今回ご紹介するのは、村上春樹さんが「走る」ということについて語ったインタビュー、「走っているときに僕のいる場所は、穏やかな場所です」という作品です。
■内容紹介(アマゾンより) 13年間の内外のインタビュー18本を収録。なぜ書くのか、創作の秘密、日本社会への視線、走ることについてなどを語りつくす。村上 春樹 著、文藝春秋 (2010/9/29) |
目次
村上春樹さんにとって「走る」とは?
村上春樹さんの新刊本。
『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』。
いつもながらに村上さんらしい題名ですよね。本書は、村上さんへのインタビューを18本もおさめたもので、かなり分厚い本ですが、その中で、「走ること」についてクローズアップしたインタビューの章がありました。
題名は、「走っているときに僕のいる場所は、穏やかな場所です」。
30ページほどの分量で、すぐに読めます。
ランナーであれば、共感するところがあるはずなので、日頃走っている方には、ぜひ一読をオススメしたい章です。
インタビューの内容は?
このインタビューは、村上春樹さんが、以前、「走ること」をテーマに書かれた本、
『走ることについて語るときに僕の語ること』がドイツで出版されるにあたり、「Der Spiegel」が行ったインタビューです。
(この本も、オススメ!!)
走る習慣の無い方がインタビューしていることは、読み進めて1〜2ページですぐにわかります(笑)
それゆえ、ごくごく普通な質問しかできていません。
村上さんの回答も、必ずしも直接の回答に沿っているとは言い難く、しばらく不思議なやりとりが続きます。このあたり、読んでいて、とても不思議な雰囲気に誘われますが、これも、また一つの村上ワールドと言えそうです。
村上春樹が語る「習慣」の力
そんな中、こんな名言が飛び出します。
もし今日走らなかったら、その翌日も走らないだろうと思うのです。 自らに必要以上の負荷をかけることは、 人間にそもそも具わっている性質ではありませんから、 肉体に学ばせた習慣は、すぐに解かれてしまうものです。 それは書くことにも当てはまります。 僕は毎日規則正しく書くことで、精神を鈍らせないようにしているのです。 |
これは私も非常に強く同感するところ。
私が毎日ジョギングをしているのも、たぶん同じ意識です。
私は生来の怠け者ですが、こうして日々続けられているのは、上記の想いからくるものです。
走ること自体も好きですが、これによって日々のあらゆることへの意識が鋭敏になる・・・。
もっと言えば、それは「鋭敏」などではなく、ごくごく普通の「あるべき姿」程度のものであるはずですが、それすらも、一定の意識を払わなければ維持できないような環境が、現代社会なのだと私は感じています。
走ることで「何も考えない状態」がつくれる
また、インタビューの中で、村上さんは走ることで「何も考えない状態」がつくれると語ります。
インタビュアーは「そんなことが可能なのか?」と問うのですが、これについても同感。
私も以前は「そんなことが可能なのか?」派でした。走っている時も、「何も考えないということを考える」という自分までが限界でした。
でも今年、ジョギング歴3年になり、そういう時が訪れるようになったことは事実です。
そしてそれは、非常に心地よいことで、おそらく座禅などの境地に近い状態ではないかと思います。前述の、「あるべき普通の状態に戻す」という営為だと私は感じています。
走歴は、まだまだ及ばない私ですが、村上さんの言葉を聞いて、これからの精進が楽しみになりました。
習慣の力、何も考えない力
長くなりましたが、私はこのブログで2つのポイントをご紹介しました。
・継続・習慣によって自らを律すること。 ・無に帰することによって自らを律すること。 |
ジョギングをしていると、「走って、いったい何になるの?」と言われることがありますが、走ること自体の楽しさはもちろんのこと、それ以外にも、「自らを律することによって得られるギフトが大きい」ということが言えるのではないかと思っています。
良い習慣を身に着けなければ、悪い習慣を身に着けてしまう
そこで思い出したのが、この言葉。
良い習慣は身につけるのが困難だが、いったん身につけたら生きやすくなる。 悪い習慣は身につけやすいが、いったん身につけたら生きにくくなる。 もし意識して良い習慣を身につけなければ、悪い習慣を無意識的に身につけてしまう。 |
ピナクル・サービス・グループの経営者で、アメリカでも人気の高い講演家、マーク・マットソンさんの言葉です。
たぶん、これに尽きるのではないでしょうか。
村上春樹インタビューの「行間」が深い
今回の村上さんの本の一章、「走っているときに僕のいる場所は、穏やかな場所です」は、質問者とうまくかみあっていないこともあって(おそらく質問者のスキルの問題)、文章だけを見ると、内容は、ごくごく単調に、あっさりと、また、さらっとしています。
でも、こうして行間を推して考えてみると、村上さんは、ご自身の膨大かつ濃厚な経験をもとに、とっても深い内容を語られているような気がしてなりません。
ランナーの皆さん、わずか30ページですので、ぜひ読んでみてください。
また、
『走ることについて語るときに僕の語ること』
を未読の方には、こちらもぜひオススメしたいです。
2010年10月22日 渡邉 裕晃
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