「2007年、ホテル戦争」という表現がなされることがあります。
いわゆる「ホテルの2007年問題」。2007年〜2008年にかけて、東京の都心部で大型の高級シティーホテルが相次いで開業になるのですが、客室の供給過剰から、過当競争に陥る懸念のことを指します。
今年は、国産では「東京プリンスホテル パークタワー」が開業。外資では、「コンラッド東京」(CONRAD TOKYO:汐留)と「マンダリン・オリエンタル東京」(日本橋)がスタート。2007年には「ペニンシュラ東京」(日比谷)。2008年には「リッツ・カールトン東京」(六本木)という具合です。
コンラッド東京の場所は?
7月1日にオープンする予定のヒルトングループ最高ブランドホテル、コンラッド東京。先日、運良く視察する機会がありました。ソフトバンクが入居する37階建ての「東京汐留ビルディング」。この30階から37階までがホテルになっています。
■ホテル・コンラッド東京(汐留)
コンラッド東京のハード面の充実度
グランドオープンを前にして、急ピッチで工事が行われていました。
、ハード面については、とっても素晴らしいです!
景観もすごい。浜離宮庭園やレインボーブリッジだけでなく、お台場がまるごと見渡せます。
全体的に、このホテルは、デザインが秀逸だと感じました。
モダンな和というイメージです。「門」と「墨絵」がコンセプトだそうで、ホテ所に「門」をあしらったようなデザインが見え隠れします。エレベーターがカードキーに対応していて、宿泊階にしか止まれない仕組みになっているのも、安全上の観点だけでなく、宿泊客の心くすぐる演出と言えるのではないでしょうか。
まずホテル入口の車寄せは、開放感とおこもり感が同居した不思議な空間。これから始まる冒険心を感じさせます。
部屋(スタンダードルーム)の内部も、本当に素晴らしいもので、特にバスルームやソファについては、お見事というしかありません。かなり魅力的です。単なる贅沢空間というのではなく、快適性、機能性においての充分を超える贅沢さが提供されていると思いました。
スイートルームは家具の搬入が終わっていないため見学できなかったのですが、スタンダードルームがすでにスイートの風格を漂わせるに充分なものでありました。
ウェディング部門については、庭園をテーマにした3つのウェディング実施例「ガーデン(GARDEN)、庭園(TEIEN)、ジャルダン(JARDIN)」が提示されていたのですが、空間全体の装飾や演出、スタイリッシュなテーブルセッティングなどには、本当に関心させられ、興味をひかれるものでした。特にジャルダンは、披露宴以外の用途でも、粋なパーティーとしても使えるはず。
あと、スパ&フィットネスエリアの充実ぶりにも驚きました。都内最大級の1400平方メートルを誇り、個室の数も実に多い。特に、スイートタイプの2人部屋には、実にモダンなヒノキ風呂までセットされているところが、本当に魅惑的でした。ここはかなりの人気になるでしょう。
レストランは、まだまだ工事があまり進んでいないのですが、おそらく、相当良い感じに仕上がるように感じました。かなり素晴らしい夜景のレストランになると思います。個室(特にチャイニーズの一番奥の個室)は、予約困難になることが充分予想できます。バーの照明器具に至っては、デザインがたまらない魅力を放っています。
ハード面を見る限り、これはなかなか期待できそうなホテルだなぁと思いました。さすが、日本初上陸のヒルトン最高級ブランドだけあって、相当に力が入っているのだと思います。日本の良さを全面に出した外資系ホテル。ある意味では、新ジャンルでもありますね。パークハイアットがクールだとしたら、ここはクール&ウォームという感じです。
コンラッド東京のソフト面への期待
私は、このコンラッド東京を以前から楽しみにしていました。なぜならこれからのホテルに多大な影響を与える存在になるからです。
あとは、ハードよりもソフト。スタッフのオペレーションとサービスがどの程度まで機能するかに注目したいと思います。「ハードよりもハート」。「天然のホスピタリティ」を「マネジメントする」という、相矛盾する営為を成し遂げてこその高級ホテルなのだと考えます。
サービス規範として「サイレント・シンフォニー」を掲げてスタッフ教育を徹底しているようですが、理念よりも実践がどこまでできるか、ここの成否がホテルの質を決めることになるでしょう。
ひょっとしたら時間がかかるかもしれませんが、これだけのハードを兼ね備えている以上、「サイレント・シンフォニー」を心から体感できる日が来ることを、今から楽しみにしています。久しぶりに、期待あふれるホテルに出会いました。
ホテルとしての「コンラッド東京」が醸し出すインスピレーションパワー
ホテル戦争の先陣を切るかたちになったコンラッド東京。ソフト面も含め、無事に非常に高いレベルでリリースできれば、これから開業や改装をひかえたホテルたちに、強烈な挑戦状をたたきつけるかたちになると言えるでしょう。
今年秋に開業するマンダリンや、再来年開業するリッツ東京などにも、どんどん影響や刺激を与えるでしょう。国内の旧来のホテルを刺激し、従来とは異なる競争が生まれることになるのではないでしょうか。
すでに帝国ホテルやホテル・オークラ、ホテル・ニューオータニやフォーシーズンズも、どんどん改装に着手していますが、2007年のホテル戦争は、日本のホテルのレベルアップにかなり寄与する「事件」になりそうです。
特にハードもソフトも一級のリッツカールトンやオークラが、どう出てくるか、とても楽しみです。
さらにもう1点注目したいのが、コンラッドが主要ターゲットに「インスピレーションクラス」という設定をしているらしいこと。
このネーミング、なかなか、いいじゃないですか。
ホテルはインスピレーションを与える場でもあります。ホテルのレベルがどんどん向上することで、インスピレーションの質にも変容が生じるのではないかと想像します。表に出にくい効果ではありますが、意外と大きな影響を社会に与えているのではないかと予想します。
これからのホテルは、人々にどんなインスピレーションを与えることになるのでしょうか?
ホテルの洗練化が日本の文化・経済の洗練化へも結びつく、そんな期待も、ホテル戦争の裏に存在しているような気がしています。
渡邉 裕晃
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【社長ブログ】時の運と人の縁をきわめる日々の記録
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【 会社HP 】株式会社サムスル(ネット広告代理店)
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■:追記(2006年2月26日)
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