インドネシア社会起業家|障害者が運営するバイクタクシー会社の挑戦!

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先進国において「障害者雇用」は現代的テーマ。障害者であっても自立して生活ができること。この実現のために動いている企業やNPOも増えているようです。

新興国や途上国では、そこまでの余裕は無いのでは?と思われがちですが、この度、インドネシアで非常に興味深い事例を見つけました。この社会起業家の挑戦は実に素晴らしい! そこでブログでご紹介することにしました。

インドネシア 社会起業家 バイクタクシー 障害者 記事【画像:「この障害者は3輪バイクタクシーの会社を起業できた」とのTempo記事より】




インドネシアで普及する交通手段「バイクタクシー」

インドネシアの交通機関では、「オジェック」と呼ばれるバイクタクシーが有名です。

バイクの後ろに乗って、目的地まで移動してもらうサービス。最近では、そのオンライン版として、スマホアプリで手配できる「Go-Jek」(ゴジェック)というサービスがインドネシアの都市部で急成長し、存在感を高めています。

インドネシアのゴジェック|サービス内容の全貌がわかる3分映像!!
テレビでNHKの英語放送「NHK World」を見ていたら、インドネシアのオンラインタクシー「ゴジェック」(Go-Jek)を紹介する映像が流...

そんな中、なんと「運転手」も含めて全てを障害者が運営するという、そんなバイクタクシー会社がインドネシアに誕生したというニュースが・・・。社会の課題を事業により解決する「社会起業」の事例として要注目の事例と言えそうです。

「障害」を意味する言葉を社名のトップに掲げるこだわり

インドネシアの代表的なメディア、Tempoをはじめ、いくつかのニュースサイトが取り上げています。読むとわかるのですが、実にインパクトのある事例です。

会社の名前は「ディファ・シティー・ツアー・アンド・トランスポート」。
(Difa City Tour and Transport)

「Difa」は「障害者」を意味するインドネシア語「Difabel」に由来しているはずで、「障害」を意味する言葉を社名のトップに掲げるところは、事業に対する障害者の存在感だけでなく、「障害者が先頭に立っていくぞ!」という思い入れの強さを感じさせます。

この会社は、首都ジャカルタではなく、中部ジャワのジョグジャカルタで誕生しました。

創業者も障害者というのが異色です。

「スマホアプリを使ったオジェックの運転手になるのを拒まれて、Triyono氏は障害者のオジェックをつくった」とのKompas記事より
【画像:「スマホアプリを使ったオジェックの運転手になるのを拒まれて、Triyono氏は障害者のオジェックをつくった」とのKompas記事より】

     □     □     □

本ブログでは、Tempoの記事でご紹介しましょう。

「この障害者は3輪バイクタクシーの会社を起業できた」Difabel Ini Bisa Buka Usaha Ojek Roda Tiga | Tempo Bisnis(12 MARET 2016 | 08:00)

と題する記事。内容は次のとおりです。

障害をかかえる34歳のTriyono氏は、ジョグジャカルタのSlemen県、Godean市のKrajanに住んでいる。彼は「ディファ・シティー・ツアー・アンド・トランスポート」という名前の3輪オジェック(バイクタクシー)の事業を切り開くことに成功した人物だ。

「三輪オジェックの会社であるディファ・シティー・ツアー・アンド・トランスポートは、全てが障害者によって運営されています。彼らの経済状況を向上させるための一つの手段になっているのです」と、3月11日にTriyono氏は語った。

彼によれば、もともとジョグジャカルタにいる障害者たちは、ジョグジャカルタにあるオジェック業者のオペレーターか運転手になりたかった。

「しかし、彼ら障害者たちが同社のマネージメントに連絡をしても、得られる回答は次のようなものだったのです。企業として受け入れることができません、なぜならオジェックの運転手のスタンダード基準を満たしていないから、というものでした」と語る。

彼が言うには、そのような回答のもと、自分が次に挑戦したことは自分自身のオジェックのシスムを構築するという手段にとりかかることだった。このシステムにかかる費用を捻出するため、企業の「社会的責任」の援助(渡邉注:CSRのこと)を求めて、あちらこちらの企業を訪問して回った。

「でも、今日において、通常なら障害者に与えられる援助は、一般的には一時的なものでしかありません。その援助をどう役立てるべきかを考えることなく、収入を探すための手段になるのです(渡邉注:ここの部分は意味が不明確)。私は援助を探すために、いろいろな企業に出入りしてまわりました。私は一時的な援助ではなくて、障害者の友人たちの収入を探すために役立てるような援助を探したのです」

Triyono氏が言うには、CSRの援助を得たあと自分がやったことは、乗客にとっても、また運転手にとっても、快適で安全な3輪オジェックのモデルをデザインすることだった。

「デザインを決めて、この3輪オジェックの制作が可能な修理工場を見つけたあと、私たちはすぐに20台の3輪オジェックを制作しました。オジェックの運転手になりたいという障害者の友人のために全ては無料です」と語る。

彼が言うには、今日に至るまで、自分自身は依然としてバイクの台数を増やすためのスポンサーを探し続けている。ジョグジャカルタには数千人におよぶ障害者がいるものの、まだ20台の3輪オジェックが用意できたばかりに過ぎない。バイクを求めて、まだ多くの障害者たちが待っているのだ。

「すでに用意ができて、運行スタートしているバイクは、現在20台です。まだ多くの人が列をなして待っています。私は再びスポンサーを探し続けています。スポンサー企業は後に、オジェックや運転手のジャケットにロゴを設置することも可能です」と語る。

彼が言うには、この20台の3輪オジェックは2015年から、ジョグジャカルタで運行を始めている。同社のオジェックの利用料金は、移動距離によって決まる仕組みだ。

「私たちは距離に応じた交渉のシステムを採用しています。そのため、運転手と乗客との積極的なコミュニケーションが発生します。要はガソリン代がまかなえて、損もしないということです」と語る。

彼が言うのは、同社の3輪オジェックは、インドネシアだけでなく世界の中でも唯一の存在だ。

「私たちの願いは、我々のような会社の出現が他の都市に住む障害者に対して、同じような実践をしようというインスピレーションを与えることができればということです。それを通じて障害者が以前より多くの収入を得られるようになればと願っています」と語る。

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皆さん、いかがでしょう?
私は実際にジョグジャカルタに行って、これに乗ってみたくなりました。

「障害者が会社の一部門で活躍する・・・」というのは、日本でも企業の事例として聞きますが、基本的にすべてを障害者が担うというのはすごいなと。

もちろん、今後の事業拡大に際しては、健常者も参加することになるでしょうが、とりわけ「運転手」も障害者というのが要注目。

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障害があっても、運転することができる。

これは障害者自身の自立を目指すには素晴らしい効果があるでしょうし、乗車前に、乗客とのコミュニケーション機会があるということは、障害者への偏見を薄めていく効果があるのではないでしょうか。

スマホアプリを使ったサービスで急成長する「Go-Jek」は、アプリですべてが完結するということで、(運転手との最終確認で電話がかかってくることはあります)「運転手との値段交渉等のわずらわしさが省略される」点でも好評になりました。

そんなジャカルタであれば、商談を必要とする、この3輪バイクタクシーは、ひょっとすると受け入れられないかもしれません。また、ジャカルタの過度な渋滞という環境を考えれば、3輪タクシーよりも2輪タクシーに軍配が上がってしまうでしょう。

でも、それほどまでにせわしくない、中部ジャワのジョグジャカルタを拠点にしているというのが今後もジワジワと成長していく気配を感じさせます。

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「観光都市」というジョグジャカルタの街の性格もベスト。

今後は、インドネシア語のできない外国人観光客向けにどうアプローチしていくかも、ぜひ検討してもらいたいですね。

心配なのは、記事を読む限りでは、ビジネスモデルや、企業運営のスタイルという点で、「ベンチャービジネス」としての伸びしろが感じられないこと。

しかしながら、急成長を志向するモデルではなく、あくまでも地元に根づいて、社会問題を解決するという、いわゆる「社会起業」としての性格であれば、このスタイルもありなのかもしれません。

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Kompasの記事によれば、道で物乞いをしたり、野菜を売ったり、何の仕事もできなかった障害者たちが、同社の運転手になり、活躍を始めているとの記述がありました。

免許証も無いところから。人によっては、インドネシア人全員がもつ「住民登録カード」も無い段階からのスタート。運転手になった当初、1日1万ルピアか2万ルピアという稼ぎだった人でも、今や1日10万ルピア以上を稼ぎ出すまでに成長した運転手もいると。

ビジネスモデルとしての強さが感じられないという点はあれど、障害者の自立を促す社会起業のケースとしては、要注目の事例ではないかと思います。

私たちは、哀れみの対象でありたくはない。1人でも多くの障害者に、自立の機会を与えていきたい。

Kompasは、同社創業者の言葉を紹介しています。

私見ですが、Go-jek社とうまく連携がとれれば、非常に面白い展開になりそうな予感がします。

ジョグジャカルタに行かれる方は、ぜひお試しください。私もぜひ試してみたいです・・・。

■参考:このテーマに関連するブログ記事です。こちらも、どうぞ。

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