何気なく読んでみた、有島武郎の短編小説「小さき者へ」。ズバリ、実に素晴らしい作品でした。子育てパパは必読ですよ。ずばり、100年以上に渡って通用する、まさに衝撃作品です。
小学生くらいまでのお子さんをお持ちの「子育てパパ」なら、深く深く、胸に突き刺さるものがあるはずですよ。「小さき者へ」未読の「子育てパパ」は、今すぐ読むべし!です。今回は、4つのオススメポイントをご紹介します。
目次
有島武郎「小さき者へ」を子育てパパにオススメする4つの理由
先日、あるコンサルタントが書いた、いわゆる知的技術本を読んでいた時、そこに「小さき者へ」の引用があり、原書が気になって読んでみたのです。
母を失った3人の子どもたちへ贈る父からのメッセージ。今から約100年前、1918年(大正7年)に発表された作品です。
生きることの意味、そして家族がもつ愛情の重み・・・。何気なく読み始めたのに、惹きつけられるように読了。紡ぎだされる深みある世界、なんという名文。とにかく名文。本当に名文・・・。有島武郎、恐るべしです。
小さき者へ[Kindle版]
有島 武郎 2012-09-27
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短い作品で、すぐに読み終わります。しかもkindleなら無料でダウンロード可能。子育てパパなら、騙されたと思って、ぜひ読んでみてください。
主なオススメポイントは、次の4点です。
(1)とにかく短い。すぐ読める。kindleなら無料! (2)とにかく名文。とんでもない名文たちに震えます。 (3)生命の尊さが直球で胸に迫ります。 (4)自分の子供たちへのメッセージを考えたくなります。 |
とにかく短い。すぐ読める。kindleなら無料!
どれくらい短いかと言うと、amazonによると「紙の本の長さ: 12 ページ」との記載。短いのですぐに読めます。
そしてKindleダウンロードなら無料。著作権の関係で、無料で開放されているのです。
なお、kindleではなく紙の本で読みたい場合は、こちら。
小さき者へ・生れ出づる悩み (新潮文庫)
有島 武郎 新潮社 2003-03
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とにかく名文。とんでもない名文たちに震えます。
私の駄文で説明し尽くすことができないほどの名文。
もう、はじめから終わりまで、ずーっと名文なのです。
「前途は遠い。そして暗い。しかし恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け。勇んで。小さき者よ」
あぁ、なんという名文なんでしょうか。
名文に触れることの快感を味わうことができます。
それでいて難しくありません。イメージが映像のように出てきます。
生命の尊さが直球で胸に迫ります。
親と子の意味と役割。父とは何か、母とは何か。親子のつながりとは・・・。
生きるとは何か、生命の貴重さ。
そうしたことが、自然と伝わってきます。もうズシンと来ます。
名文とその行間とが、生命の尊さを読む者に強く強く伝えてくるのです。
自分の子供たちへのメッセージを考えたくなります。
この作品は、父が3人の子に伝えるメッセージというスタイル。読んでいくうちに、自然と自分の子どもたちのことに思いを馳せるようになります。嫌でもそうなります。
そして、実際に書くかどうかは別にして、子どもたちにどのようなメッセージを残そうかと考えたくなるはずですよ。
「小さき者へ」は子育てパパ必読の名言本!!
正直なところ、私は有島武郎「小さき者へ」を実際に読んでみて、本当にびっくりしました。こんなすごい作品があるのか!! と。
100年前に書かれたものですが、子を思う親の思い。
歴史の古さを全く感じさせません。優れて現代的なテーマ。
冒頭に書いた通り、きっかけは、あるコンサルタントが書いた知的技術本。その引用が気になって読んでみることにしたわけですが、本当は、興味本位に少しだけパラパラと見てみようと思っていただけでした。
ところが、どんどん吸い寄せられて・・・、読み進めるごとに、「すごい、すごい!」と盛り上がり、ずっと引きつけられ続けて、最後まで行ってしまったという次第です。
有島武郎「小さき者へ」の名言の数々とYoutubeによる朗読!!
というわけで、有島武郎「小さき者へ」について、ご紹介してきました。
子育てパパは、全員読んだほうが良いです! というくらい、私にとっては衝撃の名作でした。子供を見つめる視線。共感できるところが本当にたくさんありました。ぜひオススメです。
なお、私が印象に残って線を引いた部分は次のとおりです。参考までにご紹介します。
お前たちは遠慮なく私を踏台にして、高い遠い所に私を乗り越えて進まなければ間違っているのだ。
お前たちをどんなに深く愛したものがこの世にいるか、或はいたかという事実は、永久にお前たちに必要なものだと私は思うのだ。 昼過きになると戸外の吹雪は段々鎮まっていって、濃い雪雲から漏れる薄日の光が、窓にたまった雪に来てそっと戯れるまでになった。 大きな天と地との間に一人の母と一人の子とがその刹那に忽如として現われ出たのだ。 その熱い涙はお前たちだけの尊い所有物だ。それは今は乾いてしまった。大空をわたる雲の一片となっているか、谷河の水の一滴となっているか、太洋の泡の一つとなっているか、又は思いがけない人の涙堂に貯えられているか、それは知らない。然しその熱い涙はともかくもお前たちだけの尊い所有物なのだ。 私は自分の弱さに力を感じ始めた。私は仕事の出来ない所に仕事を見出した。大胆になれない所に大胆を見出した。鋭敏でない所に鋭敏を見出した。言葉を換えていえば、私は鋭敏に自分の魯鈍を見貫き、大胆に自分の小心を認め、労役して自分の無能力を体験した。私はこの力を以て己れを鞭ち他を生きる事が出来るように思う。お前たちが私の過去を眺めてみるような事があったら、私も無駄には生きなかったのを知って喜んでくれるだろう。 私たちはそのありがちの事柄の中からも人生の淋しさに深くぶつかってみることが出来る。小さなことが小さなことでない。大きなことが大きなことでない。それは心一つだ。 この悲しみがお前たちと私とにどれ程の強みであるかをお前たちはまだ知るまい。私たちはこの損失のお蔭で生活に一段と深入りしたのだ。私共の根はいくらかでも大地に延びたのだ。人生を生きる以上人生に深入りしないものは災いである。 私はお前たちを愛した。そして永遠に愛する。それはお前たちから親としての報酬を受けるためにいうのではない。お前たちを愛する事を教えてくれたお前たちに私の要求するものは、ただ私の感謝を受取って貰いたいという事だけだ。お前たちが一人前に育ち上った時、私は死んでいるかも知れない。一生懸命に働いているかも知れない。老衰して物の役に立たないようになっているかも知れない。然し何れの場合にしろ、お前たちの助けなければならないものは私ではない。お前たちの若々しい力は既に下り坂に向おうとする私などに煩わされていてはならない。斃れた親を喰い尽して力を貯える獅子の子のように、力強く勇ましく私を振り捨てて人生に乗り出して行くがいい。 |
本作品「小さき者へ」の朗読もありますよ!
【参考】子育てパパをテーマとするブログ記事
なお「子育てパパ」に関するブログをいくつか書いています。こちらもぜひどうぞ。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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