「海外子育て」に興味のある方に、一つの事例としてご紹介したいと思います。「海外で子育てをしていると、こうした教育機会もあるんですよ!」という一つのケースです。
先日、小学生になる娘と息子を連れて、インドネシア独立の父、スカルノ(Soekarno)初代大統領の墓地を訪問する機会がありました。デヴィ夫人の旦那様ですね。
そこで子供から受けた質問が、「パパ。国って、作れるの?」というものでした。「国って、最初から元々あるものなんじゃないの?」と。皆さんが子供から質問されたら、どう返答するでしょうか?
目次
インドネシア建国の父、初代大統領スカルノのお墓の場所は?
スカルノ初代大統領の墓地は、インドネシア、東ジャワのブリタール(Blitar)にあります。以前、ブログでもご紹介した場所です。
お墓を訪問した時の写真がこちら。「何これ、日本のお墓と違うね〜」という感じで興味津々の様子です(不謹慎で、すみません)。
【写真:スカルノが眠るお墓を前にして】
地図で示すと以下のとおりです。
「インドネシア独立の父」の墓を子供にどう説明するか
私はすでに訪問したことがあるので、今回は「子供たちへの教育」という観点での工夫に尽力しました。我が子は、小学2年生と1年生。インドネシアの現地校に通っています。
8歳と7歳の子供たちに対して、「インドネシア独立の父の墓」という説明をするのは、なかなか難しいもの。でも、よくよく考えてみると、日本では、同じような教育をする環境が無いですよね?
例えば「日本を独立に導いた人の歴史を説明する」として、なんというべきか・・・。それこそ日本の場合「神話」になってしまいます・・。具体的な、身近な存在として感じとることが難しいんですよね。
だからこそ、これは絶好の教育の機会ではないかと思い、「観光」の意味も込めて、子供たちを連れて行ってみたのです。
独立と建国の神秘「えーっ!国って、つくれるの?」と子供は言った
【写真:ジャカルタにあるインドネシア独立記念塔(モナス)】
現地に着いて、いざ説明してみようと思うのですが、うーーーん、やはり難しい。
難しいことを省略し、わざと簡単にして「インドネシアを独立させた人で・・・」なんて説明をしても、「独立って、なに?」と(笑)
「インドネシアっていう国があるでしょう?」
「うん、いま住んでいるところ」
「そうだよね。そのインドネシアをつくった人だよ」
「えー!!! 国って、つくれるの?」
・・・という感じです(笑)
「国ができる」「国をつくる」ということの意味、独立と建国の不思議
【写真:インドネシアの国章「ガルーダ」】
「国って、つくれるの? もともと最初からあるものじゃないの?」と我が娘。
「おっ、これは良い展開だ!」と思い、続けて説明していきます。
「いまのインドネシアができるまでは、たくさんの人が戦って、たくさんの人が死んで、みんなで頑張って、やっとできあがったんだよ」と。
「えっ、インドネシアつくるのに、いっぱい人が死んじゃったの? 国をつくるのは大変なんだ・・・」
国を作ること、建国と独立の意味を身近に感じてもらうために
【写真:インドネシア残留日本兵で最後の生き残り、小野盛さん宅にお邪魔して】
「そうだよ、たくさん死んじゃったんだよ。怪我をした人もたくさん」
そこで、インドネシア独立に貢献した元日本兵、小野盛(おの・さかり)さんの話を子供たちに少しだけしました。
「小野おじいちゃんも、独立のために頑張ったんだよ」
かつて日本に住んでいた頃、子供たちはテレビで小野盛さんのドキュメンタリー番組を見ていました。子供たちは、「あぁ! あの、おめめが見えないおじいちゃんのこと?」と。
「そう」
「戦争で、目が見えなくなったの?」
「いや、目が見えなくなったのは、おじいちゃんになったから。でも小野さんは、手が片方無かったでしょう?」
「うん、テレビで見た。片手しかなかった」
「インドネシアの国をつくるために戦って、それで片方の腕がなくなっちゃったんだよ」
「えー、かわいそう・・・」なんて。
「スカルノさんって、誰だか知ってる?」と聞くと、
「うん、インドネシアをつくった人でしょ」と答える娘。
「そうだね。インドネシアをつくって、最初の大統領になった人」
「ダイトウリョーって、なに?」
・・・と、まぁ、なかなか大変なのですが、でもこういう質問が出てくること自体を評価したいなと。
日本でぬくぬく過ごしていたら、なかなかこういう機会は無いと思うんですよね。
日本に大統領がいないのはなぜか
Oentoek PJM Presiden Soekarno – Lilis Surjani
6 Juni 1901, Soekarno dilahirkan di Surabaya dengan nama Koesno Sosrodihardjo.
118 tahun Bung Karno. pic.twitter.com/Jm7d6LQOhk
— IG: videosejarah (@VideoSejarah) 2019年6月6日
【映像:スカルノ大統領の映像。冒頭に出てくるのはインドネシア占領期に現地訪問した東条英機】
スカルノ博物館を歩きながら・・・、
スカルノの墓地に向かって、ゆっくり散歩しながら、ついに娘からこんな質問が来ました。
「スカルノさんは大統領だったんでしょ?」
「そうだよ」
「日本にも大統領はいるの?」
「いないよ」
「いないの? 日本には、なんで大統領がいないの?」
そこで、「どうしてだと思う?」なんて言って、逃げたりなんかして(笑)
「与えられるもの」と思うか、「自ら創り出すもの」と思うか
何事もそうですが・・・、
「頑張って頑張って、たくさんの犠牲を払ってまでして獲得した人」と、「知らないうちに与えられていて、それが当然だと思っている人」とでは、意識の乖離には、雲泥の差があります。
そのことに意識を払えるかどうか。
これは、弱者とされる人々に思いを馳せ、今の自分が生かされていることに感謝の念をもち、「だからこそ日々を真剣に生きていこう!」と思うにあたり、とっても大事な一里塚だと思うのです。
今回、スカルノ大統領の墓地に行っただけで、子供たちがどの程度の思いを持てたのかはわかりません。単なる遠足程度かもしれない・・・。でも、ちょっとでもいいから、素朴な疑問をもつということ。これだけでも、脳には良い刺激になっているのではないかな・・・と親バカながらに期待をしています。
もっと「旅育」を!家族でいろいろな場所に行ってみよう!
日頃は考えないけど、行ってみると考えざるを得なくなる・・・。そういう環境は、博物館などに限らず、いろいろなところがあると思います。「子供でも大人でも、そういうところには、家族でどんどん行くべき!」と、私は思います。
「旅育」という言葉があります。旅を通じて得られる経験を子育てに活かしていくという考え方です。旅からの学びは本当に大きなものがあります。今回のスカルノ墓地での子どもたちの反応を見てみても、そのことを実感させられました。
必ずしも遠い場所でなくても良いと思います。大事なことは、家族でどこかに一緒に行って、目的地だけでなく行きや帰りの過程においても対話を欠かさないということではないでしょうか。随所にたくさんの学びの場があります。
そんな体験、ぜひ皆さんも、ブログやfacebook、twitterなどで気軽に発信すると、共鳴してくれる人、少なく無いと思いますよ! ぜひ!
なお、インドネシアにおける歴史の教育という観点では、こちらの記事もどうぞ。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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