先日、ある中華料理屋のテレビで、自衛隊の訓練風景が放送されているのを見ました。女性自衛隊員の新人さんの訓練です。
あまりの厳しさに「もうだめかも・・・」などという弱音をはきつつも、きちんと最後まで完遂するところはお見事(あたりまえ?)でした。
見ていてつくづく感じたのは、「基本あっての応用なのだろうな」ということでした。どうしてこんなことまでやらなければいけないのかと思うようなこともたくさんありましたが、でもそういう基本こそが大事なのだろうと思いました。
経営の要諦の一つとして「当たり前のことを当たり前にこなすこと」と言われますが、基本をきちんとこなすということは、それだけ難しいことなのだということなのでしょう。当たり前のことができなかったがゆえにダメになっていく会社は多いと聞きます。
会社で能力が認められてキャリアアップしていける人というのも、やはり基本を軽視することなく、きちんとできているがゆえのことだと思います。
時間を守る、お礼をする・・・等々の最低限のことがきちんとできない方がいかに多いことかを思うと、逆に最低限のことをきちんとこなすだけでもそれなりのステージまで行けるかもしれないということです。
はなばなしい賞をとるような科学者が、意外にも地道で日の目をあびにくいような基礎研究の重要性をとなえるのも、うなずけます。
そういう意味でいくと、松下幸之助さんが盛んに尊ぶ「素直さ」は、やはり財産なのだろうと思います。
私が会社をたちあげたばかりの頃、ある経営者からこんなことを教わりました。
「素直であることを身に着けている人は、実はそれほど多くない。訓練で身に着けるものではなく、若い頃からの親のしつけなどによるところが大きい。だからこそ素直であることは、それだけでその人の財産なのだと思いますよ」
その時は正直に言うとよくわからなかったのですが、最近なんとなくわかるようになってきました。基本あっての応用であり、そのためにこそ素直さが威力を発揮するのだろうと思います。
知人から聞いた話があります。
ある新人営業マンがいました。仕事は遅いし、間違えも多い。敬語もいい加減で、まともな営業トークもできない・・・。あまりのひどさに、「どうしようもないやつだなぁ」と上司を困らせる存在でした。
しかし彼は、言われたことについて、きちんと数をこなし、きちんと指示どおりの行動をする人でした。毎日数十件の電話リストをつくって電話を実行すること等々。誰よりも多く、黙々と実直に仕事をこなしていきました。嫌がるようなことでも、言われたとおりに実践し、数をこなし、勉強もしました。
彼はある時点からメキメキと力をたくわえ始め、急速に成績を上げていきました。今、彼は、子会社の社長をまかされるまでになっているといいます。
言われたことをこなせずに、自分勝手にやるだけの人は、その場をとりつくろうことはできても、いつまでも成長することはないと思います。指示されたことに無根拠に反発するだけの人も、自らが成長の芽をつみとっている可能性が大きいのではないかと思います。
「素直に基本を徹底的に学んで実践していく」
これを地道にやり続けるだけでも、新しい世界がひらけてくるような気がします。
会社も5年目を迎えるにあたり、いままで実践ばかりで進んできましたが、私自身、いま一度、基本を学び直さないければと思うようになりました。
また、素直に謙虚であり続けることをよりいっそう心がけていきたいものだとも思っています。今回の自衛隊の女性たちの訓練風景は、私にそんなことを思い起こさせてくれました。
(素直でありすぎることの危険性もありますが、ここでは割愛しています)。