日本の方とインドネシアについての話をする時に、「インドネシアでは、エンジニアやプログラマが育つ土壌があるか」という話題を聞かれることがあります。
また、日本で受注してインドネシアで開発するという、いわゆる「オフショア開発」の事業は成立するのか。そんな話になることもあります。
今回、現地メディアの報道で、グーグルがインドネシアで大規模にエンジニアを養成する計画があることが明らかになりました。グーグルのインドネシア進出の動きを追ってみます。
目次
インドネシアのアプリ開発者を10万人養成するとの現地報道
【画像:「Googleはインドネシアのアプリ開発者を10万人養成することになるだろう」と題するKompas記事より】
今回のグーグルの動向を伝えたのは、現地主要メディアである「コンパス」です。
「Googleはインドネシアのアプリ開発者を10万人養成することになるだろう」Google Bakal Membina 100.000 Pengembang Aplikasi di Indonesia – Kompas.com(4 Maret 2016 | 07:53) |
と題する記事で、グーグルのインドネシア進出をとりあげています。記事を読むと、インドネシアの若者がもつ能力とそのポテンシャルや、インターネット産業に対する現地のスタートアップ企業の動向に強い関心をもっていることがわかります。
デジタル立国に尽力するインドネシア政府
インドネシアでは、ジョコウィ大統領が音頭を取って、デジタル産業を育成していこうとする動きがあります。
「インドネシアにデジタル・エコノミーを」という掛け声のもと、先日は、ジョコウィ大統領がシリコンバレーを訪問したことが話題になりました。
Facebookやツイッターなどのデジタル関連企業のCEOを訪問した他、現地のIT産業で活躍するインドネシア人たちを前にして、「インドネシアに帰ってきて。インドネシアでデジタル産業で起業しよう」とスピーチしています。
インドネシアの発展に期待を寄せるグーグルの戦略
今回の記事内容は、Google自体がインドネシア、あるいはインドネシア人材について、大きな期待を寄せていることが明らかに伝わってくる内容になっています。
Googleがインドネシアで取り組んでいる支援内容としては、
・ベンチャー企業の事業発表会への参加
・有望ベンチャーをアメリカに6ヶ月招待して育成支援するランチパッド・アクセラレータというプログラムの実施
などが知られていますが、今回の報道はそれらに加えて
・10万のアプリ開発者を育てる
という計画が明らかにされています。
インドネシアのアプリ開発者を10万人養成へ
記事の内容は次の通りです。
インドネシア政府は1000のスタートアップ、つまり「テクノプレナー」を、きたる2020年に生み出す考えだ。つまり、今日から5年程度のうちに、Go-JekやTokopedia、Bhinnekaのようなスタートアップ企業がどんどん増えるということになる。
この野望のターゲットは、Googleインドネシアのビジョンと連動しているように見える。それはつまり、インドネシア国内で10万のアプリ開発者を育てたいという考えだ。 ここで書いておくべきことは、テクノプレナーはアプリ開発者とは異なるということ。政府のターゲットは、スタートアップを「誕生」させること。それに対してGoogleのターゲットは、アプリを開発するためのスキルを「発達」させることにある。 Googleのターゲットは、3月3日にジャカルタのレストランで開催されたメディアセッションの中で、GoogleインドネシアのコミュニケーションマネージャーであるJason Tedjasukmana氏によって明らかにされた。 「2020年にアプリ開発者を10万人というターゲットを達成させるために私たちが行っている努力はいくつかある。ランチパッド・アクセラレータというプログラムはその一つだ」と語る。 すでに知られてるように、ランチパッド・アクセラレータは、6ヶ月に渡るスタートアップ養成プログラムだ。その期間の中で、選ばれたスタートアップ企業はアメリカのシリコンバレーに行って、デジタル分野のパイオニアの仕事についての短期教育を受けることになる。それぞれの企業は、6億ルピア(約600万円弱)のエクイティーフリーの資金も与えられることになる。 このプログラムに加えて、Googleはコンピューター関連で最終学年にある大学生をつかむために大学機関と提携をする予定だ。 Googleは、クオリティーの高いアンドロイドアプリの開発方法について、1セメスター期間のカリキュラムを提供する予定でもある。 また、Googleは、ユダシティ(オンライン授業の名称:後述)におけるアプリ開発のオンラインコースの教材をインドネシア語に翻訳する作業も進めている。 すでに知られているように、このコースはGoogleのディベロッパー・リレーションチームの専門インストラクターから教えを受けることができるもので、いかなるデバイスからも、無料で直接アクセスできるものだ。 オフラインの領域においては、Googleは「インドネシア・アンドロイド追求」を始める予定だ。端的に言うと、このプログラムはモバイルアプリ分野の専門家ファシリテーターによって運営される集中訓練で構成されるものだ。このプログラムは5つの都市で開催され、バンドゥン、ジャカルタ、スマラン、スラバヤ、そしてジョグジャカルタが予定されている。 |
グーグルの「ランチパッド・アクセラレータ・プログラム」とは?
グーグルが展開する「ランチパッド・アクセラレータ」というプログラム。インドネシアでは昨年からスタートしたものですが、すでに8つのベンチャーが選出されて、6ヶ月プログラムを終えています。
今年はまさに今月、募集が行われているところ。今回は5社に限定するそうですが、どのような企業が選抜されるかが注目されています。
Googleがどのようなビジネスモデルに注目しているかを知るだけでなく、インドネシアの若者のデジタルベンチャーについて、その将来に向けた潜在力が垣間見える結果になりそうです。
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インドネシアでデジタル系のスタートアップ企業に従事したい、デジタル分野での起業をしたい・・・。そういう若者にとって、このような支援策が出てくることは朗報ですね。
Google以外の企業についても、世界に通用するようなインドネシア発ビジネスの発掘や、優秀なエンジニアの確保という意味でも、似たような動きを見せていく可能性があります。
報道によれば、ジョコウィ大統領はシリコンバレーにおけるスピーチでも、2020年までに1000人のテクノプレナーを生み出すこと、約200人のテクノプレナーを毎年生み出すという計画を語っています。
政府が打ち出す「デジタルエコノミーの発展戦略」も合わせて考えると、インドネシアのデジタル産業の動きは、ますます目が離せません。
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なお、昨年のランチパッド・アクセラレータ・プログラムでは、インドネシアからは8つのベンチャーが参画したと書きました。Googleからの発表データを探してみたところ、その8社の内容は次のとおりです。
さて、今年はどのようなビジネスモデルのスタートアップが選ばれるでしょうか?
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また、記事中で「ユダシティ」というオンライン授業が言及されていましたが、このような内容です。参考までに抜粋しておきます。
■Udacityとは – IT用語辞典 Weblio辞書
Udacityとは、元スタンフォード大学教授のコンピュータ科学者セバスチャン・スラン(Sebastian Thrun)が中心となって立ち上げられたMOOC(大規模公開オンライン講座)のプラットフォームである。2012年2月にサービスを開始した。 Udacityはコンピュータサイエンスまたは数学の分野に特化しており、人工知能やアルゴリズムなどをテーマとした高度な授業を配信している。最初に配信した2コースだけで世界中から延べ16万人のユーザーが受講したとされる。Udacityは「Coursera」や「edX」と共に代表的なMOOCのプラットフォームとして挙げられることが多い。 ちなみに、Udacityの設立者であるセバスチャン・スランは、Google X Labの立ち上げに加わり「Google Glass」や「Google driverless car」などの研究開発プロジェクトに携わっていることでも知られている。 |
なお、グーグルのインドネシア展開については、こちらの記事もどうぞ。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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