今日11月10日はインドネシアの「英雄の日」(Hari Pahlawan)。インドネシアが独立戦争を本格的に始めた日とされています。
第二次大戦の敗戦で日本がインドネシアから撤退すると、今度はオランダとイギリスがスラバヤに再上陸し、インドネシアを再び占領しようとします。激しい攻防戦が繰り広げられたインドネシアの独立戦争。それが始まった1945年11月10日が、「英雄の日」として祝われているのです。
今でもこの日はインドネシアの各地で行事が行われます。スラバヤには「英雄記念塔」があり、その地下には、独立戦争の歴史を説明する資料館もあります。
【写真:スラバヤでの激しい戦闘の様子を示す像】
目次
現地の小学校の先生は、我が子にこう教えた
私の子供は現在、インドネシアの現地校に通っています。小学2年生と1年生。
インドネシアでは「独立」や「英雄」は尊重の対象で、学校でも、先生が生徒にきちんと教えるようになっています。もちろん、学校によって、また先生によっても、教え方はマチマチかもしれません。
今回の「英雄の日」にあたり、我が子の学校の先生は、このように教えたようです。
インドネシアの独立に貢献した人を敬うのが「英雄の日」。でも、独立戦争で活躍した人だけが英雄ではない。学校の中にも、たくさんの英雄がいるはず。
警備員さんは、みんなの安全を率先して守ってくれている。おかげでみんなは安全に学校で過ごすことができる。そういう警備員さんは、みんなにとっての英雄だ。 例えば掃除をしてくれる人たちもそう。友達や先生の中にも、たくさんの英雄がいるはず。 家に帰れば、お父さんやお母さんも、みんなのためにいろいろなことをしてくれているはず。そんなお父さん、お母さんも、みんなにとっての英雄だ。 「英雄の日」は、インドネシアの独立に貢献した英雄を敬う日。でも、そんな英雄だけでなく、身の回りにいる英雄たちの存在にも気付こう。そして感謝しよう。 |
というような感じです。つまり、単に過去の歴史的な事実を説明して「はい、おわり」ではなく、現在の日常の生活に活かせるように、工夫して教えられていたようなのです。
【写真:スラバヤの英雄記念塔(Tugu Pahlawan)】
日常に活かせるように歴史を教える
そもそも「歴史をどう教えるか」というのは、とても難しい問題です。特に、小学校1年生や2年生という段階で、インドネシアの独立の詳しい経緯を説明することは、そう簡単なものではありません(後述するように、まだ未解明の点もあったりします)。
詳しく説明しようとしても、小学校1年生、2年生ともなれば、飽きてしまう可能性もあります。その上の学年でも、「毎年聞かされている話」となりかねません。
でも、我が子の学校では、前述したように、現在の日常生活に活かせるかたちで伝えられてたようで、私自身、とても好感がもてました。
「英雄は、とんでもなくすごいことを成し遂げた一部の人達だけではない」
「君たちの周りにも、君たちにとっての英雄がたくさんいるんだ」
ということ。そうやって視野を広げさせた上で、「では、君自身の英雄は誰だろう?」と考えさせる・・・。
君たちも誰かにとっての英雄でなくてはいけない
自分にとっての英雄が誰かを考える作業は、必ずや、日常のささいなことへの感謝にもつながるでしょう。
そして、30円〜100円程度の贈り物を各自が持参して、学校の中での「あなたの英雄」に感謝を伝えよう、というワークも行われました。
考えるだけでなく、行動で感謝を示す。そして、また「ありがとう」と言われる。この循環があって初めて、体感値としての「英雄への感謝」がつちかわれるでしょう。
そしてまた思うはずなのです。
誰もが誰かにとっての英雄になれる。誰もが誰かにとっての英雄でなくてはいけない、と。
【写真:英雄記念塔広場の入口にある、スカルノとハッタの像】
あなたの英雄とは? 誰の英雄になりたい?
過去の歴史的事実を学ぶことも重要ですが、現在の中で、まさに日常の中で役立てようとすることも、非常に大事な教育のあり方だなと思いました。
こうして私自身も、英雄の日についての思いを新たにすることができました。
私がインドネシアで暮らし始めて2年超。家族で一緒に暮らすようになってから1年超。いろいろな楽しさがある反面で、課題や困難もあります。
でも、しっかり家族を支え、みんなで前進していくことが大事。「私自身が、家族にとっての英雄でなくてはいけない」そんなことを悟らされた「英雄の日」でした。
さて・・・、
あなたにとっての英雄は誰ですか?
あなたは誰の英雄でいたいですか?
【参考】英雄の日に関するブログ記事
このブログテーマに関連する記事を紹介します。
まず「スラバヤの戦い」については、こちらです。
インドネシアにおける歴史の教育という観点では、こちらの記事もどうぞ。
また「英雄の日」はインドネシアの法定休日ではありませんが、インドネシアの祝日や休日について知りたいという方は、こちらをご覧ください。
【追伸】
ブログの中で「まだ未解明の点もあったりします」と書きましたが、スラバヤの独立戦争が始まる経緯に関していうと、例えば、こんな話もあります。
インドネシアの英字紙「Jakarta Post」で取り上げられた記事。The untold story of the Surabaya battle of 1945 | The Jakarta Postによるものです。
インドネシアの専門家として著名な松井和久さんが、その記事をもとにして内容説明されているブログがあります。参考になるので、一部抜粋してご紹介します。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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