ハーフ問題を考える本|日本人とは何か? ハーフ(混血)とは何か?

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私は日本とインドネシアのハーフです。父親が日本人、母親がインドネシア人。日本で生まれ、日本で育ちました。2歳の時から毎年のように、長期休みがあればインドネシアへ行くというライフスタイル。

国籍が異なる両親をもつ。日本では珍しいことのようですが、世界的に見れば珍しいことではありません。ハーフが珍しがられ、時にはイジメの対象にすらなる。いわゆる「日本のハーフ問題」は、そうした背景から起きるものなのかもしれません。

私自身はハーフとして日本で生まれ、日本で暮らす中でも生きづらさを感じることはまったくありませんでした(だからハーフ問題での取材対象にすらならない:笑)。でも日本では「ハーフ問題」というのがあることは事実。このテーマを考える書籍は多くないのですが、最近になって数が増えてきました。まとめてご紹介します。




2018年に入り、ハーフ問題を取り上げた本格的な書籍が!!

どうしてハーフ問題の関連書籍をブログにまとめようと思ったかというと、このテーマを取り上げた本格的な大型書籍が2冊続けて出版されたからです。

「ハーフ」問題というのは、なかなか焦点の当たらないテーマですが、そんなテーマの本が矢継ぎ早に出版された事実を知りびっくりです。

「混血」と「日本人」―ハーフ・ダブル・ミックスの社会史―

まずはこちら。

■内容紹介(amazon)

かくもあいまいな「日本人」の境界を生きる。
「日本人」の境界線はどのように引かれているのか。その境界は、いかに生きられているのか。混血、あいのこ、ハーフ、ミックス、ダブル…ときに侮蔑的な言葉を浴びせられ、差別され、あるときには羨望のまなざしで見つめられながら、「日本人」と「外国人」のはざまを生きてきた人びと。

かれらの生きた戦後史と、現代を生きるかれらの生活史をたどることで、もうひとつの「日本」の輪郭線が浮かび上がる。戦後史研究の新たな展開。

【後日追記】
なお、著者の11/5付のツイートによれば、早くも重版になったそうです

「混血児」の戦後史

続いては、その1ヶ月後に出版された、こちらの書籍。

■内容紹介(amazon)

戦後、日本女性と外国人兵士、特にアメリカ兵との間に生まれた「混血児」は、現在は「ハーフ」としてあるイメージをもって語られるが、いまも昔も、様々な差別と日常的に接してきた。

性暴力と売春、貧困と格差、優生思想と差別など、重層的な社会的困難を背負ってきた彼/彼女たちは、「混血児」としてどのような教育を受け、労働に従事して、戦後日本の社会を生きてきたのか。

占領・復興期から高度経済成長期、そして現在までの聖ステパノ学園における混血児教育の実践を縦糸に、各時代の混血児の社会的な立場や語られ方を横糸にして、「混血児」をめぐる排除と包摂の戦後史を活写する。

「ハーフのことを手っ取り早く理解したい!」という方に

ただ、こうした「ハーフ問題」というのは、おそらく当事者以外で興味をもつ人は多くないはず。しかも上記2冊はハーフ問題を学術的にも、かなり本格的にとりあげている本。「ハーフのことを知るための、読みやすくて簡潔な本は無いの?」という人もいるのではないでしょうか?

ハーフが美人なんて妄想ですから! ! – 困った「純ジャパ」との闘いの日々

そんな方にオススメしたい定番といえば、この2作品。

■内容紹介(amazon)
「ハーフは皆かわいい/バイリンガル」と思っているあなた。それは妄想です! 日独ハーフの著者が現場の実態をおもしろおかしく紹介

■内容(「BOOK」データベースより)
ハーフは皆「かわいい」「バイリンガル」「お金持ち」と思っているあなた。それは妄想です。実際には、不美人・日本語しか話せない・貧乏なハーフも大勢いる。日・独ハーフ(三十路、独身)が、日本社会でハーフが巻き込まれる「怒るに怒れない話」を多数挙げ、おもしろおかしく、時に真面目に「純ジャパ」との共生を考える。

本作品をめぐっては、こんなブログを書いています。こちらもどうぞ。

日本のハーフ問題|ハーフはみんな悩みを抱えて生きているって本当?
私はインドネシアと日本のハーフです。日本で過ごしていると、初対面の人から時々聞かれることがあります。 こんなこと聞いて失礼だったらごめ...

DVD作品 ハーフ(HAFU)

そしてもう1つは本ではなくDVD作品です。

詳細はこちらをどうぞ。

映画「ハーフ」のドキュメンタリーから日本のハーフ問題を考える
ハーフ。日本では「混血児」とか「ダブル」とか、いろいろな言われ方がされています。 日本における「ハーフ」の現実をとりあげたドキュメンタ...
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ハーフ問題を考える近年の専門書、4冊!!

なお、もうちょっと突っ込んで考えてみたい・・・という方には、ここ数年の書籍をご紹介したいと思います。繰り返しになりますが、「ハーフ問題」というのは興味をもつ人が多くなく、出版点数も少なくなります。

また、かなり真面目な研究書的な物が多くて、とっつきにくさがあるかもしれません。今回は4冊をご紹介します。

〈ハーフ〉とは誰か: 人種混淆・メディア表象・交渉実践

まずは2014年の本です。

内容紹介
日本で〈ハーフ〉はどのような存在なのだろうか。戦前から戦後に〈ハーフ〉がたどった歴史、映画・雑誌・マンガでの描かれ方、当事者たちへのインタビュー、といった素材や視点から、〈ハーフ〉が直面する差別の構造やカテゴリー化の文化政治を明らかにする。

内容(「BOOK」データベースより)
日本で“ハーフ”とはどのような存在なのだろうか。戦前から戦後、現在に至る人種混淆の言説を歴史的に整理し、映画・雑誌モデル・漫画・ポピュラー音楽などでの“ハーフ”の表象を検証する。そのうえで、「当事者」の声に耳を傾けて、グローバル化が進展するなか、日常で見えにくくされている“ハーフ”を取り巻く構造化された他者化の力学とカテゴリー化の文化政治を明らかにする。“ハーフ”をめぐる批判的考察をとおして、多様な背景・出自をもつ人々がともに等しく生きる多文化社会の醸成に向けた新たな視点・論点を切り開く論考集。

マルチ・エスニック・ジャパニーズ―○○系日本人の変革力

続いて2016年の本。

内容紹介
近年、「単一民族」幻想を打ち破る、多様な出自を持つ「日本人」の活躍が目立っている。こうしたマルチ・エスニック化と排外主義が共存する日本社会の現在を世界の国民国家の類例の中で分析し、その課題と未来像を論じる。

人種神話を解体する3 「血」の政治学を越えて

内容紹介
複数のルーツをもつ人びとは称揚と差別のもと「何者」として社会に位置づけられるのか。また彼らは当事者としてどのような葛藤・交渉を経ながら自らの生き方を模索しているのか。アイヌ、沖縄、在日外国人、「ハーフ」の歴史と現在に迫る。

【本シリーズの特徴】
●編者らが京都大学人文科学研究所を拠点に2011年から取り組んできた国際・学際的共同研究「人種表象の日本型グローバル研究」プロジェクトの到達をしめすシリーズ。
●知的探索としてスリリングであるだけでなく、“学知の産物でもある”人種・人種主義に対して現代の学知がどのような姿勢をとるべきか/とりうるかを真摯に探究する。
●アイヌ、沖縄、在日外国人、被差別部落、「ハーフ」「ミックスレイス」など現代日本社会の諸問題と、世界の人種研究の現在をリンクさせる各巻構成。
●歴史・社会的に複雑な構成をとる人種概念に対して、歴史学、社会学、文化人類学、民俗学から、映画学、表象研究など人文知の先端、さらには科学史やゲノム研究の現場まで、国際的に活躍する一線の研究者が学際的なアプローチで執筆。

芥川賞候補作「真ん中の子どもたち」

続いては「小説」ですが、ハーフ問題を取り上げた作品が芥川龍之介賞候補作になったと。つくづく時代ですねぇ。

内容紹介
第157回芥川龍之介賞候補作

“四歳の私は、世界には二つのことばがあると思っていた。
ひとつは、おうちの中だけで喋ることば。
もうひとつが、おうちの外でも通じることば。”

台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、幼いころから日本で育った琴子は、高校を卒業して、中国語(普通語)を勉強するため留学を決意する。そして上海の語学学校で、同じく台湾×日本のハーフである嘉玲、両親ともに中国人で日本で生まれ育った舜哉と出会う。
「母語」とはなにか、「国境」とはなにか、三人はそれぞれ悩みながら友情を深めていくが――。
日本、台湾、中国、複数の国の間で、自らのことばを模索する若者たちの姿を鮮やかに描き出す青春小説。

内容(「BOOK」データベースより)
台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、日本で育った琴子、同じく台湾人・日本人のハーフである嘉玲、両親とも中国人で日本で生まれ育った舜哉。上海の語学学校で出会った3人は悩みながら友情を深めていく。日本、台湾、中国という三つの国の間で、自らのアイデンティティを探し求める若者たちの姿を描く青春小説。

「日本のハーフ問題」を真面目に取り上げた新聞連載も

「ハーフ」をテーマにした書籍は少ないですが、新聞や雑誌等で記事として取り上げられることも多くはありません。取り上げられるとしても、芸能関係の華やかな記事が多く・・・。

そんな中、まじめに硬派に「ハーフ」を取り上げた珍しい新聞記事があります。2019年10月31日から11月2日にかけて、上・中・下の3連続でまとめられた論考です。

神奈川新聞がまとめたもので、「ハーフを通じて日本人とは何かを考える」という、とても意欲的な企画。本ブログの冒頭で紹介した2冊の本が主軸になっています。

ウェブサイトに掲載された記事は、途中から「有料会員向け記事」になってしまうのが残念ですが、冒頭だけでも素晴らしいので、ご紹介しておきます。

■多様性は既にある現実

日本人と外国人の間に生まれ、「混血」「ハーフ」などの呼称で分類される人たちに着目した書籍が昨年、相次いで出版された。「国際的」といった画一的なイメージを持たれ、時に「異端」へのまなざしを向けられる当事者たち。両著はアプローチこそ違えど、差別の実態をあぶり出すと同時に日本人とは何かという問いを投げ掛ける。著者2人とハーフの幻想に苦しんだ女性の思いを通じ、この国の今を見つめたい。

日本人とは何かを考えるきっかけに

というわけで、今回は日本のハーフ問題を考えるための書籍を6冊とDVDを1作品ご紹介しました。

国籍が異なる両親から生まれた子供を「ハーフ」と称しますが、世界的に見れば珍しくありません。それを珍しく感じて、過度にチヤホヤしたり、逆にいじめの対象にしたり。それゆえに、ハーフの親が「うちの子は大丈夫だろうか」と過度な心配をして、逆によくない状態になったり・・・と。

日本のハーフ問題を考えることは、ハーフとは何か?を考えることを超えて、日本人とは何か? を考えることにもつながるんじゃないなかと私は思います。国籍とか民族で人を差異化するような考え方、早くなくならないですかね・・・。

以上、関連書籍のまとめでした。なお、辞書や用例に着目し、ハーフや混血に関するワードがどのように認識されてきたのかを歴史的に追いかけた小論が神戸大学の紀要にありました。興味のある方はどうぞ。

「混血」をめぐる言説:近代日本語辞書に現れるその同意義を中心に(国際文化学・紀要論文:2013年)

以上、参考になれば幸いです。

■追伸:
かつて私も読んだことがある作品なのですが・・・、内容をすっかり忘れてしまったのがこの作品。私の中では、かなり評価の低い作品との印象もあるのですが、すみません、覚えていなくて。でも日本では「ハーフ問題」を取り上げた作品自体が少ないので、参考までにご紹介しておきます。

内容紹介
芸能人をはじめスポーツ選手やキャスターなど、ハーフ(ミックス)の活躍ぶりを目にする機会が増えた。現在、日本では新生児の約30人に1人が「両親のどちらかが外国人」だという。彼らの素顔やアイデンティティとは? 二つの異なる文化をどのように吸収したのか? また、欧米系とアジア系では、どのような意識の違いが見られるのか? 本書では、20~30代のハーフを多数取材しながら、若い世代の目線でグローバル社会の生き方を問う。彼らは、複数の言語を体得できる環境にあるため、活躍の場も広げやすい。その一方で、ハーフはいわれなき差別も受けている。さらに、青年期には自己アイデンティティの確立に悩む経験も持っている。そのことが精神的に成長する要因にもなっているようだ。著者は、ハーフの家族観、教育観、日本観などを取材しながら、「トランス・ヒューマンな生き方」を提唱する。真の国際人となるために、示唆に富んだノンフィクションである。

サムスル
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時の運と人の縁を極める日々の記録 】  渡邉 裕晃
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