北朝鮮観光旅行記第3日目(8月6日)平壌

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1997年夏に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へ旅行で訪問する機会がありました。1997年8月4日に成田を出発し、8月10日に成田に到着するまでの旅の記録をまとめていますが、今回は第3日目となる8月6日の様子です。

なお今回の北朝鮮旅行のスケジュール一覧はこちらをどうぞ。




8:15:普通江ホテルの朝食

平壌に来て初めての朝を迎えました。昨日はわずか半日間だけでしたが、それだけでも多くの興味深いものに出会いました。今日は、一日中平壌を観光します。どんなことが待ち受けているのか、とっても楽しみです。さらに今日は、車で120キロほど北上したところにある妙香山に宿泊です。内容盛りだくさんの一日になりそうです。

8:45:金日成主席の生家

まず最初に訪れたのは、金日成主席の生家です。北朝鮮に観光旅行で来る人は、昨日訪れた主席の銅像と、この生家には必ず訪れることになっているそうです。バスに乗って向かいました。平壌の中央部からちょっと離れているためか、道路などがだんだん悪くなってくるのですが、この生家に近づくと、だんだんときれいになっていきました。

貧しい家に生まれたというわりには、観光客向けにきれいに整備されてしまっているので当時のありのままの面影を見ることはできませんでした。ここの案内人の方が朝鮮語で説明をし、旅行ガイドの方が日本語に通訳してくれたのですが、案内人の大変熱心な説明ぶりと、ガイドさんの厳かな態度、場の雰囲気にふれて、「あぁ、心から尊敬しているんだなぁ」と感じずにはいられませんでした。主席が子供の頃に飲んだという井戸の水を飲んできました。

9:45:万景台遊園地

友人に語るといつも驚かれるのが、この遊園地の存在です。北朝鮮に遊園地があるらしいと聞いていたので、私は昨日ガイドさんに頼み込んで、つれてきてもらったのです。

入ってみると、いろいろな乗り物があります。ジェットコースターまであります。これは予想外でした。でもお客さんが誰もいません。「どうして誰もいないのですか?」とガイドさんに聞くと「えぇ、いつもは子供たちが来るのですが、今はみんな学校で勉強していますね」とのこと。えっ、でも待てよ。ガイドさん、昨日は「子供たちは今夏休み中です」と言っていたのです。「えっ、子供たちは今夏休み中だったはずじゃないですか」と言うと、ガイドさん、ちょっと笑って「あ、そうでしたねぇ」と、ちょっと苦しい弁明。どうなんでしょう? 午後になったら本当に子供たちが来るのでしょうか。

「乗り物には3つしか乗れません」。ガイドさんにそう言われ、我々は一つだけ乗ってきました。北朝鮮の遊園地で乗り物に乗ってきた日本人、はたしてどれくらいいるのかな?

しかし気になったのは、電気仕掛けの自動車に乗るコーナーです。一般市民以上のきれいな身なりをした一家が実に楽しそうな笑顔を振りまいて遊んでいる姿がありました。我々が遊園地に来るというので、サクラとして動員されてきたのでしょうか。真偽のほどはわかりませんが……。

【後日追記】YouTubeに北朝鮮の遊園地を取材した映像がありました。なお、この取材先が「万景台遊園地」に該当するかどうかは不明です。

10:30:地下鉄(「復興駅」→「栄光駅」)

今度は、地下鉄に乗ります。これも僕が楽しみにしていたことです。駅に入ると、長い長いエスカレーターに乗りました。これ、本当に地下深くまで行きます。お茶の水駅のエスカレーターよりもはるかに長いはず。核シェルターを兼ねて作られているのでしょうか。装飾もすごいです。ソ連の援助で建設されたものだと思いますが、社会主義や共産主義は、一時期は、やはり本当にすごかったんだろうなぁということを肌で感じました。1974年生まれの私にとって、共産主義と言えば「経済ぼろぼろ」というイメージしかないので、同時代人の共産国に対するあこがれ(錯覚、幻想)が、何となく理解できるような気がしました。

ここにはたくさんの平壌市民がいました。サラリーマン、おばさん、軍人さん、お年寄りの方、みな、もくもくと歩いていきます。平壌に来て、ようやく一般市民の姿に触れることができました。駅のホームに着いて、びっくり。とても広々としていて開放感があり、きれいな装飾や金日成主席の壁画などで彩られています。

地下鉄に乗り込んでびっくりしたのは、車内が真っ暗だということでした。電気が消灯状態のままなのです。各車両内部の先頭部には、金親子の肖像画が掲げられていました。

11:30:チュチェ(主体)思想塔

次に訪れたのは、「チュチェ思想塔」です。「チュチェ」というのは、北朝鮮の体制を支える根本にある思想のことです。その思想をかたちに表現したものが、この塔です。高さは100メートルほどあり、一番上まではエレベーターで上がれるようになっています。この上からは、平壌の街並みが一望できるのです。(隣に流れている川には噴水もあり、普段は止まっていますが、お祝い事などがあると、水が100メートルもの高さにまであがってくるのだそうです)

1階には、この塔を建立するために使われた石を寄付した世界中の団体の名前が書いてあります。日本の団体の名前もいくつか見られました。

ここを案内していただいたのは、小林さんという方です。もう20年以上も前に、日本から渡ってきた、いわゆる「日本人妻」の方です。ふくよかで、とっても健康的な感じのする方でした。「食糧難」とは全く無縁のように見えます。日本に帰ってきてからわかったことですが、小林さんは北朝鮮で「模範的な」日本人妻であるとして、賞賛されている方なのだそうです。(結構有名な方らしいです)

12:30:玉流館(昼食・冷麺)

おなかがすいてきました。今日の昼食は、平壌名物の「冷麺」です。冷麺専門のレストラン「玉流館」へ行きました。一日5000人以上の人々が訪れるそうです。ちょうど昼時だったので、「玉流館」のまわりには大勢の人々がいました。まるで昼食を食べに行ったり買いに行ったりするときの、日本のオフィス街に負けないぐらいの人数でした。ガイドさんも冷麺が好きらしく、喜びの表情を隠せない様子……。

VIP用の入り口と一般人向けの入り口があるようで、我々はVIP用の入り口から入っていきました。なぜVIP用だと思うかって? 入り口に、ベンツをはじめとする高級車が何台もとまっていたからです。中には労働党幹部と思われる車もありました(ナンバープレートの最初の3ケタが「216」となっているのが、労働党幹部の車なのだそうです。金正日書記の誕生日が2月16日だからかな?)。

写真にあるのが、その冷麺です。前菜がいろいろ出てきたので、冷麺にめぐりあう前にお腹がいっぱいになってしまったのですが、この冷麺、味はまぁまぁ。北朝鮮でいつも出される料理と比較すれば、なかなかの味です。俳優の緒形拳さんが北朝鮮をおとずれた際、率先しておかわりをして、喜んで食べたというのが、ここの店の冷麺です。

13:45:国際文化会館(おみやげ)

「おみやげを見に行きましょう」ということで、民芸品売場のようなところへ行きました。民芸品だけでなく、骨董品や壺などもおいてあったのですが、僕にとって興味深かったのは、お店の人の態度です。

さすが共産国と言うべきでしょうか。ガイドさんの通訳の元で、「この商品は、どこでも同じぐらいの値段なんですか」と聞くと、「あぁ、この商品は同じですけど、そっちの商品は別の店に行った方が安いです」とのこと。「他の店の方が安いですよ」。そんなセリフを店員から聞くとは、ちょっとした驚きでした。こんな調子の経済観念で、しかも経済がうまくいくとしたら、そりゃたしかに楽園だわなぁ。

14:30:普通江ホテル

「ちょっと休憩」ということで、ホテルへ戻りました。次に行く場所で、我々を迎える準備が遅れているのでしょうか?

金日成総合大学

次に行ったのは、北朝鮮の東京大学、「金日成総合大学」です。てっきり現地の大学生に会って、授業風景も見られるものとばかり思っていたのですが、期待はずれでした。授業もやっていないし、ほとんど学生もいませんでした。

現地に着くと、案内人の方が出てきて、説明をはじめました。それも、金正日書記が学生の頃、いかに素晴らしかったか、ということを、図や写真を示しながら、とうとうと語り出すのです。左上の「授業風景」の写真を見て下さい。中央の一番上に位置しているのが、金正日書記だそうです。(ちょっと合成写真っぽい感じもしたんですが、気のせいでしょうか?)

書記は、学生時代に、「他の学生のリーダー的存在で、クラブ活動もし、学生同士の肉体労働活動にも率先して参加し、炊事にも協力されました」とのこと。「東欧やソ連、キューバなどからくる留学生たちとは、日夜ディスカッションをした」のだそうです。さらに驚いたのは、書記は、大学在籍期間中(4年間)に、論文をなんと1500本も書いたそうです。これにはびっくりです。だって、1日1本書いたって、365X4=1460ですからね。1日1本コンスタントに書いても、2本書かないといけない日もでてくるわけでしょう? それで、前述したような活動が、はたしてできるんでしょうか? やっぱり「敬愛すべき親愛なる同志」は、よっぽどの天才なんですね。きっと。

右上にある写真は、大学の図書館にあるコンピュータールームです。こういう施設があるとは知らなかったので、これもびっくりしました。学生さん、みんなフロッピーと紙をもとに、ベーシックをやっていましたよ。ディスプレイは14インチのカラーを使っているようです。この写真にあるパソコンよりも質の良さそうなパソコン(タワー型)が2台、この写真のずっと左の方にあって、専門の職員の方が使っていらっしゃったのですが、そちらはどうも5インチフロッピーを使っているようです。日本に戻ってから友人に聞いたところ「386の後半から486SX、DX2くらいのスペックではないか」とのことでした。

18:30:北朝鮮のリゾート地、妙香山の「妙香山ホテル」へ

さて、これから妙香山へ出発です。バスで2時間ぐらいかけて到着しました。

妙香山とは、その名の通り、「妙」つまり、格別の独特な香りのする山、という意味で、自然の豊かなリゾートという感じでした。左にあるのが、我々の宿泊したホテルです。最上階には回転式の展望レストランがあるんですよ。でもエレベーターは5機もあるのに2機しか動かしていなくて、ロビーの噴水も止められていました(僕が噴水に近づいたら、スイッチを入れてくれました)。宿泊客も、ほとんどいませんでした。(1-0818号室)に宿泊。夕食まで時間があったのでちょっと散歩したのですが、虫がわんさか飛んでいて大変でした。日本に帰ってきてから思ったのですが、ここにはたくさんの農地があって、農薬が極度に不足しているために、虫が大量発生しているのではないかという気がします。

隣にはきれいな川が流れています。本当にきれいな水でした。底まで透き通っているのです。ほとんど観光客がいないからでしょうか。あの透明さには驚きました。

夕食を食べた後、しばらくして最上階の展望レストランへ行きました。我々一行5人と、ガイドさん2人、運転手さんと、隣の団体のガイドさんが2人、隣の団体の運転手さんも加わって、みんなで飲みました。とても面白かったです。でもこのレストラン。せっかく回転しているのに、まわりに電気のついた施設がないので、外が完全に真っ暗で、景色なんて何も見えないのです。

【追記】YouTube映像で「妙香山ホテル」の映像を見つけました。2:27部分から紹介されています。

今日の費用

1.万景台遊園地、入場料、乗り物代 (入場料2ウォン、乗り物1つにつき2ウォン)
2.チュチェ思想塔 (ジュース代”7up”0.9ウォン)(展望台入場料 10ウォン)

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