小さな会社を買う|ブームではなく時代の転換!その3つの構造的背景

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いま「小さな会社を買う」という方法に注目が集まりつつあります。M&Aとか買収というと数億円という単位の大きな話がイメージされがちですが、最近では、数百万円とか数千万円というレベルでも、事業や会社の売買が行われるようになりました。

「え? そんなの可能なの?」とか、「一過性のブームでしょ?」と思われる方もいるでしょう。でも実際に「会社を創る」(起業)、「事業を買う」(買収)、「事業を売る」(譲渡)という3つを経験した私からすれば、「会社を買うことは、チャレンジしがいのある選択肢ですよ!」と考えます。

そしてこれは単なるブームなどではなく、時代の転換点にあるものだと考えます。今回はその構造的な3つの変化をご紹介したいと思います。

小さな会社を買う




もはや個人ですらM&Aで会社が買えるように

数百万円、あるいはもっと低い金額でも、会社や事業の売買が行われるようになりました。私自身の体験でも、1000万円前後で事業を譲っていただいたこともありますし、「この事業、もうやめようと思うんだけど、あげようか?」と、知り合いの社長からタダで事業譲渡をもちかけられた経験もあります。

「もはや個人ですら、会社が買えるようになった」として、例えば2018年4月に出版された書籍「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」は大きな話題となりました。

2つの事業買収を経験した私が「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」を読んでみた
今回ご紹介するのは「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という本。副題に「人生100年時代の個人M&A入門」とあるように、サラ...

「会社を買うなんて大企業の話でしょう?」とイメージされる反面で、中小零細企業が会社を買う、とか、個人が会社を買うということが可能になってきています。「事業を買う」ということにはたくさんのメリットがあります。

小さな会社を買う6つのメリット|2つの事業を買収した経験から
いま「個人で会社を買う」という手法に注目が集まっています。今まで「会社を買う」というと・・・「M&A」とか「買収」という言葉からイメージされ...

詳細はブログに書きましたが、だからこそ、意欲ある個人や、意欲ある中小零細企業の皆さんにはチャレンジしてみては? と私は考えています。

「M&Aで会社を買う」が増える背景を「中小企業白書」から解説

これは単なるブームではなく、時代が変わってきたということです。中小企業庁が毎年5月に発表する「中小企業白書」の2018年バージョンを見ると、次のように記されています。

経済の構造的な変化により、中小企業が継継的に売上規模の成長を図っていくことはますます難しくなっている。加えて、経営者の高齢化と後継者不在を抱える企業ではM&Aが事業承継の手段として有効な選択肢となっている。こうした背景から、中小企業のM&Aが近年着実に増加していることが分かった。

というわけで、中小企業白書では2つの要因が述べられています。

(1)中小企業が継継的に売上規模の成長を図ることが難しい。
(2)経営者の高齢化と後継者不在を抱える企業が増えている。

その2点を解決するために、M&Aが有効な選択肢となっているということです。具体的に解説していきましょう。

(1)中小企業が継継的に売上規模の成長を図ることが難しい

「中小企業白書」によると、成長が困難となる構造的な課題に直面していると解説。その背景として、市場の成熟化や、「我が国の人口の減少は人手不足の深刻化のみならず、国内需要の縮小にもつながる」と。また、「グローバル化による国際競争の激化」「技術革新による製品ライフサイクルの短縮化の経営環境の変化が生じている」と分析しています。

そうした中で、事業拡大をはかるためにM&Aが有効な選択肢になったと。また「中小企業白書」では実に恐ろしいデータがあり・・・、「1社当たりの売上高の推移を企業規模別に見てみると、足下では増加基調にあるものの、20年前の水準を超えていない」と。

中小企業白書2018 M&A

1996年を100とした場合、1社あたり売上高の推移がどうなっているかを示したもの。ただ「1社あたりの平均」ですから、マーケットサイズや企業数の推移も関係するので、一概にどうこう言える表ではないでしょう。ただし、市場の成熟化や人口減少のインパクトは大きいですよね。

思えば、例えば十数年前まで世の中には「スマホ」が存在しなかったわけで、時代の大きな変化が産業構造全体に大きな影響を与えていることは事実。従来のライバル企業がライバル企業ではなくなり、異業種の企業が突然ライバル企業になるというような激変・・・。

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従来の思考では対応しきれば時代の中で、M&Aのメリットを考えれば、それによって活路を開こうとする動きが加速するのは十分に想定できることです。買収とまでいかなくとも、共同で新会社をつくるとか、何らかの提携をするなど、ですね。

(2)経営者の高齢化と後継者不在を抱える企業が増えている

日本の中小企業の経営者の高齢化と事業承継の問題は深刻です。

日本の企業の3社に1社、127万社が2025年に廃業危機を迎える・・・。そんな衝撃的なシナリオがあることは、以前のブログでもご紹介しました。

廃業予備軍127万社の衝撃|中小企業の事業継承と後継者問題の処方箋
「6割以上の経営者が70歳を越え、半数の企業で後継者不在」 こんな衝撃的な内容を取り扱っているのが、『週刊ダイヤモンド』1月27日号の...

実際に「中小企業白書2018」を見ても、「中小企業の経営者年齢の分布について見てみると1995年の経営者年齢のピークが47歳であったのに対して2015年の経営者年齢のピークは66歳となっており、経営者年齢の高齢化が進んでいる」と、実に恐ろしいデータが紹介されています。

中小企業白書2018 M&A

そして「60歳以上の経営者においては、48.7%が後継者不在であることが読み取れる」と。

中小企業白書2018 M&A

この件は上記のブログにも書きましたが、事業承継に悩む経営者の皆さんと交流していると、もう何というか、その深刻度は胸に迫るものすらあるんです。創業者ならまだしも、2代目とか3代目の方になると「私の代でつぶすわけにいかない」とか、「子供が継いでくれなくて」とか。

さらには、上記ブログでも紹介しましたが、ある地方の高齢の経営者が私に語ってくれたこと。高度経済成長期であれば、経営を息子に託すことができた。でも今の激変ぶりをみると、自分の息子では対処できないような気がすると。

「本当は息子につがせたいんだ。でも・・・うちの息子を見ていて、なんとなくわかるだろう? 心配なんだ。君は若くして起業をしたよね。うちの息子を見てどう思う? 経営者としての、正直な感想を聞かせて欲しい」

本当に切羽詰った問いでした。おそらく30年近くも年齢が離れた私に質問をしてきたのです。息子さんよりも若い、この私に。

後継者が不在という中で、事業を存続させたい、従業員を路頭に迷わせたくない・・・いろいろな思いの中で、M&Aを選択されるという方向は、ますます加速するでしょう。「後継者を探す」という目的だけでなく、「意欲ある若者に事業を預けたい」と考える経営者は少なくないはずです。

起業だけでなく副業や複業が容認されるようになってきた!

「中小企業白書」から2つの点を解説しましたが、さらに私は1つ加えて、時代の転換点にあることを示す3つ目の背景があると考えています。

M&Aが加速していく背景としてあまり注目されないことなのですが、それは若者世代の中に浸透しつつあること。つまり「独立起業」への心理的ハードルが下がってきたことに加えて、サラリーマンの中で副業や複業が容認されつつあることです。

一部の企業でも、副業や複業を容認したり、推奨したりするようにもなってきました。時間をかけて、徐々にM&Aマーケットの拡大につながっていくだろうと私は見ています。

■複業(ふくぎょう)
– 複数の本業を持つこと。副業のような片手間仕事としてではなく、生業として別の業種を二つ以上兼務すること。
(デジタル大辞泉より)
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起業して失敗したとしても、死を選ぶというような時代ではありません。再チャレンジが許される環境が整備され、また資本金規制の撤廃や、各種支援制度の拡充、ベンチャー支援や個人事業主が働きやすくなるようなIT環境の激変など。さまざまな後押しが存在する時代。サラリーマンをやりながら、何らかの手段でお金を稼ぐということがやりやすくなっています。言い換えれば、サラリーマンをやりながら事業ができるということです。

「小さな会社のM&Aが増えていく」ということは、副業という事業(=複業の中の一事業)ですら売買可能になるということを意味します。M&Aで会社を買うということは、会社のビジネスチャンスを増やすことですが、個人で小さな事業を買うということは、魅力的な副業をゼロから立ち上げるのではなく、お金を使って買ってくる・・・ということをも意味します。

そこをチャンスととらえて注目する人が増えているのが、おそらく最近の「個人で会社を買う」が注目されている一因ではないでしょうか?

逆に「副業」を事業化して売却する・・・なんて事例も出てくるでしょう。実際に私の知人の中にも、サラリーマンをやりながら、小さな事業を購入。アルバイトスタッフを使いながら事業を回していた方もいます。イチから副業を立ち上げるより簡単だと判断して買収に至ったようです。

また逆に、サラリーマンをやりながら副業を拡大させて事業化。上場企業へ売却するまでに至った知人もいます。昔に比べれば「起業」や「副業」、「複業」がやりやすくなっています。この動きは、「小さな事業でもM&Aで売買できる」という時代の進展とともに、さらに加速していくことが考えられます。

会社を買う!会社を売る!新たな時代の「会社」像とは?

「小さな会社を買う」という方法。これは単なるブームなどではなく、時代の転換点にあるものだとして、その構造的は背景を3つほどご紹介しました。

(1)中小企業が継継的に売上規模の成長を図ることが難しい。
(2)経営者の高齢化と後継者不在を抱える企業が増えている。
(3)起業を促すだけでなく、副業や複業の容認と活用の動きが始まった。

このうち(1)と(2)を背景として、小さな会社のM&Aに注目が集まりつつあるわけですが、(3)の動きがこれを加速すると私は見ています。「会社を買う」「会社を売る」の2つの側面において、いずれもチャンスが増えることになるはずです。

新しい時代のビジネスのあり方、新たな「働き方」を求めて

時代の転換に最も敏感に反応するのが若者世代です。

「中小企業白書2018」を見ると、「成長戦略としてのM&Aの実施意向」について、すでに半数の企業が「あり」としているようですが、面白いことに「若い社長ほど関心が高い」というデータが出ています。

中小企業白書2018 M&A

また意欲あるサラリーマンの中には、副業に着手している人も増えていますし、前述の通り、小さな事業を買ったという知人にも出会ったことがあります。私が書いた書評ブログ「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」のページや、会社の探し方を解説するページ中で、「会社を売却したい」という案件の一覧を見ることができるWEB上のプラットフォームのご紹介もしましたが、引き続きアクセスを集めていて、関心の高さには私自身も驚いています。

M&Aに対する前向きで新しいイメージを

「小さな会社を買う」ということが注目され始めているわけですが、具体的に言えば2点。

(1)中小企業が新たなチャレンジのために買う
(2)サラリーマンが副業として事業を買う

でもこうした動きが加速すると、どうなるか。同じようにして・・・、

(1)中小企業が前向きな理由で事業を売る
(2)サラリーマンが副業で立ち上げた事業を売却する

も可能になってくるはずです。「苦しくなったから」等の後ろ向きな理由ではなく、次なるチャレンジのための前向きな理由で・・・というのがポイントです。起業家が次なるチャレンジのために事業を売却するというようなスタイルですね。

まだまだ日本ではレアケースかもしれませんが、私の経験からいうと「育児に集中したいから事業を売却した」というアメリカの起業家に出会ったことがあります。

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M&Aに対する悪いイメージもなくなってきた上、「中小企業白書2018」のデータで見ると、一度M&Aを経験した企業は2度目にもチャレンジしたがる・・・

中小企業白書2018 M&A

となれば、同じことは個人にも起きてくるはずで、活用の動きはさらに増していくはず。ますますこの分野、楽しみになってくるのではないでしょうか?

というわけで今回は、小さな会社を買うということは、一過性のブームでなく時代の転換点を示すものであることを、私なりの見解をまじえてまとめてみました。何らかの参考になれば幸いです。

【参考】M&Aで小さな会社を買うというテーマに関するブログ記事

なお「小さな会社を買う」ということについて、そのメリットや探し方、オススメの書籍などはこちらをどうぞ。

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