『オンリー・イエスタディ』
(石原 慎太郎 著、幻冬舎(2008年1月25日発行) → アマゾンで購入する!
作家にして都知事もつとめる石原慎太郎氏による18の人生論。オンリー・イエスタディ。ついちょっと前の時代でしかないのに、どうしてこんなに、小人物ばかりの世界になってしまったのか。そんな嘆きとともに、氏の過去の回想を散りばめたものになっています。
18の物語。どの人も、桁違いに破天荒な人物ばかりなのに、どれも石原さんと深い交友をもった方々ばかりというのが特徴。日々、小さくまとまっていないか?もっと激しく毎日を生ききるべきでは?そんなことを強く感じさせる一冊です。
久しぶりに、読後感の強い一冊となりました。
読み終えてからも、折に触れて、いろいろな想いをわかせてくれます。
それは、石原さんの経験に裏打ちされた重みであったり、石原さんの独特の文体であったり、(この文体は、石原さんならではの味わい深いもので、とても好きな人と、感性的に受け付けない人とに分かれるかもしれません)ということも影響しているのでしょう。
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でも、ここに登場する多くの人物たちの、
あまりにもスケールの大きく、
あまりにも破天荒で、
あまりにも力強い、そんな大人物らしい生き方の数々が、
現代人を圧倒させるからなのだろうと思います。
「石原さんの時代とは異なって、
なんとちっぽけな人間だらけの国になってしまったことか」
自らが現代人であることを忘れて、
そんな思いすら抱かせるほどのインパクトが、この本にはあります。
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登場するのは、約40名。
文化人、芸能人、政治家、経営者・・・。
どの人物も、読んでいてびっくりするような方々ばかり。
陳腐な表現になりますが、
こんな人生をまっとうできたら・・・と思えるような、
自由奔放で大いに人生を謳歌しながらも、
仕事の実社会においても、大いに貢献している人たちばかりなのです。
仕事も精一杯に、遊びも精一杯に、
そのためには、どこまでも努力を続ける・・・。
好き嫌いは分かれるでしょうが、
皆さん、とてもいきいきとしているのが、如実に伝わってきます。
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この『オンリー・イエスタディ』は、
もともと、月刊誌「ゲーテ」に連載されていたもの。
遊びを謳歌しよう!という雑誌が多く評判になっていた頃に、
それに反旗を翻すようにして、
「バリバリ仕事に取り組んで、何が悪いんだ!」という、
とても面白いスタンスで出てきた雑誌です。
創刊当初は、石原さんの連載を含め、
よく読んでいたのですが、
次第に、時間確保ができずに読まないままになっていました。
今回、まとめて読むことができ、ズバリ正解でした。
私にとっては、期待値を超える作品です。
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私は、ひねくれているので(笑)、最初に「後書き」から読み始めたのですが、こんな箇所があります。
時代時代にその社会に生きる人間の資質も変わってこようが、 この現代という時代はかつてに比べいかにも豊饒で平和なものだが、 それ故にかつての時代に比べ より優れた資質の人材を生み出しているとはとても思えない。 過剰な情報の氾濫はかえって人間たちの情念感性を摩滅させ、 つまり癖のある人間がいかにも少なくなってしまった、 |
これを読んだ時、
「たしかにそうだな・・・」と軽く受け流していました。
でも、最初から最後まで読んでみて、
四十余名の話を振り返ってから、この後書きを読み返してみると、
この引用箇所に、とてつもなく深い意味が込められていることが
実感できます。
この本は、そういう本なのです。
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仕事に遊びに、精一杯に、
スケール大きく生きていく。
素敵な人生の味わいというものです。
趣味も仕事も破天荒
仕事が趣味をつくり、趣味が仕事を作る
努力のレベルも、ありえない。
そうしてこそ、味わい深い人生を創り出すことができるのだな、
そういう思いで、この本を読むことができました。
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日々を楽しく燃焼しつくしている姿は、とても美しいものです。
大いに触発される一冊。
日々を小さく生きているのではなく、
思いっきり生きていこう、それであってこそ、一度限りの人生じゃないか。
そんな一冊です。
もう一段の飛躍を成し遂げたい!
仕事に遊びに全開で生き抜きたい!
そんなあなたにおすすめします!
(繰り返しになりますが、好き嫌いの分かれる本だと思います)
■追伸:
私の好きな、あるレストラン。
あまりに魅力的きわまりないので、給仕長に、「経営者は、どんな方ですか?」と聞くと、「実はすごい実業家の方がいまして、その方が趣味でやっているだけでして」と濁されました。
この本を読んでいたら、その人と思われる部分を見つけたので、「あっ、もしかして・・・」「ハズレでも良いや」と思い、思い切って、その給仕長に聞いてみました。
「先日、石原さんの本を読んでいたのですが、もしかしてこの方ですか?」と。
書名は言わなかったのですが、すごく嬉しそうに「あっ、オンリー・イエスタディ、読まれましたか!」と。
どことなく心のどこかでつながりができたようで、嬉しい瞬間でした。これだけでも、私には元がとれた思いです。