新型コロナ患者が治癒後に語る「二次被害」の恐怖とは(インドネシア)

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新型コロナウイルスの勢いが世界を席巻しています。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究チームによる集計によれば、3月23日(月)0:00現在で以下の数字が報告されています。

・感染者数:31万6,200人
・死亡者数:13,600人
・回復者数:94,200人

コロナウイルス感染状況 ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームによる集計

しかし、メディアを通じて知らされるのは感染者や死亡者といった「数字」が多く、実際に感染した人の実態や苦悩、回復した人たちの想いなどが伝わってくることはありません。

今回、インドネシアで初めて感染した3名の患者が回復し、記者会見するという機会がありました。またニュースでもインタビューに登場し、入院してから治癒するまでの体験を語っています。そこで気になったのが、知られざる「二次被害」の存在でした。

インドネシアならではの事情もあるかもしれません。しかし今後さらに感染者や回復者が増えていくことを思うと、知っておく価値がありそうです。

彼らが味わった二次被害とはどんな内容だったのでしょうか? そして、彼らはどのようにして這い上がることができたのでしょうか。彼らを追い込むことになった原因も含め、まとめてみました。




インドネシア初の感染者、3月2日の大統領会見で明らかに

インドネシアでもコロナ感染者が発生した・・・。このことが明らかになったのは、3月2日に突然行われた、ジョコウィ大統領による会見でした。

インドネシア在住の2人のインドネシア人が、コロナウイルス検査で陽性反応を示したと。ジョコウィ大統領によれば、64歳の女性と31歳の娘で「この2名は、インドネシアを訪れた日本人との接触機会があった。その日本人はインドネシアを出発してマレーシアに到着後、コロナウイルスが検出されたと見られる」と発表しました。

現在2人は病院で入院中。保健省の専門チームが調査を継続中としましたが、この2名の滞在エリアについては、明らかにしませんでした。

しかしその後の保健省の大臣の会見で「コロナウイルスに感染した日本人が、西ジャワ州デポック(Depok)にある2人の自宅を訪れたことが感染のきっかけではないか」と。そして、北ジャカルタの総合病院「スリアンティ・サロソ病院」(Rumah Sakit Pusat Inveksi Sulianti Saroso)に入院中だと発表されました。

Menurut Jokowi, dua WNI itu sempat kontak dengan warga negara Jepang yang datang ke Indonesia.

「日本人から感染」報道が与えたインドネシアの日本人コミュニティの衝撃

ジャカルタの日本大使館

「ついにインドネシアでも感染者が発生した」との知らせは、あっという間にインドネシア中に広まっていきました。また「日本人との接触がきっかけ」と「日本人」が名指して取り上げられたことは、インドネシアの日本人社会にショックを与えたようです。

「今後、日本人に厳しい視線が注がれるのではないか」との懸念も生まれました。3/5夜には、在インドネシア日本国大使館がメールを発信。「新型コロナウイルスに係るインドネシア政府による検疫体制等について」と題するメールの中で、次のようにまとめています。

新型コロナウイルスに係るインドネシア政府による検疫体制等について

新型コロナウイルスがインドネシア国内で確認されたことに伴う日本人に対する悪質な嫌がらせ等の行為が今後増加する可能性があります。

このたび,在留邦人の方々のための相談窓口を設置いたしました。もしも,不当な取り扱いや悪質な嫌がらせ等に関する事例やご相談がありましたら,こちら(★渡邉注:大使館のメールアドレスです)までお知らせください。

なお,インドネシア政府に対しては,日本人に対する不当な取り扱いや嫌がらせの発生防止について,在インドネシア日本国大使館から申し入れを行っています。

「日本人から感染」という会見は、大きなインパクトをもって受け止められました。また翌3/6には、ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)やジェトロ・ジャカルタと共催で「新型肺炎(コロナウイルス)に関する情報提供(セミナー)」を実施しています。

しかし「日本人は大変だー!何とかしなきゃ!」といったムードの一方で、緊急入院することになった「インドネシア初の患者」たちにも、想像を超える苦悩が待ち構えていたのです。

これは、3/16の病院での記者会見で判明しました。具体的な内容を追ってみることにしましょう。

3月16日の退院会見、インドネシア初のコロナ患者が明かした内容は?

インドネシアで最初にコロナウイルスに感染したとされる女性3名が治癒。3/16に記者会見を開き、胸の内を語りました。上は3人が入院していた「スリアンティ・サロソ病院」を示す地図です。

コロナウイルスに対する偏見がある中での会見は、勇気を必要とするものだったでしょう。また「コロナ感染から治癒した人」が少ない中での会見は、実に貴重なものだったと言えます。

「病院でずっと泣いていた。それはコロナに感染したからではない」

インドネシア コロナ患者 回復の記者会見 コンパス

「病院に隔離された後、私は1日中泣いていました。その理由はコロナウイルスに感染したからではありません。自らのプライバシーがメディアを通じて拡散され、しかも自分に関する誤った情報までがインドネシア中に広まっていったからです」

「コロナウイルスに感染してどんな症状が出るの?とたくさんの人から尋ねられました。でも、私の場合、まず最初に出た症状は、私のことを詮索してくる人たちの存在が恐怖でたまらなくなるということでした」

「コロナ感染は治る病気です。パニックになってはいけません。そして、コロナ感染者のことをもっと尊重してほしいです。こうしたネガティブなことが起きるのは、まさに「第2の犠牲」とでも言うべきものです」

想像を絶する「コロナ患者の二次被害」の存在


こうした「二次被害」が生まれていたことは、意外と知られていないようです。私自身、この内容をソーシャルメディアで紹介したところ、「ぜひ紹介したい」との声がいくつも寄せられました。今回ブログでも紹介したいと思ったのは、こうした実態は広く知られるべきだと考えたためです。

なお3人は記者会見の最後で、病院関係者への謝辞を述べています。「なお、今回お世話になった病院の関係者の皆様は、本当に親身になって私の治療にあたってくれました。本当に感謝しています」と。

Tiga pasien pertama yang positif corona telah sembuh. Mereka mengungkapkan perasaan dan pengalamannya selama diisolasi.

新型コロナで体験した「二次被害」の詳細がTVインタビューで明らかに

この記者会見でも、入院後の苦悩や実態、二次被害の存在が明らかになったわけですが、その後のテレビのインタビューで、さらに詳細の内容が伝わってきました。上の映像はニュース番組のインタビューの一部です。

「私たちは英雄じゃない。ただコロナ患者の回復を祈るだけ」という題名が付いています。この内容について、インドネシアの代表的メディア「コンパス」をもとに紹介します。

Penyintas Covid-19 asal Depok membeberkan pengalaman mereka selama diisolasi dan membangun semangat untuk sembuh. Halaman all

コロナ感染を知ったのは医者からではなく報道からだった

まず3人が語ったのは「コロナウイルスに感染している」という事実を、病院からではなくマスメディアから知らされたということの衝撃です。

・1人目:娘さん:Sita Tyasutami
・2人目:お母さん:Maria Darmaningsih
・3人目:別の女性:Ratri Anindyajati

自分が知る前にメディアで広まっていったこと。そして、知りもしない人たちがネット上で個人情報を撒き散らしていく場面に直面します。「自らがゴシップの消費財になったかのように感じた。恐怖しかなかった」と語ります。

「私たちは隔離室で泣き続けました。コロナであることを知ったのがテレビを通じてだったからです。個人データがWhatsApp(メッセンジャーアプリ)を通じて、どんどん漏洩していきました。写真も撒き散らされました」

・インスタで自分の写真を見て、メンタルがドン底に。
・自分の体がインドネシア中に送られたかの感じ。
・プロのダンサーという職業に対する誹謗中傷が来た。
・ダンサーという言葉が、いろいろな想像をかきたてたようだった。
・母に対して悪いことを言う人たちの存在が許せなかった。
・WhatsAppとツイッターの投稿は本当にひどかった。

ソーシャルメディアからの逃避へ

こうした想像を絶するような中、メンタルの異変が体調にも影響を与えたといいます。

3人の発言によれば、オンラインから浴びせかけれれる言葉は本当にひどく、ソーシャルメディアから離れるように決意。アカウントに鍵をかけて・・・としたものの、時はすでにおそく、大勢の人たちからスクリーンショット画像を撮影された後だったと。

こうした状況での絶望感たるや、いかばかりのことだったでしょうか。インスタグラムやFacebookは見ないようにしたと。「支援してくれる人もいっぱいいたが、マイナスの内容で襲いかかってくるコメントの人たちのことで、7日間ずっと恐怖だった」と、1人目のSitaさんは語っています。

ネガティブをポジティブに変えるチカラとの出会い


Sitaさん、そしてお母さんのMariaさんが絶望感にひたるなか、彼らを元気づける存在となったのが同じ病院にいたコロナ患者のRatriさんの存在だったといいます。

「私はRatriの強さに驚きました。ネガティブをポジティブに変えるチカラに驚いたのです」

Ratriさんは、できるだけさわかやな雰囲気で、それこそコロナウイルスの影響を受けていないような写真をSitaさんに送り始めたといいます。それを見たSitaさんは、次第に元気をもらいます。

「そんな写真を見ているうちに、女子が好きなのは化粧なんだなって。身ぎれいにして、化粧をしてインスタにアップしてみました。たくさんの友人が応援してくれました。だんだんチカラができていて・・・それで公開設定に戻したんです」と。

メンタルの回復が、体力の回復につながった

Ratriさんが用意した写真には、ポジティブなコメントのついたものもあり、だんだん元気になったと語ります。Ratriさんは、毎日シャワーを浴び、メイクアップをして・・・。インスタにも私達のポジティブな姿をアップしていきました。これがストレス解消にもなったのですと。

「元気な写真をアップすることで、ネットの中傷に負けないことを証明しようとした」とも言います。

「フォロワーがたくさんいるうちに、人々のパニックを弱めるよう、ポジティブな話題を拡散させようと考えました」とSitaさん。次第にプロのダンサーとして、カラダを動かせるようにもなってきます。病室の中での練習が始まります。

歌とダンスと。それを重ねることでコロナウイルスに勝つんだと言い聞かせたといいます。病室内でのエクササイズです。転倒のリスクやチューブが外れる可能性など、看護婦さんからの注意を受けながらの日々が続きます。

誰もが患者になり得るという自覚で支え合いを

Sitaさんは言います。「歌を歌っている姿を録画して、それを家族に送る。それが嬉しかったんです。そして意外なことに・・・、メディアを通じて個人情報がもれたことで、ずっと音信不通だった中学校時代の友達との関係が復活。色々と手助けもしてくれて嬉しかったです」

これらの格闘を通じて、彼らが一番メッセージしたいこと。それは次のことだそうです。

・誰もが患者になりうるということ。
・そして、病気の治癒は、メンタルから始まるということ。
・メンタルこそがカラダを元気づけ、カラダを究極的に守ってくれる。

病気を治療するという活動も大事だけれど、それに加えて「メンタルと思考」こそが大事なんだと伝えたいと語ります。

過剰なまでの不安やパニック・恐怖こそが、コロナの二次被害を生むことに

ジャカルタのビル街

ここまで、インドネシアで初めてのコロナ患者の格闘を紹介しました。もちろん実際にインタビューしたわけではなく、取材記事をもとに紹介したもの。その意味では一次情報ではありません。

実際に現場を見て、実際に本人から声を聞くことができれば、さらに壮絶な体験を知らされるかもしれません。インドネシアは2億7000万人という大国です。あること、ないこと。写真も含めて、あらゆる詮索や誹謗中傷がインドネシア中に飛び交っていく・・・。もう想像を絶する世界です。

コロナウイルスには、まだ特効薬がありません。しかし重篤でなければ治る病気だとされています。ウイルス感染症の多くは、自らの免疫力で「自然治癒」によって治すという要素もあります。しっかりと事実をみつめ、過度なパニックにならないことが必要だと言えるでしょう。

コロナウイルスへの過度な恐怖を戒めるジョコウィ大統領のメッセージ

過度な恐怖は人の判断を誤らせることがあります。恐怖ゆえに患者をバッシングするのは、好奇心なのか、あるいは「そうでもしなければ恐怖がおさまらないから」なのか、そのあたりはわかりません。

インドネシアのジョコウィ大統領は、上に載せた公式facebookの映像で以下のように語っています。

「私たちの最大の敵は、コロナウイルスそのものではありません。過剰なまでの不安やパニック、恐怖こそが、最大の敵なのです」

コロナウイルスには、たとえ本人に自覚症状がなくても感染しており「意図せざるかたちで他人に感染させてしまう」というリスクがあるとされます。しかし今回紹介したように、仮に感染していない人であったとしても、過度な恐怖や不安が「二次被害」を生み出しかねないということが明らかになっています。

他人事として片付けるのではなく、ぜひ自分事として肝に銘じておきたいものです。

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