インドネシアの2020年の祝日カレンダーをまとめてみました。「祝日なんて、インドネシアのカレンダーを見ればわかることでは?」と思う人もいるでしょう。しかしインドネシアの祝日は、日本と異なり毎年微妙に日にちが変わります。
また、直前になって急に変更や追加されるケースもあり、2020年版についてもすでに2回も追加や変更が発生しています。
【追記】5/20に3回目の変更が発表されたため、以下に追記を行っています。
そこで、インドネシアの祝日カレンダーの最新版をまとめるとともに、インドネシアの祝日を理解するためのコツや豆知識を整理しました。ぜひ参考にしてみて下さい。
目次
コロナウイルス問題でインドネシアの祝日カレンダーに「追加と変更」が
「変更後の2020年最新カレンダー」の前に、まずは変更の経緯を説明します。「早くカレンダーを見たい!」という方は「【最新版】インドネシアの2020年の祝日カレンダー」に飛んで下さい。
まず「インドネシアの2020年祝日カレンダー」が発表されたのは、2019年8月27日のことです。政府発表というかたちで行われましたが、その後コロナウイルスの問題により、3回に渡って「追加」と「変更(日付の移動)」が発生しています。
既存のカレンダーや既存のウェブサイトでは、この「追加」と「変更(日付の移動)」が反映されていないものもあるので注意して下さい。具体的な変更内容は次の通りです。
3月9日に「政令指定休日(有給取得奨励日)」を変更(日付の追加)
インドネシア政府は3月9日に会議を開き「2020年の休日を4日間追加する」旨の決定をしました。従来は年間で20日間とされていた休日が、24日間へと変更になります。
追加された4日間は次の通りです。
・8月21日(これにより、8月20日から8月23日という4連休が成立)
・10月30日(これにより、10月29日から11月1日という4連休が成立)
ムハジル人材開発・文化担当調大臣は「この決定が、インドネシアの一体化と経済環境にポジティブな影響がもたらされることを期待している」としています。
突然、休日が増えたわけですが、この決定の背景にはコロナウイルス問題による経済停滞がありました。特に観光面での打撃が大きく、観光を活性化させるための策として「休日の増加」が決まったようです。
この時インドネシアではコロナ感染者が発生しておらず、「移動の自粛」ではなく「移動の活性化」が期待されたわけです。
詳細は、人材開発・文化担当調整大臣(Kemenkopmk)ウェブサイトに掲載されています(インドネシア語)。
4月9日に「政令指定休日(有給取得奨励日)」を変更(日付の移動)
2度目の変更は、その1ヶ月後に発表されました。インドネシアのムハジル人材開発・文化担当調整大臣は4月9日「5月26日から29日までの政令指定休日(有給取得奨励日)を取り消し、12月28日から31日へ移動させる」と宣言したのです。
・5月27日 → 4/9付の政府決定で、12月29日へ移行することに
・5月28日 → 3/9付で追加設定。しかし4/9付で12月30日へ移行することに
・5月29日 → 3/9付で追加設定。しかし4/9付で12月31日へ移行することに
当初予定では、5月24日・25日はイスラムの「断食明け大祭(レバラン)」となっており、その後の数日間を含めた大型連休(レバラン休暇)では、多くの人が田舎へ帰省することが想定されていました。
また前述の通り「3月9日付の追加決定」で5月28日と5月29日を休日にしました。5月30日と5月31日は土日で、6月1日は祝日(パンチャシラの日)のため、本来なら「5月21日から6月1日という大型12連休」が成立するはずでした。
コロナウイルスの感染予防の観点から、インドネシア政府は「大型連休での帰省」を控えるよう呼びかけていました。しかし、より強制力をもたせるため「休日の移動」に踏み切ったものと考えられます。
5月20日に「政令指定休日(有給取得奨励日)」を変更(日付の移動)
その後、5月20日に3度目の変更が発表されています。ムハジル人材開発・文化担当調大臣は「5月22日は休暇奨励日ではない」としました。
同日行われた会議で決まったもので、「公務員と国営企業のスタッフにとっての休暇奨励日ではない」とコメント。公式文書でも日程変更が発表されています。文書によれば「代替日をいつにするかは未定」としています。
なお、今後もスケジュール変更の可能性が残っています。
今の時点での議論としては、4月9日決定で「12月28日から31日まで」に移行させた4日間の「政令指定休日」について、6月下旬のコロナ動向をふまえた上で、7月31日の祝日「イスラム犠牲祭イドゥル・アドハ」の前か後に移動させるという案も検討されているようです。
もしそうなった場合、7月31日を前後して5連休、あるいは今回変更が決まった1日を含めた6連休が実現する可能性もあります。
【最新版】インドネシアの2020年の祝日カレンダー
上で紹介した通り、2020年のインドネシアカレンダーには3度に渡って「追加・変更」が行われました。非常にややこしいですよね・・・。
そこで、これらの変更を反映させた「最新版の祝日カレンダー」を作成してみました。以下の通りです。
月日 | 日本語 | 宗教 | インドネシア語 | 英語 | 参考 |
---|---|---|---|---|---|
1月1日 | 新年元旦 | 関連なし | Tahun Baru 2020 | New Year’s Day | |
1月25日 | イムレック(中国暦春節:2571年新年) | 仏教 | Tahun Baru Imrek 2571 | Imlek,Chinese New Year | ブログ記事 |
3月22日 | ムハンマド昇天祭 | イスラム教 | Isra Mi’raj Nabi Muhammad SAW | Prophet Mohammad’s Ascension | |
3月25日 | ニュピ(サカ暦1942年新年) | ヒンドゥー教 | Hari Raya Nyupi Tahun Baru 1942 | Nyepi, Balinese Saka New Year | |
4月10日 | イエス・キリスト受難日(聖金曜日) | キリスト教 | Wafat Isa Al Masih | Good Friday | |
5月1日 | メーデー | 関連なし | Hari Buruh International | Labor Day | |
5月7日 | ブッダ生誕祭ワイサック(仏教大祭) | 仏教 | Hari Raya Waisak 2564 | Waisak | |
5月21日 | イエス・キリスト昇天祭 | キリスト教 | Kenaikan Isa Al Masih | Ascension of Christ | |
5月24~25日 | イドゥル・フィトリ(1441年断食明け大祭) | イスラム教 | Idul Fitri 1441 | Idul Fitri 1441 | ブログ記事 |
6月1日 | パンチャシラの日 | 関連なし | Hari Lahir Pancasila | Pancasila Day | |
7月31日 | イスラム犠牲祭イドゥル・アドハ | イスラム教 | Idul Adha | Hari Raya Idul Adha 1441 | |
8月17日 | インドネシア共和国 独立記念日 | 関連なし | Hari Kemerdekaan | Independence Day | ブログ記事 |
8月20日 | イスラム暦1442年新年 | イスラム教 | Tahun Baru Islam 1442 | Moslem New Year | |
10月29日 | ムハンマド降誕祭 | イスラム教 | Maulid Nabi Muhammad SAW | Anniversary of the birth of Prophet Mohammad | |
12月24日 | 政令指定休日 | 関係なし | Cuti bersama | Government-decreed holidays | |
12月25日 | クリスマス | キリスト教 | Hari Raya Natal | Christmas | |
12月28日 | 政令指定休日 | 関係なし | Cuti bersama | Government-decreed holidays | |
12月29日 | 政令指定休日 | 関係なし | Cuti bersama | Government-decreed holidays | |
12月30日 | 政令指定休日 | 関係なし | Cuti bersama | Government-decreed holidays | |
12月31日 | 政令指定休日 | 関係なし | Cuti bersama | Government-decreed holidays | |
実施日未定(5/22に予定されていたもの) | 政令指定休日 | 関係なし | Cuti bersama | Government-decreed holidays |
ちなみに、2016年の祝日カレンダーは以下の通りです。異なる点が多いことに気づかれるでしょう。
インドネシアの祝日カレンダーは政府が毎年発表
インドネシアの2020年祝日カレンダーを紹介しました。続いては、インドネシアの祝日を理解するための背景事情などをご紹介していきます。
インドネシアの祝日の年間カレンダーは、毎年政府が発表します。祝日の中には太陰暦をつかっているものがあり、該当日が毎年ずれていくという背景があるためです。そのため政府内で話し合い、翌年の祝日を決定してから発表するという流れをとっています。
具体的な手続きとしては、宗教大臣、労働大臣、国家機関強化・官僚改革大臣の3者の共同決定というかたちをとります。その後、全体に向けて「来年の祝日はこの日にしますよ」というアナウンスが行われるという流れです。
2020年の祝日は、2019年8月27日付の政府文書に基づいています。ちなみに文書の題名は驚くほど長いです・・・。
インドネシアの祝日?政令指定休日(有給取得奨励日)とは?
インドネシアでは「祝日」の他に「政令指定休日」という日があります。この「政令指定休日」は「祝日」とは何が違うのでしょうか。わかりにくい点かもしれませんが、インドネシアの祝日を理解するには大切な点です。かいつまんで説明します。
厳密には法定休日ではない
インドネシア語では「祝日」を「Hari Libur Nasional(国民の祝日)」もしくは「Hari Merah(赤い日)」といい、「政令指定休日」は「Cuti bersama(共同休暇)」といいます。
「政令指定休日」は「一斉有給取得奨励日」とも呼ばれており、有給休暇の消化促進を狙いとして政府が定めるものです。厳密に言えば「法定休日」ではないため、企業は必ずしも休業しなければいけないわけではありません。
しかし政府機関は原則休日となり、有給を一斉に行使する会社がほとんどです。法律上は「祝日」ではありませんが、政府による年次の「祝日発表」で「祝日」と同時に発表され、実質的にも祝日状態になります。
ほとんどが休む理由は「レバラン休暇」の大型連休
その背景には「政令指定休日」が「断食明けの連休期間(レバラン休暇)」に合わせて設けられていることがあります。田舎に帰省する、いわば日本でいう年末年始の休暇のようなイメージです。多くの人にとって大事な休暇期間であることから、民間企業もほとんどは休業となります。
なお2020年の「政令指定休日」は以下のとおりです。その後の「変更」を反映させて記載しました。これを見ても「政令指定休日」のほとんどがレバラン休暇に合わせて設定されていたことがわかります。
・12月28日 (4/9付の政府決定で、本来なら5月26日に設定されていたもの)
・12月29日 (4/9付の政府決定で、本来なら5月27日に設定されていたもの)
・12月30日 (3/9付の政府決定で、本来なら5月28日に設定されていたもの)
・12月31日 (3/9付の政府決定で、本来なら5月29日に設定されていたもの)
・実施日未定 (5/20付の政府決定で、5月22日から変更へ。代替日は未定)
イスラムの断食月ラマダンと断食明けの大型連休レバラン休暇とは?
インドネシアの祝日を把握する上で、忘れてはならないのが「ラマダン」と「レバラン」の存在です。国民の85%以上を占めるというイスラム教徒にとって、非常に大事な期間になるためです。
1ヶ月続くイスラムの断食月ラマダン
ラマダンは「断食月」のことです。2020年の場合「ラマダン期間」は、4月23日から5月23日と定められています。イスラム教徒はラマダンの期間、日の出から日の入りまでは飲食を控えることになります。断食といっても「1日中ずっと食べない」というわけではありません。
なおラマダンは「1ヶ月間、断食をしましょう」という月であって、休日ではありません。しかしカレンダー理解のためにラマダンを知っておく必要があるのは、ラマダン明けに「レバラン」という大型連休があるためです。
ラマダン明けを祝う大型連休レバラン休暇
断食月があけるとレバランです。インドネシア最大の連休期間で、日本の年末年始に相当すると考えて良いでしょう。
2020年の場合「レバラン祝日」は、5月24日から5月25日となっています。わずか2日間でしかありません。しかしポイントは、その前後に「政令指定休日」が設定されているということです。これを組み合わせると、かなり長い連休になります。なんと12連休です。
・5月22日:政令指定休日
・5月23日:<土曜日>
・5月24日:レバラン祝日(断食明け大祭)
・5月25日:レバラン祝日(断食明け大祭)
・5月26日 政令指定休日 → 4/9付の政府決定で、12月28日へ移行することに
・5月27日 政令指定休日 → 4/9付の政府決定で、12月29日へ移行することに
・5月28日 政令指定休日 → 3/9付で追加設定。しかし4/9付で12月30日へ移行することに
・5月29日 政令指定休日 → 3/9付で追加設定。しかし4/9付で12月31日へ移行することに
・5月30日:<土曜日>
・5月31日:<日曜日>
・6月 1日:祝日(パンチャシラの日)
2020年のレバラン休暇は5連休に
このように、本来であれば7連休、そして3/9付の決定により2日が追加されて12連休になるはずでした。しかしコロナ対策で「日程変更」が決まり、4日間の政令指定休日が年末へ移動することになりました。
その結果、2020年のレバラン休暇は5連休となります。参考までにレバラン休暇の5連休とは以下のとおりです。
・5月22日:政令指定休日
・5月23日:<土曜日>
・5月24日:レバラン祝日(断食明け大祭)
・5月25日:レバラン祝日(断食明け大祭)
【5/20追記】2020年のレバラン休暇は3連休に
その後、5/20政府決定で、5/22の「政令指定休日」が変更になりました。そのため2020年のレバラン休暇は3連休となります。以下の通りです。
・5月24日:レバラン祝日(断食明け大祭)
・5月25日:レバラン祝日(断食明け大祭)
なお断食明けのお祭り「イドゥル・フィトリ」については、こちらもどうぞ。
インドネシアのカレンダーで注意すべき太陰暦の問題
インドネシアの祝日には太陰暦にもとづくものと、太陽歴にもとづくものがあります。太陽暦にもとづくものは日にちが固定されていますが、太陰暦の場合は毎年少しずつズレが発生することになります。
太陽暦で毎年日付が固定されている祝日
毎年固定されているインドネシアの祝日は以下の5つです。
・5月1日:メーデー
・6月1日:パンチャシラの日
・8月17日:独立記念日
・12月25日:クリスマス
太陰暦の祝日は毎年変更に
上の5つを除くインドネシアの祝日は、すべて太陰暦に基づいて設定されています。月の満ち欠けによって設定されており、イスラム教のヒジュラ暦、ヒンドゥー教のサカ暦などがあります。
太陽暦と比べると年間で11日ずつズレが発生します。祝日の日にちが毎年少しずつ変化するのはそのためです。インドネシアに行く予定の方は、念のため、事前にカレンダーチェックをしておくことをオススメします。
インドネシアの祝日には振替休日が無い
なお注意点としておさえておきたい点がもう一つあります。それは「インドネシアには振替休日という制度がない」ということです。
観光目的なら問題はないでしょうが、ビジネス目的の出張者であれば気をつけましょう。早合点して「この祝日は日曜と重なっているから、きっと振替休日になるな」と思ってみたら、実は通常通りだった・・・なんてこともありえます。
もし「休みかどうかわからない」という場合は、取引先や訪問先などに確認をとってみて下さい。
まとめ:インドネシアの祝日カレンダーをしっかり把握しよう
インドネシアの祝日について、2020年を事例にまとめてみました。インドネシアの祝日は毎年変わります。また直前になって変更や追加も発生します。そのためインドネシア行きを計画する際は、事前にスケジュールを確認しておくのが安全です。
また祝日カレンダーを理解する上では、イスラム教の「断食月」(ラマダン)や、断食明けの大型連休(レバラン休暇)、また祝日と似た制度である「政令指定休日(有給取得奨励日)」という制度にも目配せをすると良いでしょう。
わかりにくいところもあるかもしれませんが、要は「事前にチェックした方が安全だよ!」ということです。
またカレンダーを見てみるとわかる通り、インドネシアの多様な文化や宗教事情を反映した結果だと見ることもできるでしょう。インドネシアの祝日を理解することで、これもインドネシアの魅力の一つとして感じてくれたら嬉しいです。