「ヨナグニサン」という名前の蛾(ガ)。世界最大級の大きさをもち、羽を広げると20〜30cmにもなるという神秘の蛾。沖縄県では1985年に天然記念物に指定された絶滅危惧種です。
東宝映画に出てくる巨大怪獣「モスラ」のモデルにもなったといわれる巨大な蛾。そんな実に珍しいヨナグニサンが、なんと我が家の庭にやってきました!!
私が暮らすインドネシアは「自然の宝庫」。今までにもいろいろな植物や生き物がやってきましたが、まさかこんなに巨大な蛾がやってくるとは驚きです。ヨナグニサンの魅力と神秘をご紹介します。
目次
これがヨナグニサンだ!!(アヤミハビル)
見て下さい、このインパクト!! いきなり家の中にこんなものがいたらびっくりしませんか? 映画「モスラ」をご存知の方なら、ひと目みただけで「あ、モスラだーっ!」と言うはずです。
この「ヨナグニサン」の上にあるダンボール箱のサイズは、ビールの大瓶がワンケース入る大きさです。いかに巨大な生き物であるか、イメージがつくのではないでしょうか?
「ナショナル ジオグラフィック」では「DVDケースよりも大きい」なんて書かれています(笑)
■最大、最長、最重量、世界一の昆虫は | ナショナルジオグラフィック日本版サイト 沖縄の八重山諸島に生息するヨナグニサンは、翅の表面積が最大で約40平方センチあり、約30平方センチのDVDケースよりも大きい。 |
なおYoutubeで探してみると、こんな映像がありました。もう、この世の生き物とは思えないですよね・・・。
ヨナグニサンの大きさは、歴史的にも注目を浴びた
この「ヨナグニサン」(学名:Attacus atlas ryukyuensis)は、漢字で書くと「与那国蚕」。日本の八重山諸島に生息する蛾で、与那国島で発見されたことが、命名の理由だそう。
与那国の方言では「アヤミハビル」とも呼ばれるそうで、「アヤミ」は「模様」を。「ハビル」は「蝶」を意味するのだとか。模様のある蝶・・・。
写真を見ればわかりますよね。もう「模様のある蝶」としか表現しようがないくらいの強烈な存在感・・・。
インドネシア語では「Kupu-kupu gajah」という名前がついていますが、「Kupu-kupu」は「蝶」を。「gajah」は「象」を意味します。またヨーロッパ圏でも同様で、ギリシア神話の巨人アトラスを想起させたのか、Attacus atlas、あるいはatlas moth(アトラス蛾)の名前がついています。
どの国でも、よほど大きなインパクトを与えていたのでしょうね。
インドネシアは自然の宝庫!ヨナグニサンまで飛んで来る!
インドネシアで暮らしていると、いろいろな生物との不思議な出会いがあって。今までにも書いてきましたが、インドネシアで幸運を運ぶヤモリと言われる「トッケイ」もそう。これまた神秘的な存在でした。
コウモリが来たこともありますし・・・
かわいらしいウサギが来たこともありました。
そしてついに! 今回はヨナグニサンがやってきたという次第です。
ヨナグニサンは怪獣映画「モスラ」のモデルにも!!
ちなみに1961年に公開された、東宝製作の怪獣映画「モスラ」。翼を開長すると100メートルあまりになる巨大な蛾の怪獣ですが、そのモデルとなったのが、このヨナグニサン、あるいはヤママユガだとされています。
(なお、蝶目ヤママユガ科の中にヨナグニサン属があります)。
そして今回のヨナグニサンだけでなく、ヤママユガも、我が家にやってきたことがあります。
サイズは小さいですが、これまた小さな中にあって主張する存在感は強烈です。あまりにも羽が美しくて、美術品のようでしたよ・・・。インドネシアは本当に「生命の宝庫」なんです。
世界最大の蛾ヨナグニサンの悲しき生態
でも、こんなに存在感のあるヨナグニサン。その生態は実に悲しいのです。
だって、オスの寿命は5日から9日くらい。オスだと4日から5日くらいしかないのだそう。成虫になると口が退化して蝶のように蜜をすうことができなくなり、まったく栄養を取らなくなるそうで。餓死して亡くなると聞きました。なんという生態・・・。
栗林慧さんが書かれた「虫の目図鑑」という連載記事には、次のような記述がありました。
■ヨナグニサン 世界一大きなガ、短い寿命 / 西日本新聞 この大きなガは、幼虫時代はいろいろな植物の葉を食べています。しかし、成虫になると口が無くなってしまうため、寿命(じゅみょう)はオスが4~5日、メスが5~9日といわれています。世界最大の昆虫といわれながら、寿命がそんなに短いとは不思議です。 |
wikipediaでも、この通り。
■ヨナグニサン – Wikipedia 口器(口吻)は退化して失われているため、羽化後は一切食事を取れない。幼虫の頃に蓄えた養分で生きるため、成虫寿命は長くても1週間ほどと短い。 |
ヨナグニサンは、神秘そのもの!!
私自身、今回自宅で遭遇するまでは「ヨナグニサン」のことを全く知りませんでした。とにかく存在に圧倒されたというだけで。
まったくの無知でした。あまりにも美しく、あまりにも神秘的で・・・。ただただ惹きつけられるように、じーっと眺めるのが精一杯。もう現実の中とは思えないような、そんな思いで時を過ごしました。遠近感からして、どこまで伝わるかわかりませんが・・・。上記写真の右下にあるのは、調理用の鍋です。いかに大きいか、わかりますよね?
この神秘の「ヨナグニサン」。調べてみると、世界中に存在感を与えていて、また生態は悲しいし。かたやモスラのモデルにもなっていたりと・・・。前述の栗林慧さんは、こんな風に述懐されています。
■ヨナグニサン 世界一大きなガ、短い寿命 / 西日本新聞 もともと数も少ないし、出かけて行ってもなかなか見つけることは難(むずか)しいといわれていたのです。本当に奇跡的(きせきてき)ともいえる出合いの瞬間(しゅんかん)は、あれから40年たった今でも、まるで昨日の出来事のようによく覚えています。 |
もう「神秘」そのものなんですよね。ふつうに家の中にいたので、なんとはなしに眺めていただけですが、まさかこんなに貴重な存在だったとは・・・。調べれば調べるほど驚きの存在です。
ヨナグニサンは沖縄・与那国島「アヤミハビル館」で見られる!!
調べたところ、今年の3月には天皇も「ヨナグニサン」を見学されているんですよ。すごいな、ヨナグニサン。こんなにすごい蛾が存在していたなんて、もう本当に知りませんでした・・・。しかもモスラに実在のモデルがいたなんて。
■【皇室ウイークリー】(529) 両陛下、消防尽力者らおねぎらい 皇太子さま、歴代天皇の書ご覧に(1/3ページ) – 産経ニュース 28日には日本の最西端にある与那国島(与那国町)に初めて足を運び、日本在来種の「与那国馬」や世界最大級の蛾「ヨナグニサン」を見学するほか、「西崎(いりざき)」にある日本最西端の碑をご覧になる。 |
そんな貴重な「ヨナグニサン」ですが、日本の最西端に位置する国境の島、沖縄の「与那国島」にある「アヤミハビル館」で見られるそうです。興味のある方はぜひ。
私自身は、なかなか「与那国島」まで行く機会がありませんが、できればまたインドネシアでもう一度で良いから見てみたいな・・・と。
ヨナグニサンの実物の魅力は、本当にすごい!!
というわけで、今回は世界最大級の蛾「ヨナグニサン」(アヤミハビル)をご紹介しました。もともと私は昆虫には興味がないのですが、そんな私でも詳しく調べたくなってしまう・・・それだけの存在感と神秘感がありました。
本当に羽が美しくて、伝統工芸品を見せつけられているかのような。それでいて、もう何者かがメッセージをともなって遣わしてくれたかのような、本当に不思議な感覚におそわれるのが、ヨナグニサンの魅力。絶対に絶滅しないでほしい!
皆さんにも、ぜひ実物を見る機会があればと願っています。 なお「世界最大の蛾」とされていますが、wikipedia によれば、 最近になってオセアニアに分布する「Coscinocera hercules」に次ぐ2番目の大きさであることが判明したそうです。
「ヨナグニサン」の神秘も気になるけれど、そんな神秘に立ち向かう研究者たちの執念も、これまた気になるな・・・。
ヨナグニサンがモデルの映画「モスラ」のテーマソングはインドネシア語!
なお「ヨナグニサン」といえば、怪獣映画「モスラ」のモデルとして有名ですが、同映画のテーマソングとして知られるのが、ザ・ピーナッツの大ヒット曲「モスラの歌」です。
「モスラーヤ、モスラ〜♪」で有名ですが、この曲の歌詞は、実はインドネシア語です。興味のある方は、ぜひネットで歌詞を検索してみて下さい。
(作詞作曲:本多猪四郎、田中友幸、関沢新一、古関裕而)
ちなみに映画の設定では「モスラの歌」はモスラを呼び出すための歌。歌詞は、映画に出てくる「インファント島」の石碑の碑文からとったものだとされています。この「インファント島」というのは、実はインドネシアをイメージして構想されたのでしょうね・・・。余談でした。