いま「個人で会社を買う」という手法に注目が集まっています。今まで「会社を買う」というと・・・「M&A」とか「買収」という言葉からイメージされるように、何億円、何十億円という大きな案件が想起されがちでした。でも、最近では「小さな会社」や「小さな事業」についても、売買の対象となってきています。
それこそ1000万円前後とか、時には数百万円だったりと。私自身、過去に2度の事業買収を行った経験がありますが、いずれも1000万円前後で手に入れることができました。実際に私の知人のケースを見ると、数百万円というケースもあります。まさに「個人で会社を買う」ということが可能なのです。
では、会社を買うことにはどんな魅力があるのでしょうか? 今回は「個人で会社を買う」ということ、「小さな会社を買う」ということのメリットについてまとめてみます。
目次
小さな会社を買う、そのメリットとデメリット
とはいえ「会社を買う」というケースは、なかなか身近にあるものではないと思います。メリットについて考える前に「そもそも会社を買うって、そんなに簡単にできることなの?」と思う方も多いでしょう。
どんな会社にも歴史があり、その事業をつくった人があり、運営しているスタッフたちがいます。取引先もありますし、お客様もいる・・・。事業は人で成り立っているものであり、かかわるすべての人たちの「人生の一部」がかかっているといっても言い過ぎではありません。
したがって、実際に手に入れることができても、運営上の課題や問題も発生します。経営についてのノウハウや経験、関連する人脈も欠かせませんし、時には胆力を要するような場面も出てくるでしょう。つまり「会社を買う」ということには、メリットだけでなくデメリットもあるということです。それを踏まえた上で、今回のブログでは「メリット」についてのみを取り上げている、ということをご理解いただければと思います。
小さな会社を買う6つのメリット
私が考える「小さな会社を買うメリット」は、次の6点です。特に、個人が会社を買う場合、あるいは零細企業が会社を買う場合を想定しています。
(1)稼働中のビジネスが手に入る
(2)顧客基盤が手に入る
(3)取引先が手に入る
(4)スタッフが手に入る
(5)表に出てこない独自ノウハウが手に入る
(6)人生の可能性が広がる
私自身も、2つの事業買収の経験から上記6点のメリットを感じることができました。順番に解説していこうと思います。
(1)稼働中のビジネスが手に入る
これは本当に大きなメリット。すでに稼働中の事業がいきなり手に入るということは、新たに事業を生み出すという「ゼロイチ」のリスクが回避できるということ。
会社でも事業でも、新しく立ち上げようとすれば、様々な準備が必要ですよね。調べること、考えること、準備することがたくさんあります。時間もかかります。お金もかかります。それだけ時間とお金をかけて準備しても、なかなか立ち上がらない・・・というのはよく聞く話。
しかも、ようやく立ち上がった!と思っても、なかなか数字にならなくて悪戦苦闘する・・・とか。新しい事業を始めるという、いわば「ゼロからイチをつくりあげる」ということにはたくさんの苦労と困難がつきまといます。
でも、すでに稼働中のビジネスを買うということは、それだけの時間をお金をショートカットできてしまうということ。このメリットは非常に大きいはずです。私自身、2つの事業買収を経て感じたのがこれでした。「一から自分で立ち上げた事業ではないのに、自分の事業になっている・・・」。これは本当に不思議な感覚でした。
(2)顧客基盤が手に入る
実際に動いているビジネスを買うということは、お客様のネットワークが手に入るということです。どんなビジネスであれ、新たにお客様を集めてくる、新規顧客を発掘するということは本当に大変なこと。
一般的に「営業」というと悪いイメージがつきものですが、それというのも「お客様を増やす」ということがいかに大変か・・・ということの裏返しかもしれません。でも「会社を買う」ということ。稼働中の事業、毎日毎日注文が入ってくるビジネスを新たに手に入れると何が起きるのか。
新しくお客様を探し出すという大変な努力をしなくても、昨日までのお客様がリピートの注文をしてくれるのです。昨日までスタッフがやってくれていた営業努力の蓄積のおかげで、今日また新たな注文がやってくる・・・ということです。これは実際に「会社を買う」をやってみると感じることですが、これも本当に不思議な感覚なんですよ。
(3)取引先が手に入る
どんな事業にも、取引先があります。モノの販売であれば、どこかの会社から仕入れを行う必要があります。サービスの提供だとしても、そのためには準備が必要。つまり取引先との円滑な商取引があってこそ、初めて事業がまわるわけです。
これが新たにビジネスをたちあげるとなると、どこから仕入れようかという調査が必要です。仕入れたい先が決まっても、いきなり取引をしてくれるかわかりません。「初回取引だから前金で・・・」なんて言われることもあるでしょう。毎月のように注文を重ねて、信頼関係を築くことによって、ようやく「後払い」が認められる・・・というような業界もあるでしょう。
でも「事業を買う」と、いままでに長く積み重ねられた取引関係が、そのまま活きてくるのです。もちろん「買収」となれば、取引先が警戒をすることもあるかもしれません。「新しいオーナーは、どんな人なんだろう?」とか。もちろんケースバイケース。
実際私が事業を取得した後、メインとなる取引先には、訪問をしてご挨拶をして回りました。なぜ買収をしたのか、今後どうしていきたいか・・・などをお話すると「安心しました。これからもよろしくおねがいします」と取引条件を継続してくれた先がほとんどです。
中には「今まで本当にいい動きをしてくれて感謝しているんですよ、これからにも期待しています」なんて言ってくれた社長さんも。そう、その「今まで」というのは私が関与していない時期のことです。会社を買うと、その会社がやってきた実績が引き継げてしまうのです。自分でやった業績ではないのに。よくよく考えれば「あたりまえ」かもしれませんが、でもちょっと不思議な感じがしませんか?
(4)スタッフが手に入る
おこがましい表現ですが、事業を買うとスタッフが手に入ります。その事業を運営するのに精通したスタッフたちがごっそりと。と言っても、これまたケースバイケース。事業によっては、買収にともなって去るという人もいるでしょう。新しいオーナーに対して疑心暗鬼になる人もいるでしょう。
私が買った2つの事業のうち、最初の1つ目は担当スタッフが1名だけの小さなビジネスでした。そして、私たちのところに移籍はせず、ビジネスの運営を一定期間かけて私たちに引き継ぐという契約でした。なので、この場合は「スタッフが手に入る」には該当しません。でもこの「一定期間」の間、本当に親身になって引き継いでくれました。取引先のこと、お客様のこと、また事業を回す上でのポイントなど。それを思えば「スタッフが手に入る」メリットに相当したと感じます。
また、2つ目に手がけた事業にはスタッフが6名いました。若いメンバーしかいないビジネスなので、溶け込むのに時間はかかりませんでした。定期的に現場に通い、現場の作業を手伝いながら、交流につとめました。
「今まで事業計画を聞いたこともない」とのことだったので、なぜ買ったのか、どういう関係性で譲り受けたのか、という話だけでなく、なぜこのビジネスに魅力を感じたのか、今後どうやって伸ばしていきたいのか・・・などの話もさせてもらいました。仕事にほこりをもっていて、本当によく活躍してくれました。
そもそも事業をイチから立ち上げるとなれば、必要な人材をどうするか・・・という問題は非常に大きいです。人を育てるにも時間がかかります。事業を買うと、それが一気にショートカットできてしまうのです。
(5)表に出てこない独自ノウハウが手に入る
実際に動いているビジネスであれば、その会社やその事業にしかない独自のノウハウがあるものです。それも手に入ってしまいます。
新たに事業を立ち上げる場合、調べる、考える、経験者を連れてくる・・・など、さまざまな知識や知恵、経験やノウハウを投じて準備が行われます。そして実際に事業が動き始めてからも、現場の日常の中から課題が出てきて、それをヒントに「改善」が行われてきます。その繰り返しの中で、その会社にない強みや独自性が培われていくものです。
それがいきなり手に入ってしまう・・・。私自身も、事業を手に入れる前段階で様々なことを調べますが、実際に事業を手に入れた後に「へぇ、こうなっているのか!」と驚かされたことはたくさんあります。「こういう仕組みで利益を生み出しているのか!」とか、「ここには、こんな仕掛けがあったのか!」とか。
勉強して、経験して、アイディアを出してつくる・・・という段階をすっとばして、「長年の蓄積からくる工夫や独自性」がいきなり「目の前にある」という状態です。実際にスタッフと行動をともにしながら、「こういう時って、どうするのがいいんだろう?」って質問したことがあります。
するとスタッフが即答したのは「あぁ、そういう時は、こうして対処します。実はマニュアルを途中まで作っていて・・・、これです」って。「おぉ、そんな風に対応するのか・・・」と感心させられたこともあります。イチから体制構築するとなると時間もかかるし大変だろうなと思った瞬間です。
(6)人生の可能性が広がる
メリットには様々なものがありますが、最後の一点をあげるとすると「人生の可能性が広がる」ということ。「言い過ぎでは?」と思うかもしれませんが、振り返ってみると、事業を買うということは、人生の可能性も広げてくれるなと感じます。
小さな会社や小さな事業であっても、それを実際に買うということは、あなた自身がそのビジネスのオーナーになるということ。どんなに小さな規模であろうとも、周りから見れば、会社のオーナーであり、事業のオーナーであるわけです。人の見る目が変わります。
私が手に入れた1つ目のビジネスは、ダンボール通販を手がけるECサイトでした。買った瞬間、何が起きるのか。今までダンボールの素人であった私でも、取引先に行けば「ダンボール業界の経営者」です。実際に購入し、しばらくの期間にわたって運営していた時、取材の依頼が来ました。東京のFMラジオ放送局「J-WAVE」からの連絡で「ダンボール特集をやるので、専門家として出演してくれないか?」と。
事業のオーナーになると、もうその瞬間に、その業界での専門家になります。新たに名刺も作りますよね。それを渡した時の相手の反応は、今までのあなたとはまた違った視線を受けることもあるはずです。今までの知り合いの視線・・・だけでなく、そのビジネスをもっているがゆえに出会える新たな世界もあります。
人の見る目が変わるということ。もちろん責任も増えます。その道のプロにならなくてはいけないという意識も必要です。従事しているスタッフがいれば、よりよく仕事に尽力してくれるにはどうしたらいいかという責任も増えてきます。でも反面で、その分野での交流が広がるということです。人生の可能性が広がると言ってもいいでしょう。
そのビジネスを持っているということで、知人や関係先の方々にも、もっとサービスを提供できるかもしれません。そのことで喜んでくれる人もいるはずです。世界の見え方も変わってきます。新しい可能性が、今まで以上に生み出しやすくなる・・・とも言えるのではないでしょうか。
メリットや可能性だけでなく、デメリットも考えよう
以上、大雑把ではありますが、私が考える「小さな会社を買うメリット」を6点ほど解説してみました。あくまでも、個人が会社を買う場合、あるいは零細企業が会社を買う場合を想定しています。
(1)稼働中のビジネスが手に入る
(2)顧客基盤が手に入る
(3)取引先が手に入る
(4)スタッフが手に入る
(5)表に出てこない独自ノウハウが手に入る
(6)人生の可能性が広がる
いろいろなメリットもありますが、会社を買うということには相応のリスクもあります。
ほしい会社があったとしても売ってくれるかわかりません。手に入れることができたとしても、スタッフがついてこないリスクもあります。買収に成功しても、ふたをあけると「えーっ」と思えるような発見が出てくるかもしれません。「事業を経営する」ということには、さまざまな課題もあるでしょう。「会社を買う」ことにはいろいろなリスクがあります。
「会社を買う」は、チャレンジしがいのある選択肢
上記6つの点だけを見ると「会社を買う」ことがバラ色の進路に映るかもしれませんが、今回はあくまでも「メリット」という可能性のみに注目して書いているという点をご理解いただければと。
でも「起業家」体質の私としては、「チャレンジしがいのある選択肢だと思いますよ」とも言っておきたいと思います。
なお、「どうやって会社を探せばよいの?」という方には、こちらの記事をどうぞ。無料で登録できる会員サービスとして、「会社を売却したい」という案件の一覧を見ることができるWEB上のプラットフォームもご紹介しています。
オススメ書籍「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」
「会社を買う」ということ自体は昔から行われていること。でも「300万円とか500万円というような金額でも会社が買えるんですよ」「個人でも企業買収を検討してみては?」と提唱したのが2018年4月に出版された書籍「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」でした。
こちらもオススメです。
また、近年のM&A案件の急増は、一時的なブームを超えて、本格的な時代の転換点を告げるものだと感じています。こちらもどうぞ。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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