今回ご紹介するのは「インドネシア語のしくみ《新版》」という本。2005年に刊行され、2014年に「新版」として改訂されたものです。
インドネシアの公用語である「インドネシア語」の入門学習書です。出版社の宣伝を見ると「画期的な入門書シリーズの誕生」とあり、インドネシア語の入門書に位置づけられていることがわかります。
といっても普通の入門書ではありません。実に意欲的なジャンルの本です。いったいどんな特徴があるのか、「インドネシア語のしくみ」を例にご紹介します。
目次
入門書「インドネシア語のしくみ」を読んでみた2つの理由
【写真:書籍「インドネシア語のしくみ《新版》」】
私自身はインドネシア語の入門者ではありません。少なくとも「入門レベル」は超えているので、(そうでないとインドネシアで楽しく暮らせませんよ!)「なぜ、いまさら入門学習書を?」と思われるかもしれません。
私が今回「インドネシア語のしくみ」を手にとってみようと思ったのは、一般的な参考書と異なるスタンスで作成されているらしいと知ったこと。
・いったいどのようなつくりになっているのだろうか。
・どんな風にインドネシア語が説明されていくのだろうか。
その点に興味があって、読んでみることにしたのです。読み進めていきながら「へぇ!」と思うところが多くありました。
文法用語に頼らないで外国語を説明する意欲的な入門書シリーズ
「本書の特徴は?」と思って説明を見てみると、「文法用語や表に頼らない、通読できる画期的な入門書シリーズ」とあります。
出版社である白水社の「創立90周年記念」で展開された、《言葉のしくみ》シリーズの一環として出されたもので、今までに26の言語が書籍化されたようです。
■書籍検索:語学書 > 言葉のしくみ – 白水社 寝ながら読める外国語! 文法用語抜きで! 言葉にはそれぞれ大切なしくみがあります。細かい規則もいっぱいありますが、大切なのは全体を大づかみに理解すること。最後まで読み通すことができる画期的な入門書シリーズ! |
となっていて、文法用語ぬきで説明しようとする、意欲的なシリーズであることがわかります。
「文法用語に即した語学学習」の大事さがわかった!
読んでみて一番感じたこと。それは、本書の出版意図に反するかもしれませんが・・・、「やっぱり、文法用語にのっとって学習することは大事かも」(笑)ということでした。
文法用語ぬきで説明しようとするので、逆に理解が難しくなるような気がしました。とても読みやすくて、簡単な表現で説明されているのですが、なぜか、かえってわかりにくいのです。
【写真:横書きで、文章で書かれています。読みやすい!】
外国語の学習にとって、文法用語を使いながら学習することは、ひょっとすると「眠気との戦い・・・」という側面もあるでしょう。でも、今まで長年の歴史を重ねて培われた、言語学習の方法でもあります。やはりそれなりの合理性があると感じました。
文法用語を使って説明してもらったほうがわかりやすい
本書の場合、例えば、こんな説明があります。
(A)「大きな枠組みを先に言っておき細かい説明などをあとに続けていく」 (B)「iniやituを言うときは、ひとまとまりの一番最後」 (C)「数量を表す語は先に言っておく」 |
なんのこっちゃ?と思うかもしれませんが、
(A)は、名詞を修飾する語は、名詞の前ではなく後ろにくることを、
(B)は、iniやituが節のかたまりの最後を示すということを、
(C)は、数を示す言葉は名詞の前に来るということを、
それぞれ説明しています。
たしかに説明文自体は簡単な日本語で表現されているのですが、やはり、もともとの文法的な説明の方が、しっくりくるのです。
(私の説明がうまくないかもしれませんが・・・)
聞き慣れない用語による文法解説で逆に混乱も
また、インドネシア語の接頭辞を「カンムリ」という表現で、接尾辞を「シッポ」という表現で説明されているのですが、「同じ説明なら、わざわざ言葉を置き換えなくても同じでは?」という感じがしました。
カンムリやシッポは、言わば「部品」であり、それによって語が広がるのがインドネシア語の特徴で・・・。本書では、例えばそのように説明がされています。
でも、「カンムリ」とか「シッポ」とか「部品」とか、聞き慣れない言葉が持ちだされることによって、逆に混乱を招いてしまうような気がしました。
インドネシア語学習の中級者にこそオススメしたい本
と言っても、本書を批判することは私の本意ではありません。
インドネシア語の入門書を目指してつくられていますが、まったくの入門者には、ちょっと難しいと感じます。でも私は、かえって入門段階を終えた中級者にこそ、ぜひ本書を手にとってほしいと思いました。
【写真:「インドネシア語のしくみ」の表紙の帯】
前述のとおり、本書の特徴は、従来のテキスト類とは異なるスタイルでインドネシア語が説明されていること。だから、基礎的なインドネシア語を身に着けている人にとっては、大いなる復習テキストになるのです。
新しい見方でインドネシア語の復習をすることの効果
異なる表現での説明、異なる角度からの解説は、時には「?」と感じるかもしれません。
でもそれこそ、中級学習者の理解度を試すところ。
「あぁ、そういう説明もありかもね」とか、
「なるほど、そういう見方もできるね」とか。
たぶん新鮮な感じを受けるところもあるはずですよ。
結論として言うと、正直な話、まったくのインドネシア語入門者には本書はオススメできません。(著者の方、すみません・・・)
でも、インドネシア語の中級学習者で、「また基礎的なところから全体をふりかえってみたい」という方であれば、従来のテキストよりも、本書の方をこそ、オススメしたいです。
「インドネシア語のしくみ」で新たな視点から勉強してみよう!
なお最後に・・・。
フォローするわけではありませんが・・・、本書の理想が非常にチャレンジングなものであるだけに、著者の方も、執筆にはご苦労があったものと推察します。こういう意欲的な作品は、個人的にはとても好きです。
「文法用語や表に頼らない、通読できる画期的な入門書」と聞いて、いったいどんな風にインドネシア語が説明されていくのか、興味がありませんか?
入門段階を終えた学習者の皆さんには、インドネシア語の文法基礎を新たな角度から復習しなおす意味で、ぜひオススメしたいです。
【写真:気楽さがウリ?「インドネシア語のしくみ」の背表紙の帯】
■Amazon.co.jp: インドネシア語のしくみ《新版》 (言葉のしくみ): 降幡 正志: 本
《しくみ》シリーズの3大特徴 効用は? |
【参考】インドネシア語学習に関するブログ記事
インドネシア語学習に関するブログ記事をまとめてみました。こちらも、ぜひどうぞ。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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