インドネシアの交通機関アンコットの魅力!日本の学会でも研究発表が!

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インドネシアの小型路線バスが「アンコット」。「angkot(アンコット)」もしくは「angkota(アンコタ)」と呼ばれる乗り物で、地元では庶民の手軽な交通手段となっています。「mikrolet(ミクロレット)」と呼ぶ人もいます。

インドネシアの庶民の足、アンコット
【写真:インドネシアの庶民の足、アンコット】

この「アンコット」。もともとは「angkutan kota」の略称で、「angkutan」はインドネシア語で「輸送」のこと。「kota」は「都市」を。したがって、「都市の輸送機関」という意味になります。

小型の路線バスで、私の住む東ジャワ・マランでは、運行ルートのどこで降りても26円程度。決まったバス停はありません。

ルートの途中で降りたい地点になったら運転手さんに「おります!」と伝えると、止めてくれます。慣れないと乗りづらいかもしれませんが、いったん乗り方を習得して慣れてしまうと、とても便利な乗り物です。

先日、このミニバスに乗って家に帰る時のこと。運転手さんとの心通じるやりとりがありました。インドネシアならではの・・・「良い加減」という魅力に迫ります。

【追記】その後、日本の学会でもマランのアンコットが取り上げられたようで、最後に追記しました。

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夜の6時ちょっと前のこと。アンコットに乗っていたら、途中で乗客が私一人だけになりました。私を一人だけ乗せて、アンコットはしばらく走行していきます。

ある時、60代になる初老の運転手が質問してきました。

運:「兄ちゃん、どこまで行くの?」
私:「●●までです」
運:「じゃ、しばらくして左に曲がるので良い?」
私:「はい」
運:「家に帰りたいもんでね」
私:「そうでしたか。じゃ、左曲がってから、●●銀行の前でもいいですか?」
運:「あぁ、いいよ」
私:「ありがとうございます」

みたいな展開。
 
 
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これだと、意味がわからないでしょうから補足するとこうです。

運:「兄ちゃん、どこまで行くの?」
私:「●●までです」(やったー!ひょっとして・・・)
運:「じゃ、しばらくして左に曲がるので良い?(運行ルートからはずれるけど)」
私:(よしきた!)「はい!(方向は合っています)」
運:「家に帰りたいもんでね(運行ルートの終点まで行くのは面倒くさい。君が降りる場所まで行ったら、終点まで行かずに家に直行したいんだよ)」
私:「(やはり)そうでしたか。じゃ、左曲がってから(自宅近くの)●●銀行の前でもいいですか?」
運:「あぁ、いいよ(おれの家の方向の途中だからね)」
私:「ありがとうございます!」

という感じ。
 
 
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バスの運行ルートからズレるのに、家の近くでおろしてくれました。
私の住むエリアのミニバスでは、時々こうしたラッキーがあります。
 
ドアを開けたままで快走します
【写真:ドアを開けたままで快走します】
 
「バスが途中で帰るなんて・・・」とか、
「そんないいかげんでいいの?」と思う向きもあるでしょう。

それも、ごもっとも。
交通安全の鉄則は、過度なほどのルール順守にあるのかもしれません。
 
 
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でも私は、こうした血の通った柔軟性も、とても好きです。これはこれで、合理性があると思いますしね。

たしかに「いいかげん」かもしれませんが、あえて言えば、ポジティブに「良い加減」とでも表現すべきものと感じます。

今の日本でこれをやろうとするのは無理でしょうが、今のインドネシアでは、これで充分に成立するということです。今後の経済成長に伴って、こうした風習はだんだん消えるのかもしれませんね。
 
ボロい車も多く、なんとダッシュボードが無いアンコットも!
【写真:ボロい車も多く、なんとダッシュボードが無いアンコットも!】
 
 
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運転手さん、今日もありがとう!
帰宅して、ぜひご家族とゆっくりと、くつろぎの夜を過ごしてほしいなぁと思います。

普通は、バスの運転手に対して、いちいちそんな気持ちは抱かないもの。でも、こういう「心の通い合い」があると、ついついそんなことまで気にかけてしまいます・・・。これもまた、インドネシアの一つの魅力だと言えるかもしれません。

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マランのアンコット研究が日本都市計画学会で発表されていた!

追記です。マランの公共交通機関アンコットについて、なんと日本で「研究発表」の題材に取りあげられたことがわかりました。びっくりです・・・。

研究テーマは、燃料消費の実験!

発表された論文は「インドネシア地方中規模都市におけるアンコットの実走行燃料消費に関する研究」というもの。英文では「Fuel Consumption Study of Angkot in the Local Medium-sized City of Indonesia」です。

テーマは「燃料消費の実験」だそうですが、なぜ研究場所にマランを選んだのでしょうか・・・謎です。あまりにも謎すぎます・・・。

発表されたのは、2017年11月に開催された「第52回 公益社団法人 日本都市計画学会 学術研究論文発表会」です。森ビルの澤田 進太朗さんと東京工業大学の室町 泰徳さんが発表されています。

研究論文の内容と、発表会での質疑の中身は?

「都市計画論文集」の「2017 年 52 巻 3 号 p. 776-781」に収められているようで、概要は以下の通りです。澤田 進太朗さんと室町 泰徳さんには、いつかお会いしてみたいです!

■インドネシア地方中規模都市におけるアンコットの実走行燃料消費に関する研究(澤田進太朗・室町泰徳)

■抄録:
東南アジアの一部の地方都市においては、地域化して発展した都市内道路公共交通、あるいはパラトランジットが重要な役割を担っている。東南アジアでは今後も経済発展と人口増加により交通需要が増加すること、地球温暖化の主要因であるCO2の排出量に占める運輸部門の割合が高いこと等を考えれば、このような地域化して発展した道路公共交通の効率化が望まれる。

本研究では、インドネシアの地方都市マラン市のアンコットを対象に、その燃料消費量、および実走行について現地観測調査を行い、調査データを基に燃料消費量に影響を与える要因を検討した。

結果として、アイドリング消費が燃料消費量に大きな影響を与えており、加速量はあまり大きな影響を及ぼさないことが示された。また、効率化の手段として電気自動車の購入を検討し、購入費用がガソリン車の1.5から2倍程度を下回れば20年程度の長期運用の場合には費用節約的であり、経営面・環境面を考慮すると導入を検討する価値があることが示唆された。

■研究発表会の報告:
本研究は、インドネシアの地方中規模都市であるマラン市におけるパラトランジットであるアンコットを対象に、実走行中の燃料消費量、および走行パターンについて現地観測調査を行い、重回帰分析を用いて燃料消費量に影響を与える要因を検討したものである。

質疑では、燃料消費量の計測は具体的にどのようにしたのか、ドライバーの特性により運転挙動が異なり、燃料消費量に大きく影響するのではないかについて議論がなされた。

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