インドネシアの教育格差|オンライン学習の弊害に挑む熱血教師が話題!

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インドネシアでは2020年3月から各地で休校が始まりました。新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とする措置で、自宅でのオンライン学習が推奨されています。しかしインドネシアには貧富の格差があります。必ずしも全ての子供たちがオンライン環境にあるわけではありません。

そんな中、東ジャワ州マドゥラ島にあるスメネップの小学校の先生の活動が話題です。「オンライン環境にない生徒にも教育機会を与えたい」と自ら家庭訪問をスタートしました。その活動を伝えるFacebook投稿は、すでに4万5,000件を超える反響ぶりです。

現地メディアでも取り上げられ「これこそ教師の鏡だ」との声も。そこで今回のブログでは、様子がわかる映像や現地の記事をまじえながら、その熱血先生の活動の様子を紹介します。




バイクと裸足で家庭訪問!教育格差が伝わる2分半のニュース映像

まずは上の映像をご覧ください。インドネシア語のニュース映像ですが、言葉がわからなくても、その様子は映像だけでもわかります。

スマホのない家庭の生徒たちを訪問しながら学習支援をしているのは、東ジャワのマドゥラ島に住む小学校教師、アファン先生(39)です。

政府は外出しないで、家で勉強しなさいとの指示を出しています。しかし私の生徒たちの場合、多くの家庭はスマホを持っていません。スマホがないと宿題の提出もできない・・・。スマホが無いと自宅学習プログラムもできないんです。だから私がみんなの家に行くことにしました。私もジレンマです。

バイクに乗って家庭を訪問する日々。場所によってはバイクを近くの民家に預け、靴を脱ぎ、はだしになって田んぼの畦道を歩く必要も。アファン先生は誰かに指示されて、やっているわけではありません。生徒たちのために自発的に始めた活動です。

映像を見れば、「わざわざそんな場所にまで訪問するのか!」と、びっくりする人もいるかもしれません。その活動の様子を紹介したアファン先生のfacebook投稿も大反響で、投稿5日目にして、27,000のいいね、6,200のコメント、12,000シェアを記録しています。

教育格差と戦うアファン先生の小学校、スメネップの場所は?

アファン先生の小学校は、東ジャワ州マドゥラ島のスメネップ県にあります。場所は上の地図の通り。インドネシア第2の都市スラバヤから見ると、右上にあるのがマドゥラ島。その最も東にある県がスメネップ県です。

マドゥラ島は、経済的には豊かとは言えないエリア。スラバヤや東ジャワへの出稼ぎも少なくありません。学校があるエリアの拡大地図はこの通りです。

マドゥラ島は食塩の産地としても知られています。農業も行われていますが、それほど豊穣な場所とも言えないようで、貧しい土地と表現する人も少なくありません。アファン先生によれば、小学校の生徒数は合計20人。ご自身を含めて4人の先生しかいないと言います。

コロナ問題による休校とオンライン化。その一方で必ずしもスマホを持っているとは限らない生徒たち。アフィン先生は大きな課題を抱えることになります。

反響は3万超!熱血教師アファン先生の活動を伝えるFacebook投稿

「生徒たちにはスマホがない。ならば私がみんなの家を訪問しよう」

そう決意したアファン先生。家庭訪問による教育を始めて一ヶ月超が経過し、その活動をfacebookに投稿します。

「私はまだ、良い先生とは言えません」との述懐から始まる投稿は、またたく間にインドネシア中に広まります。投稿した4月16日から18日までの2日間で、6,300を超えるシェアを集めました。投稿内容から、アファン先生の活動を紹介しましょう。

オンライン学習へ移行、でも生徒の多くはスマホがない!

インドネシア 自宅学習 アファン先生

インドネシアはコロナ対策で学校が休校に。オンライン家庭学習が推奨される中、アファン先生の活動内容に応援の声が集まりました。

「この数週間、私はずっと悩んできました。政府は家庭学習という指示を出しました。しかし私にはできません。なぜなら私の生徒たちはスマホもPCも持っていないからです。もし持っていたとしても、親御さんに通信料の負担をかけてしまいます」

アファン先生によれば、親御さんの中には「家庭学習のためにスマホが必要だ」と借金を求めた人もいたそうです。

「家からスマホで勉強しろって聞いて、私はびっくりしたんです。しばらく考えてから私は言いました。携帯がなくてもいいんだよと。私がみんなの家に行って教えるからと」

それぞれの家庭を訪問して、出張授業!

インドネシア 自宅学習 アファン先生

全校生徒は20人という僻地。校長先生、宗教の先生、体育の先生、そしてアファン先生という小さな学校です。

「自宅にいても、スマホなしで勉強できるようにしなきゃ!」と考えたアファン先生。週に3日の家庭訪問を続けて3週間が経過しました。

自分のバイクで訪問する日々。大雨に見舞われたこともあり、ぬかるみで転倒しそうになったこともあるそうです。もちろん、バイクが入れないような場所に住む子どもたちもいます。中には徒歩で行かなければいけない家も。

「先生が来てくださるから、子供を家において、安心して畑仕事に行けるんですよ」

そんな親御さんたちの声も、毎日の活動の支えになっているとアファン先生は語ります。

教育カリキュラムを遵守するより、人間としての成長を

インドネシア 自宅学習 アファン先生

また学校の勉強だけではなく、「親を手助けすること、健康を維持すること、コロナとは何か、お祈りを欠かさずに」といったことも教えたいと。

「今は非常事態だから、教育カリキュラムをちゃんとやったか!と生徒に圧力をかける時期ではありません。健康は大丈夫か? 1日どんなことをやってるか? きちんとお祈りをしているか? と。勉強以外にも大切なことはたくさんあります」

アファン先生は、家庭に訪問して勉強を教えるという活動が、政府の指示に反していることを知っています。「でも生徒のことを考えたら他に方法が無いんです」と。

家族の支えが訪問授業の原動力に

家庭訪問には自分のバイクが必要です。交通費の負担がかかっている現状について、アファン先生は語ります。

「請求すれば支援してくれる制度があるみたいですが、請求する意志はありません。これは教師としての義務だと思っていますから」と。

また、こうした活動を決断した背景には、奥様の支援があったと述懐されています。

「もう、どうしたらいいんだろう?って妻に相談したんです。で、自分はこうしたいだという思いを伝えました。そうしたら、妻は応援してくれたんですよ」

アファンさんのfacebook投稿は、4/18の日本時間21:00現在、いいねが13,000件超、コメントが3,247件、シェアは6,326件となっています。その後、4/24の日本時間23:00現在で見てみると、いいねが28,000件超、コメントが6,350件、シェアが12,000に。反響が止まらない状況です。

Ini kisah Pak Guru Avan. Ia guru SD di pelosok Sumenep. Tak semua siswa punya fasilitas belajar online. Pak Guru Avan mengajar dari rumah ke rumah.

オンライン教育の格差を解消!教育文科省の教育TV番組スタート

インドネシア 教育番組 番組表

インドネシアではコロナウイルス問題により、多くの生徒がインターネットを使った自宅学習を余儀なくされています。しかし、経済的・地理的条件からネット接続環境が制限されている人々もいます。

そうした状況を受け、インドネシア教育文科省のナディム・マカリム大臣(ゴジェック創業者)は9日、「自宅学習プログラム」のテレビ放送を開始すると表明しました。インドネシアの公共放送「インドネシア・テレビ公社」(TVRI:旧国営テレビ局)で13日から放送がスタートしています。

当初は3ヶ月間の放送を予定し、番組コンテンツは読み書きや計算、人格形成に寄与するものからスタート。将来的には、親や先生を対象とする教育プログラムも展開するようです。

実際に見てみましたが、内容的には日本の教育テレビで放送される内容に似ています。そのため「授業と同等の効果があるか?」と言えばイマイチなところですが、教育格差を少しでも埋めようとする試みとしては、とても迅速な対応だったと感じます。

このプロジェクトは教育文科省、および非政府組織と連携してモニタリングと評価を行うとしています。どれだけPDCAサイクルが回っていくのか、今後の期待した取り組みの一つです。

'Program ini membantu masyarakat yang memiliki keterbatasan pada akses internet, baik karena tantangan ekonomi maupun letak geografis,” ujar Nadiem.

「あきらめるのではなく、まずやってみる」という教育を

チャレンジ 無謀からの挑戦

インドネシアは貧富の差が大きく、都市と地方の格差も大きなものがあります。教育格差も例外ではありません。

コロナウイルス対策で2020年3月から休校に。自宅学習が推奨されてオンライン学習がスタートしました。しかし、オンライン学習ができる環境にない学校や家庭もあります。つい置き去りにされかねない問題ですが、今回紹介した先生のように、果敢に挑戦する人物もいます。

ただ映像を見ればわかるように、純粋な学習効果、つまり「知識や思考力を養う」という点では大きな限界があると言わざるを得ません。一方で、先生と生徒というつながり、先生と保護者というつながり、そうした「人間としてのつながりを養う」という点では大きな教育的効果があるように見えます。

いずれにしても「できないから、あきらめる」というのではなく「できない環境だからこそ、できることからやってみる」というアファン先生の姿勢が、多くの人を惹きつけたことは間違いありません。「あきらめるのではなく、まずやってみる」ということ。コロナ時代において大切な教訓だと言えるのではないでしょうか。

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【参考】インドネシアで教育!小学校留学に付きそう親の記録

ちなみに私は家族でインドネシア生活をしており、2人の子供も現地校に通わせています。子供を現地校に通わせる上では、親なりの格闘もあります。そのあたりに興味のある方は、ぜひこちらの記事もどうぞ。

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