2010年6月1日に毎日新聞社が新しい媒体を創刊します。「毎日RT」(MAINICHI RT:マイニチ アール・ティー)というtwitter連動のデイリーペーパーです。
週6日刊、月1,980円で、新聞同様に、毎日宅配される仕組み。特徴は、twitterと連動する新聞であることです。
同社のサイト「毎日jp」で、過去24時間のアクセスランキングを集計。人気だったニュース記事を10個取り上げて解説するだけでなく、それについてtwitterで投稿されたコメントを抽出して、その抜粋を紙面に反映していくという斬新な試みです。
毎日新聞が挑む「ソーシャルメディア連動」の新聞とは?
【写真:創刊0号のトップ面。親指あたりに「twitter」の文字】
twitterを始めとするソーシャルメディアに注目が向かう昨今。私もこの分野には、強い注目をしています。
ネットに押され気味な新聞社が、あえてソーシャルメディアを活用しながら、「紙との連動」にもこだわるという姿勢。ぜひ詳細を知りたいと思い、今回、そのご担当の方のお話をうかがう機会を得ました。
【写真:毎日新聞アドレスではなくtwitterアドレスが記載されている点に注目。新聞社媒体としては驚き】
明治大学・商学部の人気講座「ブログ起業論」。そのゲストに「毎日RT」担当の方がいらしたのです。
同社代表室 兼 学芸部記者の中島みゆきさん(!!)。
水と緑の地球環境本部記者の佐藤岳幸さん。
【写真:講義「毎日RTが目指すこと」。毎日新聞の中島みゆきさん!から】
今回の「毎日RT」の取り組み。twitterマーケティングに関心のある一般の方向けの講演であっても、注目される分野であるはずなのに、学生の皆さん、本当に恵まれていますね・・・。
なお、「ブログ起業論」については、こちらをどうぞ。
新たに創刊される「毎日RT」の内容は?
この「毎日RT」。背景や位置づけなど、同社のリリースから抜粋してみると、以下のようになります。
インターネットの双方向機能を活用し、読者とともに紙面をつくる新しい形のメディアを目指すもので、これまで積極的には新聞を購読していなかった若い世代がターゲットです。
毎日新聞の総合ニュースサイト「毎日jp」(http://mainichi.jp/ )のアクセスランキングからニュースを選んだうえで、関連情報、解説記事などを加え再構成して掲載。「読者がニュースだと感じたニュース」を最優先で報じます。
月曜日を除く週6回の発行を原則とし、毎日新聞の販売店から朝、お届けします。
■リリース
毎日新聞社が新媒体「MAINICHI RT」を創刊(2010/5/7)
http://mainichi.jp/info/news/20100507org00m040033000c.html
■「毎日RT]公式ページ
http://mainichi.jp/rt/
■twitterアカウント
@mainichiRT
■「毎日RT」専用twitterハッシュタグ
#mainichiRT
・創刊日:2010年6月1日
・判型:タブロイド判24ページ
・発行部数:約5万部を予定(発刊時)
・発行エリア:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
・定価:1,980円(月額、消費税込み)
◇「RT」とは
ツイッター用語の「Re Tweet」(リツイート)から発想したタイトル。このほかにReal Time、Read Tomorrow、Reliable Text、Rare Tactics?など、さまざまな意味を込めています。ツイッターアカウントは「mainichi RT」
6月1日に創刊となる同紙ですが、4月31付の見本紙(第0号)を拝見しながら、いろいろなお話をうかがうことができました。
【写真:どのページもtwitterと連動】
・新聞の収益源は「広告収入」と「購読料収入」で成り立っていること。
・新聞広告の市場の落ち込みにより、上記の比率は次第に、
「4:6」→「3:7」→「2:8」と変化しつつあること。
・「購読料収入」の比率が上がっているものの、
それでも「購読料収入」の絶対額は下がっているという現実。
購読者を増やす!という観点から現状分析をした場合、若い世代の読者が少なくなっていることが大きく、「若い世代に読んでもらえる新聞をつくるには?」が出発点であること。
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メインターゲットを30代とした場合、彼らを分析したところ、
・学生時代からネットや携帯を使用している世代
・新聞を取らないにしても、情報に積極的な人が多いということ
・「いらないものは買わない」というスタンス
などが挙げられ、特に大事な点として、
・「上から目線」を嫌う人が多い
というところに注目。
それゆえに、「読者と共につくる媒体であるべき」という観点から、twitter連動というコンセプトに至ったという話でした。
そして、新聞社がネタを決めるのではなく、アクセスランキングで多くのアクセスを集めたニュースを取り上げるというスタンス。
【写真:「毎日jp」のアクセスランキングが紙面に。全部140字で解説するこだわり】
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twitterユーザーは、ポジティブで親切、積極的で愚痴が少ないというのが見立てのようで、そうした建設的な人たちをつくりあげる媒体というのは、意味があると。
また、ソーシャルメディアの特性である「人とつながれる」「瞬時に情報が流通する」という点については、新聞にはできない優位性であり・・・。
一方で、包括一覧性など、紙の良さも一方で存在し、その両方を「良いとこ取り」していく媒体として、今回の「毎日RT」を打ち出していくという話が展開されました。
【写真:コンセプト。ソーシャルの良さと紙の良さの重なるところで勝負!】
今回、背景から狙い、コンセプトなど、いろいろなお話をうかがって、「興味深い」「面白そう」「楽しみ」・・・という感想をもったものの、「新しい購読料収入を盛り上げていく起爆剤になるのか」という観点については、正直なところ、その成否は見えませんでした。
(この日の授業の最後で、この事業の今後について私にコメントを求められたのですが、うまい回答ができず・・・、会場の皆様、失礼いたしました)
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ただ、新規の取り組みとして、「興味深い」「面白そう」「楽しみ」という点は重要だと思っています。
【写真:発刊までのあゆみ。事業の立ち上げはいつでも興奮もの。起業家の私だけ?(笑)】
新しい要素があるということは、
結果についても、新しい動きをつくることができる、
思いもよらない成果や展開を生み出すことができる、
ということでもあるからです。
やりながら改善していくことで、やりながら新アイディアを展開していくことで、面白いものができる可能性。
私はそこにこそ、注目をしたいと感じました。
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従来の新聞では、ユーザーが新聞社に意見を提供するということは、いわゆる「投書」くらいしかありませんでした。
また、有名人でなくても現場感覚に優れた方はたくさんいて、テレビのコメンテーターの声よりも、市井の「実は専門家よりすごい」一般人の声の方がはるかに意味があったりする・・・。
そうした声を、新聞社が引き上げていくことには大きな意味があります。
【写真:twitterコメントだけで構成されるページも】
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そうした「今後の可能性」という点では、非常に面白いところがあると思っています。
テスト紙面を拝見すると、「もっとこんな風にしては?」と思うところもありますし、現状のウェブやtwitter運営を見ていても、同じように思うところが多々あります。
でも、従来の新聞に比べると、いろいろなことが試していける!という部分は、非常に大きな可能性の萌芽になっているものと思っています。
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今回、様々なお話をうかがって、ぜひいろいろと関わっていきたいものだと思った次第です。
ソーシャルメディアの台頭で、あらゆる産業や組織に変化が訪れ、またそれはどんどん加速していくはずですが、こうした新しい可能性もまた、どんどん出てくるのでしょう。
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一般人が新聞社に意見する。
一般人が新聞社に投稿し、それが容易に掲載される。
「肩書き」より「意見の質」で勝負できる。
新聞社の運営に提言ができる。
例えばそんなこと。
【写真:テレビ欄にもtwitter欄が用意されています(写真はダミーですが)】
これに、「傍観者」ではなくて「参与者」として関われること。
こんなに面白い時代は無いのではないでしょうか。私自身も、できうる限り、いろいろ関わっていきたいと思います。皆さんもぜひ!
【追記】毎日RTの背景や活用法を徹底解剖するイベントを開催
追記です。後日「毎日RT」に関するセミナーを開催しました。創刊の背景や活用法などに焦点を当てたイベントです。詳しい内容報告については、こちらをどうぞ。