思ったこと・考えたこと/北朝鮮観光旅行記1997年夏

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《《北朝鮮の「日本人妻」たちの一時帰国について 》》

「日本人妻」たちの日本訪問が実現しましたね。皆さんは彼女たちの会見をご覧になりましたか?

「朝鮮人と結婚したことが犯罪であるかのような見方がなされて悲しい」ということを、おっしゃっていました。取材陣は、けっこう気を使ってはいたのでしょうが、細かい部分での配慮が足りなかったことも否めませんね。この「日本人妻」という呼称自体、彼女たちからはあまり良くは受け取られないような気がするのですが。

今年の夏、北朝鮮に行ったとき、平壌で「日本人妻」の小林さんという方にお会いする機会がありました。日本にずっと戻っていないとのことなので「また日本に行きたくないですか?」と訪ねると、はぐらかされてしまいました。ですが、今回日本に一時帰国した彼女たちの表情を見ていると、たとえ永住する意志は無いとしても、本音としては一時的にだったら日本に戻りたい、と思っているのでしょうね。二次、三次と一時帰国事業が継続されることを切に祈るばかりです。

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旅行中にめぐりあったもので、
私にとって印象深く思ったことを、いくつか御紹介します。

◆ 印象を受けたことなど

一つ目は、「街が死んでいる」ということでした。首都平壌はまさに「人為的につくられた街」という感じでした。ですから区画などは非常にきれいになっており、道路もとても広くなっています。高層マンションが立ち並ぶ大通りなどは圧巻です。車の通行量は少ないですが、ボルボやベンツがずいぶんと走っています。

しかし、なぜか街全体が暗くどんよりとしているのです。街の人々には笑顔が見あたりませんでした。みんな目的地に向かってただひたすら無言で無表情で歩いていくのです。これにはさすがに気持ち悪さを感じました。ご自慢の高層マンションも、近くまで寄ってみると非常に汚いものがずいぶんと見受けられました。街全体の雰囲気が死んでいるのは、もしかしたら共産圏に共通するものなのかもしれませんね。

二つ目に驚いたのは、街で売っている菓子類、インスタントラーメンなどのうち、食料の有効期限が完全に切れているものがかなりあったということです。今回のツアーは、まったくと言って良いほど「自由行動」の時間がありません。しかし、たまたま15分ぐらい街を散歩できる時間が与えられたので、現地のスーパーマーケットに入ってみました。

そこにあった日本製のカップラーメンは、賞味期限が1994年と書かれていました。期限切れの処分品をただで仕入れて(輸入して)販売しているのでしょうか。みなさん、おなか大丈夫なのでしょうかね。心配です。真偽は定かではありませんが、「平壌ビール」には微量の硫酸が含まれている、なんて話もあるそうです。

三つ目にびっくりしたのは、「金日成バッチ」の存在です。現地の人を見ていると、誰もが皆、主席の肖像のある「金日成バッチ」を付けているのです。ガイドにたずねたところ「強制ではない」とのことでしたが、ほとんど半強制なのではないかと思います。バッチにもいろいろな種類がありました。丸い小さなものから大きなもの、赤い縁取りのあるものや、労働党の旗に肖像が配されたものなど、実に様々です。街を歩いていると、バッチがあるかないかで、外国人かどうかがわかるようになっているのです。

噂では、このバッチの種類によって、その人の階級までがわかるようになっているとのこと。あるガイドさんは階級の存在を否定していましたが、あるガイドさんは、冗談めいた感じを漂わせながら、階級の存在をほのめかしていました。このバッチは主席からいただくもの、という建前があるので非売品なのですが、中国との国境では安く売られているといいます。

四つ目に印象深く感じたのは、人々の金日成主席に対する尊敬の念です。「人々の」と言っても、私が接触したのは、ほんの一部のエリート層ですが、私が見た限りでは、体制の正統性は意外と強固であるような気がしました(ただし、金正日書記に対する尊敬の念は、それほど強くはないようでした)。

今年の2月に韓国に亡命した黄書記も、「政治的には民衆がよくまとめられており、体制は依然として強く結集している」という趣旨のことを述べていました。戦前の日本の天皇制国家時代の日本人に似ていると言えるのではないでしょうか。ドイツの統合の際には、経済的にいろいろな混乱が伴いました。

朝鮮半島の場合、統一時の衝撃はもっと大きなかたちでやってくることが予想されるだけに、アメリカにしても韓国にしても、北朝鮮の体制が崩壊することは、ここ当面はなんとしてでも避けたいというのが正直なところでしょう。マスコミでは「Xデー」とか「XX月危機説」などがよく流れますが、まだ当面の間は、ひょっとしたら10年〜20年以上、崩壊せずに存続するのではないかという気もします。

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