アップルがインドネシアに4400万ドルの投資を行う。このことについては、昨年の段階で、すでに報道がなされていました。
今回の新たな報道によれば、アップルの担当幹部がインドネシアの産業省を訪れ、次のステップに向けて大臣と会談したようです。アップルのインドネシア進出について、より詳細な内容がわかってきました。今回はこのテーマについてとりあげます。
目次
アップルのインドネシア進出、その概要は?
アップルのインドネシア進出にあたっては、3ヶ所での拠点開発が決まりつつあるようです。
まずはジャワ島に2ヶ所。そのうちジャカルタ拠点はすでに場所も決まり、現地従業員だけで300から400人を雇用するとのこと。そして、もう1ヶ所はジャワ島内で場所の選定中。
さらにもう1つの拠点については、スマトラ島のトバ近辺の名前があがっています。
なお後述しますが、今回のプロジェクトを推進することで、インドネシアでも、ようやく「iPhone7」の販売が可能になるとのこと。今回のインドネシア進出には、様々な思惑があるようです。
アップルのインドネシア進出が本格的に議論された
【画像:「産業大臣がアップル幹部を歓迎、インドネシアにおけるイノベーションセンターを議論」とのKompas記事より】
現地の代表的メディア「Kompas」によれば、3月30日に産業省で会談が行われたとのこと。
アップル側からは、南アジア担当ディレクター、南アジア、オーストラリア、ニュージーランド商業戦略担当、そしてAppleインドネシアのマネージャーの3名。
4400万ドル(約6260億ルピア)の投資について、約1時間弱の話し合いが行われたとしています。
■産業大臣がアップル幹部を歓迎、インドネシアにおけるイノベーションセンターを議論Menperin Terima Perwakilan Apple, Bahas Pusat Inovasi di Indonesia |
拠点は3ヶ所、1つはジャカルタのタンゲランに
産業省の専門家であるSanny Iskandar氏によれば、「開設の目的は現地の人達を教育することにあり、ソフトウェアやアプリに関する訓練を行っていく」予定とのこと。
合計3ヶ所の開設が予定されていて、まず1つ目の拠点は、ジャカルタのタンゲランにある、BSD Cityの「Green Office Park」エリアになるとしています。
地図で示すとこのあたり。先日、イオンが開業した「イオンモール」の近くです。
ジャワ島やスマトラ島にも、アップルのインドネシア拠点が
同記事によれば、2つ目の拠点も同じく「ジャワ島」内で選定中。3つ目の拠点については「スマトラ島」の名前があがっています。
前述のSanny Iskandar氏のコメントによれば、「Rudiantara通信情報大臣は(スマトラの)トバを推薦しているが、決めるのはAppleだ」と。ちなみに、スマトラのトバは大きな湖があることで知られ、観光名所にもなっています。このあたりです。
インドネシアの開発は「ジャワ島」に集中する傾向があり、ジョコウィ大統領としては、大統領就任前から「ジャワ以外の島々の開発を進めていく」と言明してきました。今回のアップルの3つの施設のうち1つでもジャワ外に開設できれば、非常に大きなことと言えそうです。
なお本記事では、4400万ドルではなく、4800万ドルとの記述をしているのですが、様々な記事を見ると4400万ドルとしているところが多いようでした。
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【画像:「アップルはタンゲランのBSDでインドネシア初のリサーチ拠点を開設することを選択」とのKompas記事より】
アップルのインドネシア投資、その背景と思惑は?
今回のアップルによる大規模な投資。そしてリサーチセンターの開設。この背景には、成長著しい「魅力的なマーケット」としてのインドネシアへの前向きな投資の意味合いもあります。しかしそれとは別の背景として、「インドネシア政府からの規制をクリアしたい」という思惑もあります。
インドネシアのiPhone規制:30%の現地調達が課題に
【画像:「9月にはアップルはタンゲランのBSDにおけるリサーチセンターの従業員採用を開始へ」とのKompas記事より】
どういうことかというと、iPhoneの部品の30%はインドネシア現地から調達しなければいけないというルールが課されているのです。2017年に始まった「現地調達率の規制」という課題があり、アップルはiPhone7を販売できずにいました。
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この記事では、Appleがリサーチセンターを、ジャカルタのタンゲランにある、BSD CityのGreen Office Parkに開設する件を報道。現地従業員として400人を雇用することになる予定と報じていますが、その背景にあるのは、第4世代(4G)技術対応携帯電話の販売に関する規制があるとしています。
アップルの巨額投資でインドネシアのiPhone規制の突破へ
4Gスマートフォンをインドネシアで販売したいベンダーに対し、インドネシア政府は「現地調達率」という規制を定めています。2017年初頭には30%という数字が定められ、これをクリアできないと販売できないことになっています。今回のアップルの決断は、それをクリアするためのコミットメントの一つだとしているのです。
この「現地調達率」規制をクリアするにはいくつかの方法があり、その一つはAppleが選択した「投資コミットメント」だと。今回の4400万ドルの投資により、2年の空白を経て、ようやくiPhone7の販売をスタートできることになったと書いています。
インドネシアとアップルの会談、3つの大事なポイント
なお、今回の会談については、大事な3つのポイントがあるとしているのが、次の記事。今までのまとめのような記事ですが、念のため見ておきます。
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【画像:「産業大臣とアップル側との会談結果の3つのポイント」とのKompas記事より】
3月30日の会談でアップル側がインドネシアへ伝えたとされる内容について、3つのポイントでまとめられています。
(1)
「現地調達率規制」について、インドネシア政府がアップルに許認可を出してくれたことの感謝。2015年初頭に出た規制で、2016年には20%、2017年初頭には30%を満たすことが求めらた規制。今回の投資によって、それがクリアできたこと。
(2)
リサーチセンターの開設場所は、まずは、ジャカルタのタンゲランにある、BSD Cityの「Green Office Park」エリアで。
当初は賃貸で開設し、その後、このエリアで予定されてる、シリコンバレーのようなデジタルハブプロジェクトが動き出すのを待っている状態であると。その後の2ヶ所については、まだ場所を選定中。
(3)
iPhone7とiPhone7Plusを、ようやく3月31日にリリースする予定であると。
デジタル立国を目指すインドネシアの思惑と一致した
というわけで、今回はインドネシア現地のメディア記事、4点を参考に、アップル・インドネシアの動きをまとめてみました。
アップルとしては、iPhoneを売るためにわざわざ「現地調達率規制」をクリアしなければいけなくなったこと。これは一つの大きな障壁でしたが、インドネシアのジョコウィ政権が、「デジタル立国を目指す」とするスタンスとのつながりもあって、ゴーサインを出したという見方もできそうです。
実際、インドネシアでのスマホ、モバイル、eコマースなどの分野はこれからまだまだ飛躍的に伸びていく可能性を見せています。そうした中で、たとえ障壁をクリアするために行う「研究開発拠点」であれ、実際に稼働してみれば、意外と大きな役割を果たすきっかけになる可能性も大いにありえます。
インドネシアの今後のデジタル環境を見据えていく上でも、今後も大いに注視すべき動きと言えそうです。
【後日追記】アップルのインドネシア進出、その後の実態は?
その後の展開について、2019年1月1日付けのYahooニュースで記事が掲載されていました。参考までにご紹介します。
・Apple、インドネシアでiOS開発者養成センターを設立:スマホ部品の現地調達率30%に対応(佐藤仁) – 個人 – Yahoo!ニュース
■参考:このテーマに関連するブログ記事です。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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