『使ってもらえる広告』レビュー|広告のあるべき姿、知的刺激の冒険

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使ってもらえる広告(「見てもらえない時代」の効くコミュニケーション)
須田 和博 著、アスキー・メディアワークス (2010/1/8)
☆ 今回のポイント ☆ <簡単な内容紹介>

■内容紹介(アマゾンより)
見てもらえない? じゃあ、使ってもらえる広告にしたら?
広告が効かなくなった、見てもらえなくなった、と言われ続けて随分経ちます。生活者(消費者)にとって一見無関係と思われる情報はスルーされてしまうこの時代に、いかに生活者の間に入り込めばいいのでしょうか――。本書では、サービスとしての広告を開発し、身近なところから実感を持って生活者=ユーザーと「キズナ」をつくり上げる「使ってもらえる広告」を提案します。グラフィック、テレビCM、ウェブ……すべてを経験してきた人気クリエイティブディレクターが語る「広告の最前線」。
■内容(アマゾン「BOOK」データベースより)
広告がもう「見てもらえない」としたら?もっと生活の奥深く入りこみ、消費者と「つながる」には?本書では、サービスとしての広告を開発し、身近なところから実感を持って生活者=ユーザーと「キズナ」をつくり上げる「使ってもらえる広告」を提案する。人気クリエイティブディレクターによる「広告の最前線」。

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今年の1月に出た本です。
3ヶ月も前なので、この業界では「若干古い」と言われそうですが、
3ヶ月の月日がたっても、なお精彩を放っているという本です。
本書では、博報堂のクリエイティブディレクターである著者が、
・「見てもらえない」時代の効くコミュニケーションとは何か、
・そもそも広告は必要なのか、
そんな根源的なテーマを展開していきます。

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でも、一方的に真面目くさって説教するわけではなく、
まさに横に寄り添っているかのような、
まさに、一緒におしゃべりしあうかのような親しみをもって、
ディスカッションに入っていけます。
広告不況(ネット以外)と言われ、
「広告」の意味や役割が見直される中、
これからの広告を改めて考え直してみる上で、非常に示唆に富む一冊です。

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結論からすれば、
「見てもらえない」時代の効くコミュニケーションは、
「使ってもらえる広告」であると。
広告って必要なの? という議論については、
まだまだお役に立てるぞ! という内容。
「ネタバレじゃないか」と言われるかもしれませんが(笑)、
それでも読む価値があります。

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議論のスタート地点の整理だったり、
結論に至るまでの思考の過程が、非常に丁寧。
それらはまさに、
インターネットの動態をとらえ、
企業とユーザーとのコミュニケーションのあり方だったり、
両者をつなぐ「ご縁」「絆」をどう創出していくかというテーマだったりを、
深く深く考えさせてくれるきっかけを提供してくれているのです。
読者は、これを読み進めていく流れで、
このテーマについて、自分なりの考察を自然に行えるようになっています。

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もうちょっと丁寧に書くと、こうなります。
従来の広告は、
「見てもらう」、つまり表現で訴求し説得するスタイルだった。
そうして商品をかってもらう流れを担ってきたが、
そもそも見てくれなくなってきた以上、表現だけでは限界があると。
これからの活きる広告のあり方は、
表現ではなく、機能で人の役に立ちながら、
消費者を動かし、広告キャンペーンに参加してもらうことを通じて、
商品を買いやすくする流れを担うべきだろうと結論付けています。

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つまり、
使ってもらえるサービスを広告的な発想で開発することが、
これからの広告会社の役割ではないかとしているわけです。
そんな中で、「広告に参加してもらうための要点」として、
5つのルールを紹介するなど、
(さすがに、そこまではここには書きませんが:笑)
ご自身の豊富な体験から導き出された実学的なまとめが多く、
こうした点でも、オススメ。
全体を通じて、これからの広告のあり方について、
非常に真摯に追求されている姿は、すがすがしさすら感じさせます。

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ここで出てくる論点、
つまり、ユーザーに参加してもらい、
ユーザーを巻き込み、縁や絆をつくっていくスタイルに進むべきとの論点は、
実は私自身も、数年前から感じていた点です。
サムスルの新卒向け会社説明会で、
「広告のあるべき姿」として私が語っていた資料に、
こんな絵があります。
たぶん5年位前です。

新卒向け会社説明会で使っていた「広告」を説明するラフデザイン

【画像:新卒向け会社説明会で使っていた「広告」を説明するラフデザイン】

あくまでもラフです。実態を反映しきっているとは言えない図です。
どうしてこんな図にしたかと言うと、
広告代理店と一般ユーザーとが一緒につながっていかなくてはいけないという、
そういう説明をするために、一側面を強調して作った図です。
広告代理店は、企業とメディアとをつなぐ仕事をしているが、
これからの、そして本来あるべき広告代理店は、
ユーザーとのつながりを重視しなくてはいけない、という話をしていたのです。
そしてサムスルはそういう会社を目指すぞ、と。
だから上の図では、サムスルとユーザーとが線で結ばれています。
広告代理店は、一般消費者と直接の商取引をしないにもかかわらず。

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広告代理業というビジネスは、
一般個人からお金をいただくモデルではありません。
しかし、それでもなお、「ユーザーとのつながりを見よ!」
という話をしてきました。
さらに言えば、
広告を出す企業だけでなく、
それを担う広告代理店も、ユーザーと一緒になって動いていくことで、
ともに成長を遂げていくことが理想であるべきだ(ユーザーも)、とまで言ってきました。

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当時の私は、
mixiやGREE、twitterなどのソーシャル系ツールの到来は想定しておらず、
また、その隆盛を確信できていたわけではありません。
ユーザーが参画する度合いを高めていき、
広告に参加するということ自体にインセンティブが湧くような、
「参加してもらう広告」「使ってもらえる広告」が伸びていくところまで、
具体的に明確に見えていたわけではありません。
でも、
ユーザーとのつながりをもっと強くふまえる時代が来るはずだという感覚は
なんとなく持っていました。
(だから、学生さんにこんな絵を見せてきたわけですが)。

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企業は、広告を出したくて広告を出すのではなく、
何らかの課題を解決したい、業績を上げたいという思いがあり、
その手段として、広告を展開するわけです。
広告を展開することで、企業の業績をあげていく。
それを通じて、それに携わる広告代理店も伸びていくわけですが、
それは同時に、ユーザーにも強い貢献をもたらすものであるべきだ。
そう思っていました。
ユーザーを高めるものでなくてはいけない。
ユーザーに成長を与える内容でなくてはいけない。
広告代理店はユーザーからお金がもらえるわけではないけれど。
そう思っていました。
今回の本で
「使ってもらえる広告」という概念が打ち出されていますが、
自分がふつふつとイメージしていた絵、具体化しきれずにいた絵は、
「まさに、これだっ!」と、
見事にコンセプト化してくれたような思いすら感じています。

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その他にも、
この本では、なるほど!と思えるようなネタが
豊富に書かれています。
真にユーザーを見ていくには「体感」が重要で、
それには、広告マン自身が「ユーザーの生の反応にもまれる経験」が
不可欠だとする点などは、まさに同感。
そのほかにも、いろいろあるのですが・・・、
このブログ、だんだん長くなってきました(笑)。

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とりわけ「これは名言だ!」と思う部分があったので、
最後に紹介しておきます。
ウェブやモバイルが全盛の時代になり、
誰もやったことのない領域がたくさん広がっている時代にあって、
広告マンはどうあるべきかという話。

こういうときに重要なのは、自分から行動して勉強する姿勢と、だれに訊けばわかるかを探り当てる勘と、それでもわからないところは大胆におかませする割り切りと、その際の人選を間違えない嗅覚だ。「わかる領域」の経験値を駆使して予測できる事態に先手を打っておくことも必要だろう。つまり、こういった状況では、スキルとポテンシャルと勉強意欲の高いシロートでありつづける以外に方法がない。しかし、そうありながら、絶対にシロートの座に安住しない強い意志こそが重要となる。だって、私たちは広告のプロなのだから。

まさに同感。
この文章、さらっと書いてあるものの、
実に深い!と言わざるを得ません。

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本書全体を通じて、示唆に富む点が多いということは、
同時に「行間がたくさんある」ということでもあります。
その意味では、
この業界にたずさわっていないと理解しにくい部分もありそう・・・
とは思いますが、現状の課題を整理して、
今後の広告のあり方を模索していくための「土台」として、
ぜひオススメしたい一冊です。
ネットマーケティングに携わっている人や、
広告業界で戦っている人にとっては、
親しみながら知的刺激の冒険ができる本だと言えそうです。

2010年4月8日             渡邉 裕晃

サムスル
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社長ブログ時の運と人の縁をきわめる日々の記録
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会社HP 】株式会社サムスルネット広告代理店
【 1×1×1=100を創る「成長縁(R)」創出カンパニー 】
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