなことでした。
□ □ □
それくらい、数字にはシビアにならざるを得ません。
どんなに成功した経営者であれ、
数字に対する想いや感情は、
本当に小さなわずかな数字であっても、
ずっとつきまとうものだと私は思います。
1円を稼ぐというのは、本当に大変なことです。
だからこそ、
その背景には、エネルギーがあり、ドラマがあるのです。
苦労をしても、頑張って乗り越えて、
成長して前進するということは、とても素晴らしいことです。
□ □ □
そんなことを考えながら、
涙をこらえて会話を続けたのですが、
その時ふと、不遜ながら感じたのは、
これは、ひょっとしたら、
「一人前の経営者に近づいた証拠」というものなのかもしれない
ということでした。
一人前とはおこがましいですが、
でも少しは成長したのかもしれないと思った瞬間でした。
この気持ちを忘れずに、
1円、また1円を、地道に積み重ねていきたいと思います。
2007年3月1日 渡邉 裕晃
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