「6割以上の経営者が70歳を越え、半数の企業で後継者不在」
こんな衝撃的な内容を取り扱っているのが、『週刊ダイヤモンド』1月27日号の特集記事。「廃業 or 承継 大量廃業時代の最終決断」です。
この「事業承継とM&A」というテーマは以前から話題になってきたことなので、急に最近になって問題化したテーマというわけではありません。でも、何も手がつけられないまま、今日に至っている・・・という側面もありますね。
この「中小企業の事業継承問題」に対して何ができるのか、どんな対策と処方箋が考えられるのでしょうか? 私自身の体験をふまえてまとめてみました。
目次
週刊ダイヤモンドの「廃業 or 承継 大量廃業時代の最終決断」記事の衝撃
記事には、こうあります。
経済産業省が衝撃的なシナリオを提示した。日本の企業の3社に1社、127万社が2025年に廃業危機を迎えるというものだ。このまま廃業問題を放置すると、雇用650万人、GDP22兆円が消失してしまうという。
東京商工リサーチによれば、廃業する企業の約半数が経常黒字なのだという。優良企業が大量に退出してゆく姿は異様にも映る。事業がジリ貧になっているわけではなく、後を受け継ぐ者がいないため、仕方なく廃業を選ぶ経営者が増えているのだ。
廃業or承継(週刊ダイヤモンド特集BOOKS Vol.398)――大量引退時代の最終決断
事業承継は「現場」を見てこそ、その深刻度がわかる
私自身、日本に住んでいた頃には14年ほど会社を経営してきました。中小企業ですから、中小企業の社長さんとのつきあいも多く、いろいろな会社を見てきました。
新進気鋭のベンチャー企業だけでなく、二代目、三代目と引き継がれてきた古くからの中小企業もあります。また、後継者についての問題をかかえ、どうしたらいいか考えあぐねているという経営者にもたくさん出会いました。
今まで、そういう現場を見てきただけに、この問題は本当に奥深いテーマだなと感じます。そして、少子高齢化が進展していくにつれて、この問題はますます大きな問題になってくるはずです。
この問題に対して、一人ひとりがどう立ち向かっていくべきか。あるいは、どう対処していくべきなのでしょうか。
事業承継の理解は、まずは「現場」を見ること
難しい問題ですが、私が思うのは、とにかく現実を知ること。経営について知ること。事業の継承とは何か、そこにはどんな問題があるのか。これらをとにかく知ることから始まるのだと考えます。
今まで、あまり語ってきませんでしたが、私が会社を経営している時も、事業承継で悩む会社の社長さんに出会ってきました。地方の中小企業だったり、地元の名士とされる二代目、三代目の社長さんだったり。皆さん、本当に悩ましい課題を抱えていらっしゃるなと、心の底から感じました。
それこそ、自分でベンチャー企業を起業する方が、よっぽど楽なんじゃないかと思うほどです。
でも、会社をどう継いでいくべきか。親族に承継するのか。あるいは社員の誰かに? あるいは第三者への事業譲渡として引き継いでもらうという道もあります。もちろん、閉じるという選択もあるでしょう。
これらはもちろん大変な問題なのですが、でも14年も経営してくると、それなりに見える世界もあって。
ケースバイケースですが、お話を聞かせていただきさえすれば、私なりに処方箋、あるいは方向性をご提示することなら、ある程度はできる自信があります。
根深い事業承継の後継者問題・地方の高齢経営者が述懐してくれたこと
それはなぜかと言えば、たくさんの現場や実際の状況を見てきたから。経営者同士であってこそ話せるということがあるんですよね。
例えば、ある地方の高齢の経営者が、私に語ってくれたことがあります。
「本当は息子につがせたいんだ。でも・・・うちの息子を見ていて、なんとなくわかるだろう? 心配なんだ。君は若くして起業をしたよね。うちの息子を見てどう思う? 経営者としての、正直な感想を聞かせて欲しい」
本当に切羽詰った問いでしたよ。おそらく30年近くも年齢が離れた私に質問をしてきたのです。息子さんよりも若い、この私に。
なんでそういうことを聞くのか。そういう背景も含めて、すごく伝わってくるものがあるんです。それは現場に触れているとわかること。また実際に、会社を経営する中で、見えてくるものなんですよね・・・。
だからこうした記事を見ると、「私にできることであれば、どんどん相談してほしい! 協力させて欲しい!」って、心の底から思います。
「事業経営」というナマの経験は、大きな突破口を生み出せる!
この問題は、これからますまる広がる問題だろうと思います。私としても、この問題の解決に向けて、何らかの強力ができればと思い、いろいろ模索をしているところです。(だから、インドネシアを主に扱うブログであるにもかかわらず、あえてこのテーマを取り扱っています)
何らかの関わりが持てないだろうかと思い、2017年5月にはFP2級とAFPを取得し、2017年10月には宅建士資格を受験して合格しました。
難しいんですけどね。でも「現場」に触れる機会が多い中小企業の経営者であってこそ、この問題に立ち向かうことができるんじゃないかなと思います。
私の経験上、M&A仲介会社の社員さんよりは、それなりの経営経験を積んできた社長さんの方が、よほど信頼がおけます。だって、背負っているものの責任やら重みやらを考えれば、もう、とんでもなく次元の異なる問題なんですから。
・・・というわけで、結論のないブログになってしまうのですが、この問題、私はとても危機感を持っているし、なんとか協力したい! とも思っています。そういう問題意識をもっているということだけでもお伝えしたく、あえてブログを書きました。
「事業承継・M&Aエキスパート」という検定試験
この手のテーマの検定試験はあるんですよ。例えば、日本M&Aセンターと金融財政事情研究会が共同で実施する「事業承継・M&Aエキスパート」など。
【追記】その後、検定名は「金融業務2級 事業承継・M&Aコース」に変更になりました。
「事業承継・M&Aエキスパート」の内容や問題、難易度や勉強方法については、こちらにまとめてあります。
もちろん、こういう試験の勉強をすることも有益ですが、私が最もオススメしたいのは、やはり現場体験。そして経営体験です。「経営」ってホントに奥深い世界で、突き詰めたらキリが無いですよ。
偉そうな発言かもしれませんが、わずか14年だけの経験だけでも、見えちゃう世界があるんです。だから、もっともっと長い経験をおもちの全国の中小企業の社長さんの知恵こそが、この難局を解決するためのキーになるんじゃないかなと思います。
また私自身、この経験をうまく活かせる方法が無いかな・・・と、これからも模索を続けたいと思います。
対話スタイルでわかりやすい「事業承継が0(ゼロ)からわかる本」
また、この分野でオススメの書籍も1冊ご紹介しておきます。
この本「事業承継が0(ゼロ)からわかる本」は、最近読んで、入門者向けにとても良い本だな・・・と感じた一冊。事業承継やM&Aについて、その内容や実態、メリットなどを概観するにはオススメです。
事業承継の問題を抱えた経営者と、コンサルタントが対話をするスタイルで書かれていて、とても読みやすい本です。
中小企業の買収と事業承継にチャレンジしてみたいなら
また、実際に中小企業の買収にチャレンジしてみたいという方は、実際にM&A会社に接触してみることをオススメしています。でも「実際に接触する」ことのハードルが高いとお感じの方も多いと思います。そういう方には、ウェブ上のM&Aサイトへの登録をオススメしています。
M&Aのマッチングプラットフォーム、Batonz(バトンズ)
まず1つ目に紹介するのは、M&Aのマッチングプラットフォーム「Batonz(バトンズ)」です。元々は2018年10月にスタートしたM&Aマッチングサービス「&Biz」が前身です。
2019年6月末時点の会員数は28,000人。譲渡案件の掲載数は1000件を超え、成約した案件の数は200件を超えているようで、国内最大級のネットマッチングプラットフォームと言われています。
「誰でもどこでも簡単に自由にM&Aが出来る社会を実現する」という企業理念をもつ会社で、母体は東証一部企業で知られる株式会社日本M&Aセンターです。私自身も、何度か訪問させていただいたことがあります。提携企業数も多く、規模でも信頼度でも抜群と言えるでしょう。
「会社を買いたい」人は、ユーザー登録をすることで「売り情報」の新着情報が得られるだけでなく、オンライン上のマッチングも無料でできるという仕組みになっています。100万円台からの小規模M&A案件があり、「会社を買う」というかたちで、わずか数か月でスピード起業を果たしたという実績もあるそうです。また、交渉可能な案件も、常時500件程度はあるとのことでした。
また逆に「会社を売りたい」「跡継ぎを探したい」という人も、ユーザー登録をすることで、購入希望者とのマッチングに進むことが可能になります。業績が悪い会社の場合、「うちのような会社では、誰も引き受けてくれないのではないか?」と心配する経営者も多いでしょうが、赤字企業や債務超過であっても成約できた実績もあるそうです。
M&Aのマッチングプラットフォーム+仲介の、スピードM&A
2つ目にご紹介するのは、マッチングサイトとM&A仲介という2つのサービスが統合した形のハイブリッド型M&Aプラットフォーム「スピードM&A」です。
2018年11月に創業した株式会社スピードM&Aが運営しています。本サイトも「買い手」と「売り手」の双方が、無料で会員登録することができるようになっています。
規模や業種を問わずあらゆる案件が取り扱われており、現在のところでは、譲渡価格で100万円未満から30億円規模の案件までが扱われているようです。
新しい後発のサイトですが、より幅広く売り事業の情報を探したいという方や、より広い可能性をもとめて売却の相談をしたいという企業であれば、登録をしてみてはいかがでしょうか。
購入希望の側であれば、希望すれば非公開案件の紹介や、仲介業務の案内も受けることができるようです。また売却希望の側であれば、毎月10社限定で無料の企業価値算定も実施されているようです。
テレビCMで有名なビズリーチ社のビズリーチ・サクシード
3つ目に紹介するのは、テレビCMでも有名なビズリーチが運営する事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」です。
サイトの規模は日本最大級で、売り手企業様(譲渡案件)は常時2,300案件、買い手企業は5,100社が登録しているという状況です。
「ビズリーチ・サクシード」が同類サービスと異なるのは、質の維持にこだわっているという点です。
まず、売却情報は外部に非公開となっています。「当たり前でしょう?」と感じるかもしれませんが、プラットフォームによっては一部の情報に限定して公開しているところがあります。Google検索にも引っかかる可能性があるという状態です。
それに対して「ビズリーチ・サクシード」は登録ユーザーにしか情報を開示しないという設計です。Google検索で引っかかることがなく、「会員登録しないと得られない情報」が集まっているということです。
また、買い手は法人に限定されており、個人では会員登録ができません。一定の審査を通過した企業でないと会員になれないという制度のため、売り手企業としては、より安心して情報を開示しやすくなるという傾向があるようです。
なお買い手として登録する場合、通常プランであれば「成約時のみ手数料発生」となっています。しかし月々利用料が発生する有料プランもあり、それだけ真剣に売り手企業を探している会員企業があるということです。この点も、売り手としては安心材料になりますよね。
こうした結果「ビズリーチ・サクシード」には良質な案件が集まりやすくなるのではないでしょうか。
M&Aのマッチングプラットフォーム、TRANBI(トランビ)
4つ目にご紹介するのは、事業承継・M&Aプラットフォームの「TRANBI(トランビ)」です。2011年7月にスタートしたM&Aプラットフォームです。会社や事業を譲りたい人(売り手)と、引き受けたい人(買い手)をインターネット上でマッチングするウェブサービスになります。
中小企業のM&Aが非常に少ない背景として、M&Aの仲介手数料が非常に小さい点にあると気づいた創業者が、「ネットを活用してコストダウンすれば中小企業のM&Aが活性化するはず!ということから誕生したようです。
2019年1月にはユーザー数が20,000人を突破。2019年2月にはマッチング数で10,000件を突破するまでの規模になっています。数億円以上の規模の会社のM&Aから、数百万円程度のウェブサイトの売買まで、案件は多岐に広がっているとしています。
「買い手」としては、成約するまで手数料が無料、新着案件がメールで届くとシンプルで、常時1000件以上の案件数があるというのが特徴です。料金は、サイト利用料、マッチング、交渉メッセージのすべてが無料。成約時かかる成約金額の3%のみで、完全成功報酬制となっています。
2019年1月現在では、1つの案件に対して平均10日以内に平均11社の買い手からの申込が届く状況のようで、活発な状況がうかがえます。
中小企業M&Aに特化したマッチングと交渉支援、M&Aナビ
続いては5つ目です。M&Aのマッチングから、M&Aの契約締結作業までを一貫してオンラインで行うというのが、株式会社ALIVAL(アライバル)が運営する「M&Aナビ」です。会員登録は無料です。
2018年12月にスタートしたサービスです。個人投資家やM&A未経験者を丁寧にサポートするところに特徴があり、同社によれば「これまで転職か起業しかなかったキャリアに「自ら会社を買って経営者になる」という選択肢を確立したい」としています。
また、2020年4月からは「M&Aサポートプログラム」をスタート。内容は、M&Aによる事業買収を支援する教育プログラムです。これを受講した上で「M&Aナビ」を経由して事業買収を行った場合、支払済みの受講料金が成約時の手数料に充当されるようになっています。初心者をサポートしたいという同社ならではのこだわりと言えそうです。
中小企業に強いM&A仲介会社、FUNDBOOK
また、M&A仲介会社は増えているようで、中小企業のM&A仲介に強みをもつという会社も表れています。そのひとつが株式会社FUNDBOOK(ファンドブック)が運営するサービスです。
こちらも「会社を売却したい」という案件の一覧を見ることができるWEB上のプラットフォームになっています。
会社を買いたいなら、ぜひ無料サービスに登録しよう
こうしたM&Aサービスは、他にもいくつかありますが、無料で登録をすることが可能なので、中小企業の買収に少しでも関心のある方は、ぜひ登録をされてみると良いと思います。
私自身、2件の買収をしてことがありますが、こうしたサイトから情報を得る中で得られたノウハウや情報も多かったです。なお会社の探し方について、具体的なところは以下のブログにまとめてみたので、興味のある方は参考にしてみて下さい。
事業承継や事業売却の相談をするなら
また逆に「事業承継や事業売却の相談をしたい・・・」という方には、本当に信頼できる経営者仲間に相談をしてみることをオススメします。前述の通り「経営の現場」がわかるのは、長年の経営経験をもち、自らリスクを賭けて戦ってきた経営者だからです。
その上で、次の段階として、M&Aの実務や専門家に相談をしてみることをオススメしています。いろいろな会社があって、どの会社に相談をしたらいいかわからない・・・という方も多いはず。相談先の探し方にはいろいろありますが、例えば「買い手は、こんなふうにして購入先を探しているんだな」とわかる会社がいいですね。
そういう意味では、先ほど紹介した「ビズリーチ・サクシード」のような、「会社を売却したい」という案件の一覧を見ることができるWEB上のプラットフォームに登録してみて、どのように購入先を探しているかを確認してみるのは一つの方法です。
「事業承継」の相談を無料で受ける窓口もあるので、もし上記プラットフォームを見てから相談先として納得できそうであれば、「事業承継」相談を申し込んでみると良いのではないでしょうか?
売上高1億円以下の事業売却プラットフォーム「リ・バース」
また、中堅・中小企業に特化したM&A仲介会社も増えてきています。例えば、おもに売上高1億円以下の企業や事業を専門に扱う、事業売却のプラットフォーム「Re・Birth」(リ・バース)というサービスです。
BrozGroup株式会社が運営するもので、オンライン上で企業や事業の売り手と買い手とが、直接、交渉できるという仕組み。交渉が進めば実名での交渉をスタートさせることができ、リアルタイムのチャット機能で不明点の確認や相談ができることを特徴としています。
インテグループ株式会社のM&A仲介サービス
また、「実質的な営業利益が1,000万円以上ある会社であれば、売上1億円以下でも対応可能」というのが、インテグループ株式会社のM&A仲介サービスです。同社のサービスの場合は、着手金0円!中間金0円!成立するまで0円!完全成功報酬制となっているようです。
「中小企業の事業継承と後継者問題」は、日増しに注目されるテーマ。相談に乗ってくれる会社も増えているようなので、いくつかを比較検討しながら、相談先をじっくりと考えてみるのがオススメです。
■このテーマに関連するブログ記事です。
また、近年のM&A案件の急増は、一時的なブームを超えて、本格的な時代の転換点を告げるものだと感じています。こちらもどうぞ。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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