インフラ整備が急がれるインドネシア。経済発展を加速させるためには、慢性化した渋滞の解消や、中央と地方、都市と都市をつなぐためのインフラ整備が不可欠となっています。
さまざまなインフラプロジェクトの中の一つが、ジャワ島の西から東をつなぐ、ジャワ横断高速道路「トランス・ジャワ」です。今回は、ジャワ横断高速道路「トランス・ジャワ」についてご紹介します。
■追記:2019年4月現在の開通状況も、地図と映像で掲載しました。
目次
ジャワ島横断高速道路(トランス・ジャワ)とは?
ジャワ高速1000キロ開通へ 年内目標 メラック~パスルアンつながる 全長約1200キロに及ぶジャワ島横断高速道路(トール・トランス・ジャワ)のうち、2018年内に約千キロが開通する見通しだ。中部・東ジャワ両州で計約433キロが新たに開通し、ジャワ島西… https://t.co/ruSN6Za8uD pic.twitter.com/6F4auBuEID
— じゃかるた新聞 (@JakartaShimbun) 2018年1月11日
ジャワ島横断高速道路(トランス・ジャワ)は、その名の通り、ジャワ島の西から東までをつなぐ横断道路です。西はバンテン州のメラック(Merak)を起点として、インドネシア第2の都市、東ジャワ州スラバヤ(Surabaya)までをつなぐ高速道路となっています。
その後2016年7月になると、スラバヤからさらに東へ延伸し、ジャワ島最東部にあるバニュワンギ(Banyuwangi)まで開通させる計画へと変更されました。
2019年4月現在ではスラバヤからさらに東にある都市、プロボリンゴ(Probolinggo)まで開通しています。メラックからプロボリンゴまでの距離は、962キロとなっています。将来的にバニュワンギまで開通した場合、総延長は1150キロ前後になるようです。
急務となるインフラ整備と「トランス・ジャワ」
ジャワ横断高速道路「トランス・ジャワ」のプロジェクトについて、インドネシア現地の代表的メディア「テンポ(Tempo)が、ジョコウィのスピーチを紹介しながら記事をとりまとめています。2016年3月現在の状況を取り上げたものです。
「2018年には完成させよう。私たちは遅すぎます」
高速道路の工事が遅々として進まないことに対し、苛立ちを見せるかのように語るジョコウィ大統領のコメントです。この内容と背景を追ってみましょう。
【画像:「ジョコウィは、メラックースラバヤ間の高速道路が2018年に完成することを求めている」とのTempo記事より】
今回「Tempo」が取り上げたのは、次の記事です。
「ジョコウィは、メラックースラバヤ間の高速道路が2018年に完成することを求めている」Jokowi Minta Jalan Tol Merak-Surabaya Selesai Dibangun 2018 | Tempo Bisnis (19 MARET 2016 | 16:07) |
内容は次の通りです。
ジョコウィ大統領は、バンテン州のメラック(Merak)から東ジャワ州のスラバヤまでをつなぐ、ジャワ横断高速道路(トランス・ジャワ)が、2018年に完成することを求めている。
「公共事業大臣は、メラックースラバヤ横断道路の目標を2018年の完成においています」と、3月19日に行われた、スラバヤーモジョクルト高速道路の第4区間(モジョクルト県ジェティス郡プノンポにあるクリアンーモジョクルト区間)の開通式で、ジョコウィが語った。 ジョコウィによれば、今日における道路の障害は、土地の収容確保だ。「問題は土地の収容確保にあります。もし急いで建設が進むのであれば、土地の収容確保ができればすぐに着工できるのです」と語った。 大統領によれば、国は土地の収容確保のために、たとえ高い費用がかかるとしても、さまざまな努力をしなくてはいけない。「重要性のためなら、もっと高くなっても問題ありません。私たちは土地確保を急がなくてはいけないのです」と語る。 ジョコウィは、インドネシアにおけるインフラ建設が遅々としていることに不満をもっている。中国のような海外とくらべ、インドネシアのインフラ建設が遠くかけ離れていることを比べている。 「私たちは遅すぎるのです。中国では、すでに6万キロの高速道路をもち、毎年4000から5000キロの高速道路を建設しています。私たちは独立してから今日に至るまでの70年間で、ようやく840キロの高速道路を持つようになったに過ぎません」と語った。 ジョコウィは、公共事業相と国民住宅相に対し、5年で1000キロの高速道路の建設が可能となるよう目標づけている。ジョコウィが望むのは、すべてのエリアにおけるインフラ建設のスピードだ。 「この国は、大きな2つの問題に集中しています。つまりインフラの規制緩和とインフラ建設です」と語る。規制緩和が意味することは、建設プロジェクトの活動に関する規制の簡略化だ。「さまざまな規制が、かえって足かせになるようなことがあってはならないのです」と。 ジョコウィが期待しているのは、スラバヤーモジョクルト間の高速道路の建設がすべて完了することだ。「これはまだ一部にしかすぎません。総局長と大臣には年内に終らせるよう目標づけています」と語る。 スラバヤーモジョクルト間の36.27キロの長さになる高速道路は、4つの区間に分かれている。その4区間のうち、ようやく終わったのは2011年に運営開始となった2.3キロのワルースパンジャン区間、そして、今回開通した18.47キロのクリアンーモジョクルト区間だ。 |
開通式のスピーチで、さらなる工事の加速を求めるジョコウィ大統領
新たな高速道路の開通式。そんな華々しい席で、あえて、「私たちは遅すぎるのです」と語るジョコウィ大統領。インドネシアのインフラ整備が喫緊の課題であることが改めて浮き彫りになっているかたちです。
ちなみにこのジャワ横断高速道路「トランス・ジャワ」ですが、メラック(Merak)から東ジャワ州のスラバヤを地図でつないでみると、このような線になります。
あくまでも、Googleで既存道路をなぞった結果なので、ジャワ横断高速道路「トランス・ジャワ」のルートがこの通りになるとは限りません。でも、このエリアのラインで新たな大動脈ができるということです。
なお、今回の開通式は、そのうち、「スラバヤとモジョクルトをつなぐ高速道路」の区間になりますが、Googleマップでは、このようになります。
民主主義が進むインドネシアでは、スハルト強権政治のような、乱暴な土地収用が難しくなっています。一方で、どんどん発展が進み、都市と都市、都市と地方を結ぶネットワーク、ロジスティクスの基礎となる道路の整備も急がれています。飛行場、港、鉄道、道路と、インドネシアのインフラ整備は喫緊の課題です。
インドネシアの高速道路・インフラ整備が与えるインパクト
私が住んでいるのは東ジャワのマランで、スラバヤから南に90キロ程度行ったところにあります。この区間も、高速道路の建設が進んでいますが、2年前に、数キロだけ延伸された部分が新たに開通しました。
数キロでしかないのですが、スラバヤとマランを往復する便利さは、飛躍的に向上したと私は体感しています。だからこそ、インフラ整備が進むことによって、そこから受ける恩恵は、非常に大きなものがあるように思います。
また、2019年4月にはインドネシアで大統領選挙が予定されています。ジョコウィ大統領が再選を勝ち取るためにも、インドネシアにおけるインフラ環境の改善は大きなポイントとなることでしょう。
というわけで、今回は2018年の完成に向けて急がれる、ジャワ横断高速道路「トランス・ジャワ」の話をご紹介しました。続報があれば、またご紹介したいと思います。
【参考】
なお、2006年(平成18年)2月に、独立行政法人国際協力機構が作成した報告書のPDFは、こちらです。
■「インドネシア共和国・ジャワ縦貫高速道路建設における官民協調スキーム策定調査・事前調査報告書」
■参考:このテーマに関連するブログ記事です。こちらも、どうぞ。
【参考】トランスジャワの現在の開通状況は?(地図と映像)
インドネシアのジョコウィ大統領は、2019年4月16日付けのソーシャルメディアでの投稿で、ジャワ横断高速道路「トランス・ジャワ」の開通状況を映像を使って紹介しています。
高速道路はメラックからパスルアンまでの933kmが開通
現在開通している区間は「バンテン州のメラック(Merak)から、東ジャワのパスルアン(Pasuruan)までの933キロ」と説明しています。参考までに、メラックからパスルアンまでをつなぐと以下のとおりです。
最終的にはジャワ島の東端バニュワンギまで
なお、2019年にはジャワ島の東端であるバニュワンギ(Banyuwangi)まで開通させる計画です。バニュワンギの位置はこちらです。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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