「ゴジェック」(Go-Jek)や「グラブ」(grab)など、スマホを使ってバイクやタクシーが手配できるというのが「配車アプリ」サービス事業です。ものすごい勢いでく急成長する配車アプリ事業、そして既存の商圏を脅かされつつある旧勢力とのせめぎあい・・・。
昨日、12月17日の夜、インドネシアで衝撃的なニュースが流れてきました。インドネシア運輸省が、オンラインにもとづいて運営されるバイクタクシーやタクシーについて、その運営を禁止するというのです。「公共輸送機関としての規則を満たしていない」からという理由で。
でも翌日になると、一転して撤回する・・・という今回のインドネシアでの珍騒動。この背景には、いったいどんなことがあったのでしょうか。
「大統領のリーダーシップ」という観点からも、また「ベンチャー企業のイノベーション」という観点からも、インドネシア国内では、今後しばしば取り上げられるケースになるかな・・そう感じる出来事になりました。偶然、ネットで状況を逐一追うことができたので、時系列での流れをブログにまとめて共有したいと思います。背景には、いったい何があったのでしょうか?
目次
急成長する配車アプリサービス、インドネシアで突然の禁止命令が
【画像:CNNインドネシアの記事「政府は、オンライン型のバイクタクシーサービスの運営を公式に禁止へ」】
インドネシアでは、「Go-Jek」や「Grab Taxi」など、スマホのアプリを使って予約が可能なバイクタクシーやタクシーのサービスが急速に浸透しています。
それをいきなり禁止にするとの発表です。報道では、インドネシア運輸省幹部のコメントも紹介されていました。
Go-Jek, Go-Box, Grab Bike, Grab Car, Blue Jek, Lady-Jekなど、いかなる名前であれ、同種のサービスは運営が禁止される。 |
例えば、12月17日22:39時点でのCNNの記事、
Pemerintah Resmi Larang Layanan Ojek Daring Beroperasi(政府は、オンライン型のバイクタクシーサービスの運営を公式に禁止へ) |
また、同日21:24付で、有力メディアKompasが、このような記事を出しました。
Kemenhub: Apa Pun Namanya, Go-Jek, Grab-Bike Dilarang Beroperasi – Kompas.com(運輸大臣「いかなる名前でも、Go-Jek, Grab-Bike等は運営を禁止へ」) |
【画像:Kompasの記事「運輸大臣「いかなる名前でも、Go-Jek, Grab-Bike等は運営を禁止へ」】
翌日に発表された「禁止を撤回する」との発表
ところが事態は急転します。
翌18日の昼前になると、なんと!
「禁止を解除する」とのニュースが流れるのです。
なぜか急に解除されたと。
「引き続き運営してよろしい」との運輸省からの発表。
これは、11:18付の記事です。
Kabar Gembira! Menhub Jonan Cabut Larangan, Persilakan Go-Jek(嬉しいニュース!ジョナン運輸大臣が禁止を撤回、Go-Jekどうぞと) |
【画像:detik.comの記事「嬉しいニュース!ジョナン運輸大臣が禁止を撤回、Go-Jekどうぞと」】
え? なぜまた、こんな急に?
これは何かあるに違いない! と思って調べていたら、やはり出てきました。こんな続報が・・・。
ジョコウィ大統領の存在です。
ジョコウィ大統領のリーダーシップが背景か
あまりにも急に解除されることになった背景は、ジョコウィ大統領が、すぐに運輸大臣を呼び出したこと。
「Ojekは国民に必要とされている存在。国民を困らせてはいけない。禁止ではなく整備をすべき」
そう指示したことが影響しているとの報道でした。
たいていこういう内容のニュースの場合、伝聞や噂などが多くて確証が得られにくいわけですが、記事を見ると「大統領が自分でtwitterに書いている」とあるじゃないですか。
12/18の11:29付のニュース、
Jokowi Tanggapi Pelarangan Ojek lewat Twitter – Kompas.com(ジョコウィがバイクタクシー禁止についてtwitter経由でコメント) |
【画像:Kompasの記事「ジョコウィがバイクタクシー禁止についてtwitter経由でコメント」】
そこで実際にtwitterで探してみると、ありました。
大統領が、自らtwitterでコメントを出しています。
Saya segera panggil Menhub. Ojek dibutuhkan rakyat. Jangan karena aturan rakyat jadi susah. Harusnya ditata -Jkw
— Joko Widodo (@jokowi) 2015, 12月 18
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ゴジェック社は「生きてます」との喜びを発表
この騒動に巻き込まれるかたちになったバイクタクシー会社、「Go-Jek」側も同じように、twitterでコメントを発表。
「皆さんのご支持に感謝します。生きてます!」と投稿しています。
また、
ジョコウィ大統領。我々Go-jekの20万人の運転手、そして、800万人のアプリユーザーに対するサポートをありがとうございます。またインドネシアの力の基礎である国民経済を守ってくれて感謝します。インドネシアをさらに前身させましょう! |
との声明を発表していました。
Terima kasih yang sebesar-besarnya atas dukungan Anda semua. Hidup #KaryaAnakBangsa! #GoRakyat pic.twitter.com/Y8xlapnZnI
— GO-JEK (@gojekindonesia) 2015, 12月 18
ゴジェックCEOのナディム・マカリムも感謝のメッセージを発信
facebookでも、同社CEOのナディム・マカリム(Nadiem Makarim)が感謝のメッセージを出していました。
「これほどまでに、社会の人々から強固な支持が寄せられたことに、マネジメント一同、驚きを禁じ得ない・・・」と、半ば興奮気味にも。ある意味では、会社の存亡がかかっていたわけですから、これほどの喜びはないでしょうね。
Di bawah ini respon dari CEO GO-JEK Indonesia, Nadiem Makarim untuk dukungan yang diberikan oleh Bapak Presiden Joko Widodo.#KaryaAnakBangsa
Posted by GO-JEK on 2015年12月17日
Pengguna GO-JEK yang tercinta, baru saja Presiden Joko Widodo menjawab aspirasi kita semua dengan membatalkan keputusan…
Posted by GO-JEK on 2015年12月17日
インドネシア運輸省の会見から見る、歯切れの悪さ
真相は不明なところがありますが、なんだか、メンツを潰されたかのようにも見える運輸省。
11:45付のニュースで会見の様子が報じられていました。
Menteri Jonan: Silakan Pakai Ojek sampai Transportasi Umum Baik – Kompas.com(ジョナン運輸大臣:公共輸送手段が整備されるまではどうぞバイクタクシーを使ってください) |
【画像:Kompasの記事「ジョナン運輸大臣:公共輸送手段が整備されるまではどうぞバイクタクシーを使ってください」】
大臣は、現状として、公共交通機関が不十分である状況を認め、未整備と整備とのギャップを埋めてくれる存在として必要だとコメント。
ただ、
バイクを公共交通手段として使うことを禁じているもの、それは法律なんだよ。 |
と、少し言い訳?のようなコメントも。
同省スタッフも、
禁止するという文書はどこにあるっていうんだい? あるのは警察の交通隊に向けた「バイクは公共交通機関ではないよ」という文書、たったそれだけに過ぎないんだよ。 |
と、同じく歯切れの悪いコメントです。
公共交通機関が整備されるまでは、それまでの暫定的なものとして、バイクタクシーは運用されて良い、との判断です。
ジョコウィ大統領に見る「イノベーションとリーダーシップ」
また、その後、ジョコウィ大統領はボゴールの大統領宮殿で発言します。
いわく、「イノベーションを束縛するようなことがあってはならない」と。
12月18日の12:03付のニュース。
Jokowi Minta Inovasi Ojek “Online” Tak Dikekang – Kompas.com (オンライン型バイクタクシーのイノベーションは束縛してはならないとジョコウィ望む) |
【画像:Kompasの記事「オンライン型バイクタクシーのイノベーションは束縛してはならないとジョコウィ望む」】
スマホアプリにもとづく輸送手段は、公共輸送機関が最適化されていない状況下のイノベーションに値するものだとジョコウィ大統領は評価した。 |
と報じられました。
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さて、この一連の禁止騒動。
夜に禁止を発表し、えええ? と大騒ぎになって、翌日昼前には、もう前言撤回するという有り様・・・。そしてその解決の背景には、ジョコウィが急いで乗り出したことにあったと。
ジョコウィの人気上昇につながりそうで、なんだか「作り話」のようですが、実際のところはどうでしょうか。政治の裏舞台の真実がどこにあるかは、わかりません・・・。
大統領のリーダーシップという観点からも、またベンチャー企業のイノベーションという観点からも、今後よく取り上げられるケースになりそうです。
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もともとGo-Jek等のサービスは、その利便性や安価で安心できるところから人気を得て、既存の業者から顧客を奪う状況にありました。
そうした観点から、禁止に向けた圧力はあったはず。
ただ、既存業者の不満があるからといって、それだけの理由だけで、すぐに禁止へということは考えにくく、今後の内情についての情報が待たれるところです。
以上は、12月18日夕方時点の情報でまとめました。
今後また真相などが明らかになってくるかもしれませんが、また進展があれば、ブログで共有したいと思います。
【参考】急成長するインドネシアの配車アプリサービスに関するブログ記事
急成長するインドネシアの配車アプリサービスに関するブログ記事をまとめました。こちらも、ぜひどうぞ。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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