国威発揚を目的とする映画、プロパガンダ映画。
「プロパガンダ映画」には、いろいろな作品がありますが、とりわけ有名なのは、ナチスドイツの映画作品「意志の勝利」。プロパガンダ作品でありながら、数々の賞を得てきた名作です。1934年の作品。
私も、その名前だけは知っていたのですが、作品自体を鑑賞する機会はありませんでした。それもそのはず、なんと67年間、封印されてきたようなのです・・・。
それがこの度、ようやく公開されるということで、いてもたってもいられず、早速見てきました!今回のブログでは、67年ぶりに公開されたナチスのプロパガンダ映画「意志の勝利」をご紹介します。
【写真:映画「意志の勝利」より】
目次
ヒトラーの演説に熱狂する姿をとらえる「意志の勝利」
ニュルンベルクで1934年9月4日から6日間行われた、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)の全国党大会。「意志の勝利」は、そのナチス党大会の記録映画です。
今の時代に生きている自分からすると、見ていて、明らかに違和感を覚えます。
でも・・・、それでも、当時の人たちの熱狂ぶりを見せつけられると、きっと同時代人では、あらがえなかったムードがあったのだろうなと感じざるを得ません。
「Youtube」に、映像の一部がアップされていたので、ぜひ見てみて下さい。
■ナチスドイツ 意志の勝利 労働奉仕団の点呼 short version
いかがでしょう?
これほど内容の薄いメッセージに、なぜ、かくも多くの人が熱狂するのか。
不思議に思う方が多いのではないでしょうか?
■Eine Rede von Adolf Hitler (アドルフ・ヒトラー氏の演説)
根拠なき熱狂という「小さなナチス」
でも、こうした陶酔や、根拠なき共感は、レベルを変えて、現代にも生きていること。
身の回りをじっくり見返してみれば、
きっと、あちらこちらに、その萌芽を見て取れるのではないかと思います。
「小さなナチス」は、いつでも、起こりうるということです。
女性監督、レニ・リーフェンシュタールの存在
この映画で注目すべき点の一つは、レニ・リーフェンシュタール(Leni Riefenstahl)という女性監督の存在です。
この112分の映像を見ていると、国家意識の発揚、国家主義への共感を呼ぶという、いわば「男性的な内容」であるにもかかわらず・・・、なぜか映像の中で、女性たちの陶酔だったり、子供たちの共感という、どこか、女性特有の視点が、あちらこちらに芽を出していることに気づかされるのです。
ここの点は、要注目ではないかなと思いました。
忘れたくない「当事者」意識
また、繰り返しになりますが・・・、第三者的に見ると、「なんで、こんな内容で陶酔するの?」と思える内容であっても、参加当事者からすると、ハマッてしまうことがあるということ。
その謎、その力学がいかにして作用しているのか。これを考えることは、常に問題意識として抱えておくべき内容だろうと、私は思います。
(特に広告の世界に身を置く方々は! そういう意味で、広告代理店関係者には必見の映画ですね)
この映画がきっかけで、ナチスの勢いにさらなる拍車をかけ、大きな惨劇を引き起こす契機にもなった作品。こうした映画を封印するのは、それはそれで意味があるのかもしれませんが、67年の時を経て、あえて平和を考える基礎として公開に持ち込まれたこと。私は大いに歓迎したいと思います。
映像の力は強烈で、これを見ると・・・、たとえこれに匹敵する規模のことはおきにくいにしても、これに類する小さな出来事は、まだまだいくらでも起きるはず! ということが容易に見て取れます。
112分の映画作品。「ナチス党大会の記録」として、たんたんと、そして、あっけなく終わる映画なのですが、その内実は非常に深いです。
「意志の勝利」は、語り合うための題材としてぴったりの作品
ぜひ多くの方に見ていただいて、この映像のもつ深みについて、語り合う機会があると、ものすごーい発見がもたらされるのではないかな? と思います。
そういう意味では、考えさせられる、非常に良い映画です。党幹部すらも陶酔に陥ってしまっている光景は、戦慄を覚えるに違いありません。
特に、スローガンである「Alles fur Deutschland」なら、まだしも、副総統のルドルフ・ヘスが放った言葉、「Sie sind Deutschland!」から続く、独裁者礼賛スピーチには、本当にびっくりしました・・・。
(私にとっては、宣伝大臣のゲッベルスよりインパクトがありました)
とにかく、この映画、フィクションではないのです・・・。
■追伸:
あぁ、そろそろドイツ語の勉強をやり直したい・・・。「意志の勝利」をドイツ語で理解できたら、さぞかし多くのことが学べるでしょうね。
■(参考引用)公式サイトより 67年間の封印が解かれる、映画史上最大の問題作。 我々は、この歴史を二度と繰り返してはならない。 <『意志の勝利』> <全てのクリエイターが、映像の教科書と認める禁断の映画> <プロパガンダ映画とは> <上映に際して> <悲劇の女性監督レニ・リーフェンシュタール> |
2009年8月17日 渡邉 裕晃
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