インドネシアの外資規制|eコマース市場への参入どこまでOKに?

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インドネシアは外資規制が比較的厳しい国の一つとして知られています。現在、そのインドネシアで、「eコマース企業に対する外資の参入について、その基準をどこまで緩和すべきか」が議論されています。

中間層の消費拡大や、携帯利用の活発化、若い人口の多さなどもあって、インドネシアのeコマースは、今後も大きな成長が期待されている分野。さらなる成長に向けて、インドネシア政府はどう考えているか、成長の行程表となるロードマップの発表も、以前から待望されているところです。
(ずっと延期が続いています・・・)

今回、外資規制や投資制限についての大枠が報道されました。「外資規制を理解する際におさえておくべき、インドネシアならではの文脈」もふまえて、紹介したいと思います。




外資企業に緩和されるeコマース(EC)市場とは?

「外資企業に所有されても良いのはどのeコマース?」と題するKompasの記事より【画像:「外資企業に所有されても良いのはどのeコマース?」と題するKompasの記事より】

今回の記事は、インドネシアの代表的なニュースメディア、Kompasが報じた次の記事です。

「外資企業に所有されても良いのはどのeコマース?」“E-commerce” Mana yang Boleh Dimiliki Asing? – Kompas.com(12 Februari 2016 | 08:51)

インドネシアで、この分野を担当するのは通信情報省ですが、その通信情報省のルディアンタラ(Rudiantara)大臣のコメントを、簡単にまとめた記事になっています。

主な点は次の通りです。

2016年はじめ、インドネシア政府は投資ネガティブリスト(渡邉注:外資企業の投資制限を行う業種を定めた一覧表)の改訂を行うはずになっている。その一つはeコマースにおける外資企業による所有の問題だ。

この新しい規則は、後に外国企業によるeコマースの取引の実施を可能にする予定になっている。

しかしながら、どのようなeコマースを意味しているのだろうか?

通信情報大臣のRudiantara氏は、2月11日の段階で次のように説明している。

大臣によれば、外国企業からの投資に関するeコマースの分類には3つがある。

「まだ創業間もない会社とか、零細企業もたくさんありますが、いわゆる中小企業については、まず保護されなくてはいけません。外資企業が参入してはいけない分野です」と語る。

正確に言えば、100億ルピア未満の価値のeコマース企業については、外資企業は投資をしてはいけない。
一方で、だいたい100億から1000億ルピアの価値を持つ会社については、外資企業が投資をしても良い。ただし最高でも49%までだ。

そして、1000億ルピア以上の価値をもつ会社については、外資は100%の参入をしても良いと言ってもいい。

「なぜなら外資企業が入ってきたとしても、いつかは出て行くでしょう? だから出口となる戦略についても考える必要があるのです」とRudiantara氏は語る。

Rudiantara氏によれば、出口というのは資本市場において行うことができるものだ。つまり新規公開の「IPO」だ。

「例えば、Tokopediaの場合、あとでSoftbankは出ることができますね(もしIPOすれば)(渡邉注:ソフトバンクはTokopediaの株主)。あとでインドネシアの人々は、その株式を市場で取得することができるわけです」と言う。

投資ネガティブリストに関する大統領令の改訂は、本来なら近々発表されなくてはいけない。「今月、もしくは3月には出るはずだ」と彼は言う。

Rudiantara氏が付け加えるところによれば、この規則が奨励するものは、一方で「保護」であるが、グローバルな社会の中でインドネシアの競争力を維持発展させることだ。

インドネシアの外資規制を見る時に注意すべきポイント

私が見るに、ここで注意しておくべきポイントは、「外資企業の参入基準の緩和」とはいうものの、日本で一般的に言われる文脈での「開放」と考えるべきでないということ。

インドネシアでいう外資の参入緩和というのは、あくまでも

「インドネシアを発展させるために」
「インドネシア人の将来利益のために」

という意味が込められている比重が高いです。これについては、以前のブログでも書きました。

インドネシアの外資規制「eコマース産業で外資100%参入を許可」は本当か?
インドネシアのEC産業(eコマース)の将来が注目されています。しかし外資系企業にとって気になるのが、インドネシアの外資規制です。 大い...

あくまでも、国内産業の保護が第一にあるため、そのあたりの文脈をおさえておくことは、外国企業がインドネシアに参入するにあたって、ぜひ注意しておきたいポイントです。

そうすると、上記で紹介した大臣のコメントも、理解しやすくなりますよね。例えば、上記コメントの中で、

  • 外資への緩和なのに、インドネシア人の保護を強くうたっていること
  • 外資企業は、参入しても、いつかまた帰る存在だと言っていること
  • 外資に開放しても、あとでインドネシア人が買戻しできると強調していること

などの点は、そうした文脈をおさえていないと、違和感を覚えてしまう点ではないかと。しかし、この文脈をおさえておけば、違和感なく、すんなりとコメントを理解することができるはずです。

インドネシアのeコマース、ネガティブリスト改訂や成長ロードマップ策定には時間が

今後、インドネシアのeコマースが発展していくことは、余程の事態が無い限りは確実なことでしょう。

成長の芽を、どのように次のステージにもっていくか、国内企業、外資企業、政府、消費者、その他さまざまな存在が関わってきます。

国内を保護したいものの、成長促進には海外からの力を借りなくてはいけない・・・。

そのあたりの微妙な舵取りの難しさがあって、それゆえに、ネガティブリストの改訂や成長ロードマップの策定に予想以上の時間がかかっているということなのだと推察します。今後もこの動きはウォッチしていきます。

(参考:samsul.comブログから)
 
■2016年1月16日up
 「インドネシアがeコマース産業で外資100%の参入を許可」は本当か?

■2016年1月19日up
 インドネシア政府「eコマース・ロードマップ」を1月下旬には発表か

■2016年1月20日up
 インドネシアの「eコマース・ロードマップ」をどう見るか。通信情報大臣と商業大臣のコメントから見えるもの

■2016年1月24日up
 インドネシアのeコマース市場|発展のための「保護」と「支援」の境界線

サムスル
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時の運と人の縁を極める日々の記録 】  渡邉 裕晃
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