ジャカルタの治安|危険とされる「歩道橋」の改善の取り組みは?

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インドネシアのジャカルタの歩道橋で、白昼の強盗被害が頻発しているとのニュースが流れていました。「インドネシアの歩道橋」は、日本大使館からも「できるだけ利用しないで」と呼びかけられているくらい、治安面で危ないとされている存在です。

特に「ジャカルタにおける歩道橋でのスリ」の類は、以前から有名で、私も未遂の被害にあっています。

ジャカルタの歩道橋|3人組のスリにあい、追い払って撃退した時の話
「インドネシアの治安はどう?」「ジャカルタの治安は平気なの?」 初めてインドネシアへ行くという人から受ける質問に「治安」があります。特...

白昼の強盗被害が頻発しているとのニュース。在インドネシア日本国大使館からの発表によれば、未遂の事件を含め、被害の報告が相継いでいるようです。今年に入ってから、すでに2回も続けて発表が。今回のニュースがいつもと異なるのは、この2017年に入り、2月16日、そして3月17日と、連続して矢継ぎ早に発表されていること。わずか1ヶ月足らずで2回も・・・。

一方で、長らく放置されてきた「ジャカルタの危険な歩道橋」問題に、一定の改善への動きも見られることも事実です。今回は、そんなジャカルタの歩道橋問題の最近の動きについて、概観してみたいと思います。

トランス・ジャカルタに乗るには歩道橋を通る必要が
【写真:ジャカルタ大通りにある歩道橋(中央は公共バス「トランス・ジャカルタ」の停留所)】




ジャカルタの歩道橋での強盗被害、日本大使館からの発表

ジャカルタ 歩道橋

前述の通り、私自身も、ジャカルタの歩道橋でスリ未遂にあったことがあり、この手のニュースには敏感になります。実際にどのような問題が起きているのかを見てみましょう。在インドネシア日本国大使館からの今回の発表は、次の通りです。

治安対策を呼びかける日本大使館の発表(平成29年2月のケース)

まずは、平成29年2月16日付のものです。

●最近、ジャカルタ中心部・スディルマン通り(特にトランス・ジャカルタの歩道橋付近)の歩道において、白昼強盗被害が頻発しています(未遂事案含む)。
●目的地への移動に際しては、なるべく自動車を使用するようにしてください。やむを得ず徒歩にて移動する際には、細心の注意を払うとともに、仮に強盗に遭遇した際には、抵抗せずに身の安全を第一に考えてください。

ジャカルタにお住まいの皆様、出張者および旅行者の皆様へ
平成29年2月16日(大17第7号)

在インドネシア大使館

先般当地邦字紙にも掲載されたとおり、最近、ジャカルタ中心部・スディルマン通り(特にトランス・ジャカルタの歩道橋付近)の歩道において、邦人がスマートフォンや貴重品の強盗被害に遭う事例が頻発しております(未遂事案含む)。

当館から国家警察に対し、周辺警察へのパトロール強化を要請していますが、それでもなお強盗犯の出没が続いています。

つきましては、ジャカルタ市内の移動に際しては、なるべく自動車を使用するようにし、やむを得ず徒歩で移動する際には、以下の点に特に留意の上、最大限の注意を払うようにしてください。
また、もし被害にあった場合は相手は武器を持っている可能性が高いので、身の安全を第一に、無理な抵抗はしないように心がけてください。

1.外出する際,できるだけ貴重品は持ち歩かないようにする。
2.歩行中には鞄や携帯電話など所持品に常に注意を払う。歩きスマホは注意力が散漫になるため、安全な屋内に移動して通話するよう心がける。
3.歩道では鞄を車道の反対側に持ち,たすき掛けに出来る鞄はたすき掛けにするなどして鞄を体の前方に保持する。

在インドネシア日本国大使館

治安対策を呼びかける日本大使館の発表(平成29年3月のケース)

続いては、平成29年3月17日付のものです。

●最近、ジャカルタ中心部・スディルマン通りのトランス・ジャカルタ停留所(特にスマンギ交差点より南側、Gelora Bung Karno駅など)へ向かう歩道橋上及び歩道橋付近にて、引き続き邦人を含む白昼強盗被害の報告が相継いでいます(未遂事案含む)。
●目的地への移動に際しては、なるべく自動車を使用するようにし、やむを得ず徒歩にて移動する際には、周囲に警戒を怠らないようにしてください。
●仮に強盗に遭遇した際には、抵抗せずに身の安全を第一に考えて行動してください。

ジャカルタにお住まいの皆様、出張者および旅行者の皆様へ
平成29年3月17日(大17第13号)

在インドネシア大使館

2月16日付当館お知らせに続き、最近はジャカルタ中心部・スディルマン通りのトランス・ジャカルタ停留所(特にスマンギ交差点より南側、Gelora Bung Karno駅など)へ向かう歩道橋上及び歩道橋付近にて、引き続き邦人を含む白昼強盗被害の報告が相継いでいます(未遂事案含む)。
つきましては、ジャカルタ市内の移動に際しては、なるべく自動車を使用するようにし、やむを得ず徒歩で移動する際には、改めて以下の点に特に留意の上、周囲に警戒を怠らないようにしてください。

また、強盗に遭遇した際には、相手は武器を持っている可能性が高いので、抵抗せずに身の安全を第一に考えて行動してください。

1.外出する際、できるだけ貴重品は持ち歩かないようにする。
2.歩行中には鞄や携帯電話など所持品に常に注意を払う。歩きスマホは注意力が散漫になるため、安全な屋内に移動して通話するよう心がける。
3.歩道では鞄を車道の反対側に持ち、たすき掛けにするなどして鞄を体の前方に保持する。

(参考:2月16日付当館お知らせ

在インドネシア日本国大使館

歩道橋でのスリ未遂の被害にあった体験と、4つの対策

スリ 犯罪

ジャカルタにおける「歩道橋スリ」というのは、以前から有名なわけですが、私自身が2014年にスリの未遂にあった時は、よく晴れた正午の時間帯、しかも大通りのどまんなかで起きました。

スディルマン通りと連結するタムリン通りで。しかも白昼堂々です。幸運にもうまく撃退できたので、被害はありませんでした。その時の経験は、ブログでも書いたとおりです。

私が実際に体験したことをふまえ、「注意すべきこと」として次の4つにまとめて解説をしています。気になる方は、ぜひご覧ください。

(1) 常に警戒する
(2 )富裕に見える格好をしない
(3) 現地の人のように歩く
(4) カバンは無防備にさらさない。
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「可能な限りジャカルタでは歩道橋は使用しない」との呼びかけ

この点の犯罪は昔からあるもので、今回の大使館からのニュースを見ても、「いつまでたっても無くならないのだな・・・」と、悲しい気分になりました。

実際、いまでも日本大使館は、「可能な限り歩道橋は使用しない」と呼びかけていますし、駐在員たちの駐在マニュアルでも、その旨がルール化されているケースが多いようです。

でも、急成長を続けるインドネシア。長らく放置されてきた歩道橋にまつわる問題も、徐々に手がつけられているのが現状です。

「犯罪の抑制」という観点からはズレるかもしれませんが、今回は、最近の報道から見た「歩道橋の改善」について、いくつかの動きを簡単にご紹介したいと思います。

ジャカルタの「歩道橋問題」の改善に向けた、明らかな動き

長らく放置されてきたジャカルがの歩道橋問題。耐久性の観点だけでなく、治安の観点からも問題視されてきました。これらの問題に対し、ジャカルタ市としてはどのような対応を考えているのでしょうか。最近の改善の動きをご紹介します。

南ジャカルタ、パサールミングの歩道橋崩落事故

まず大きなニュースとしては、昨年、2016年9月24日に起きた、南ジャカルタ、パサールミングでの歩道橋崩落事故がありました。

3割は「危険な歩道橋」 ジャカルタ 老朽化で腐食、破損 | じゃかるた新聞 インドネシアの日刊邦字新聞

南ジャカルタ・パサールミングで24日、歩道橋が崩落、4人が死亡した事故は、築14年の歩道橋の老朽化が原因の一つとされる。ジャカルタ特別州内にある歩道橋は約320カ所で、その多くは老朽化が進んでいる。

「歩道橋の3割は危険な状態にある」と市民団体が警鐘を鳴らすように、記者が訪れた西ジャカルタの歩道橋も、不十分な補修による腐食や破損が目立った。歩行者のための環境改善を目指す市民団体「歩行者連合」によると、同特別州内の歩道橋の3割は、老朽化や周辺の環境などにより、危険な状態にあるという。

インドネシア現地メディアの報道を見ると、ジャカルタには、318の歩道橋があるようです。

ジャカルタの歩道橋にある広告看板の危険性

ただし「老朽化」という点以外にも、歩道橋に取り付けられた看板が強風に耐えられずに崩落した、との指摘もあがっていました。これについては、すぐに対処が行われ、すべての歩道橋の看板をチェックする流れに。

当初から看板の設置が想定されたもの、つまり構造的に看板が組み込まれたものであれば問題ないものの、後から追加で違法に取り付けられたものについては、耐久性の確保が問題だと。

Pemasangan Reklame di Sejumlah JPO Diduga Tak Sesuai Ketentuan – Kompas.com


     □     □     □

強風には耐えられない可能性があり、危険性に加えて、無許可で設置されていたということもあり、撤去すべきだとの流れになりました。

Pemprov DKI Akan Menghilangkan Papan Reklame dari JPO di Jakarta – Kompas.com


結果として、64の看板が撤去されることに。
Petugas Bongkar 64 Reklame di JPO – Kompas.com


ジャカルタの歩道橋、耐久性とメンテナンスの問題も

一方で、歩道橋の多くが、清掃やメンテナンスに手が付けられていないという問題も発覚。メンテナンスのための予算が確保されているのに、なぜかきちんと実施されていないということが問題視され、ジャカルタ州知事であるアホック氏が調査を命じる事態になっています。

老朽化により、耐久性に問題があると見なされた歩道橋については、撤去するように指導する動きも起きています。
(その歩道橋の管轄省庁が異なるゆえに起きている問題)

Dishub Jaksel Usulkan 2 Jembatan Penyeberangan Orang Ini Dibongkar – Kompas.com

ジャカルタの歩道橋に新規増設の動き

また、今年の1月に入ってからは、ジャカルタにおける歩道橋の新規増設の動きも始まりました。歩道橋の中には設置状況が悪く、利用されていない実態もあると。

例えば、入口部分の段差が高すぎる等の不便さゆえに、歩道橋があるにもかかわらず、無断で道路を横断する歩行者が後をたたないエリアもあると報じられています。

これについては、改善や補修を進めるべきと。
Kondisi JPO Jadi Salah Satu Alasan Masyarakat Menyeberang Sembarangan – Kompas.com

また、3月中旬には、ジャカルタにおける事故多発地帯、合計11ヶ所について、歩道橋の新規増設をすべきであるとの答申が出されています。

Pemkot Jakpus Usulkan Pembangunan 11 JPO di Titik Rawan Kecelakaan – Kompas.com

「放置」→「改善するように」の大きな変化

ここまで、ジャカルタの歩道橋に対して矢継ぎ早に対応策が練られている状況を、ざっと見てきました。

日本では「当たり前」のレベルかもしれませんが、いままで、あまり対応がとられてこなかった「歩道橋」について、次第に対応が早くなっているという状況は、一定の評価がされてしかるべき・・・という気がします。

昔のインドネシアからすれば、だいぶ進歩しているのな・・・というのが実感。

・少しでも整備していこう。
・少しでもルール通りの運用をしよう。

そうした動きが定着することで、「治安の悪い歩道橋」という点についても、次第に改善されていくのではないかと期待します。

「利用しない」で片付けるのか、きちんと意識して利用するのか

一方で、「ジャカルタの歩道橋は危ない」として「利用しない」という動き。

たしかに賢明とは思いますが、歩道橋を通じて初めて利用できる公共交通機関、「トランス・ジャカルタ」は、便利な交通手段です。

停留所の手前で待機するトランス・ジャカルタ
【写真:停留所の手前で待機するトランス・ジャカルタ】

★「トランス・ジャカルタ」についてはこちら。

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インドネシアの街や人々を理解する上でも、ぜひ乗ってみてほしい乗り物。

「歩道橋は危ない」として「利用しない」べきなのか、きちんと身の安全を確保する意識をもって対応すべきなのか・・・。このあたりは意見のわかれるところかもしれません。

ルールやモラルに甘んじない。無防備にならないということ

大事なことは、「身の安全はきちんと守る」という姿勢を、どれだけもつことができるか、ではないでしょうか? ルールやモラルに依存しきるのではなく、無防備にならないということ。

私自身、インドネシアで暮らしていて、日本人と思われる方々の行動を見ていると、たまにハラハラすることがあります。

無防備に、財布を大きく開いたままにしていたり、多額の紙幣を広げたり・・・なんて姿を見ることも。カバンを開けっ放しで歩いていたり、見ていて「大丈夫かな・・・」と思うケースも意外とあるのです。

「それじゃ、狙ってくださいと言っているようなものだよな」と。

どれだけ身を守るべきかのレベルの違い

長らく放置されてきた、歩道橋の問題。それに対して、少しずつ、でも急速に対応が取られるようになってきている現状があります。大事なことは、それに甘えることなく、また「インドネシアは歩道橋問題を放置してケシカラン」と嘆くことではなく、個人個人が相応の対応を取る、ということだと思います。

繰り返しになりますが・・・、「利用しない」というのが最も安全かもしれませんが、しっかり安全を意識すれば、便利な存在でもあります。

日本で暮らしていても、あまりに無防備であれば狙われます。
要は、どれだけ身を守るべきかのレベルが違うだけ。

私自身、歩道橋でのスリ未遂では、本当に心がすり切れるような思いをしました。だから被害者の方には察するにあまりあります。改善がさらにさらに進むことを祈るとともに、利用者として、最低限の身の守り方を考えることが改めて問われているのではないかと私は考えます。

というわけで、治安面で危険とされるジャカルタの歩道橋問題と、その改善への取り組みについてご紹介しました。

サムスル
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時の運と人の縁を極める日々の記録 】  渡邉 裕晃
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