ジャカルタのテロ事件|インドネシアで流れた「同時多発」の誤報の謎

シェアしていただけると嬉しいです!

2016年1月14日に発生したジャカルタのテロ事件。ジャカルタの中心地である「サリナデパート」周辺で発生したものですが、複数の爆発と銃撃戦により、実行犯を含む7人が死亡したとされています。

このジャカルタのテロ事件について、ちょっと気になる点がありました。それは「同時多発」という誤報の謎です。大手メディアでも誤った報道をする可能性があります。情報の受け手である私たちとしても、常にメディアリテラシーを磨き続ける必要があると言えそうです。

今回のネタは若干マニアックネタかもしれませんが、備忘録としてまとめます。




ジャカルタのテロ事件、報道内容の違いに「誤報の可能性」も

サリナデパート前の爆破事件の様子を伝える「kompas」の記事より
【写真:事件の様子を伝える「kompas」の記事より】

今日のジャカルタ、サリナデパート前の爆破事件。私はネットとテレビでずっと情報の推移をウォッチしていました。

本当に痛ましい事件で、亡くなられた方々のことや、近くで恐怖を感じられた方のことを思うと言葉がありません。その後、現場に警察官などが集まって、犯人の追跡に向けて活動する緊迫した様子は、現場からの生中継映像を通じて、ひしひしと伝わってきました。

テロの直後ともなれば、さまざまに情報が錯綜するもの。犠牲者の数、犯行の様子、目撃者の証言・・・。伝わってくる情報が、いろいろあって、断片的に伝わってくる情報の真偽をはかるのは、それなりの難しさがあります。

例えばこれは、事件発生直後のkompas-tvのニュースの様子。2分41秒の短い映像ですが、キャスターが言葉を選びつつ、でもかなり動揺しながら報じている様子がわかります。

[映像] Ledakan Terjadi di Kawasan Sarinah – Kompas TV

サリナデパート前の爆破事件の様子を伝える「kompas」の映像より
【写真:事件直後に放送された「kompas tv」の映像ページより】

たしかにこういう緊迫した事情はわかるのですが、私が気になったのは、サリナデパート前の爆発事件なのに、ソーシャルメディア等を見ていると「複数のエリアで同時爆破テロ」という情報を見る機会が意外とあったのです。

え? 爆発が起きたのは、サリナだけなんじゃないの?

テロが発生した場所はジャカルタの中心地

地図で示すと、このあたりです。ジャカルタでは有名な「サリナデパート」の目の前。まさにジャカルタの中心地です。

ちなみに、これは、サリナデパート近くで複数起きた爆発のうちの1つ。事件の痛ましさは、これだけでも強く伝わってきます。

Ledakan Bom di Starbuck Sarinah Thamrin

Detik-detik meledaknya bom di Starbuck Sarinah ThamrinBREAKING NEWS: Ledakan Kuat Terjadi di Sarinah Thamrin http://kom.ps/AFu0Pj Sumber: social media

Posted by Kompas.com on 2016年1月13日

こうしたテロともなれば、情報が錯綜するのは当然かもしれません。でも「1ヶ所の爆発事件」と「複数のエリアでの同時多発」とでは明らかに事象のレベルが異なると思いませんか?

「情報ソースは、いったいどうなっているんだろう?」

私はすごく気になったのです。今後の人生の中では、不確かな状況の中にあっても、一定の情報をもとにして、瞬時に判断しなければいけない局面はたくさんあるはず。そのためにも、私はこの背景を知っておきたかったのです。

ジャカルタのテロ報道で「誤報」を招いた原因は?

今回の犯行グループは、一部が逮捕され、一部は亡くなりました。テレビの報道で、警察の広報担当者が、「この地域の安全は確保されました」とコメント。事件解明はこれからですが、まずはいったん落ち着きました。

でも、「同時爆破」というニュースの件が、どうしても気になって、その後もいろいろ調べていました。その結果、これかな・・・という情報に行き着きました。

やはりインドネシアの現地の人でも気にした人は少なくないようで、「きっかけは、インドネシアテレビ局の”TV One”ではないか」という指摘。

tvOneは、サリナデパート以外にも、異なる3ヶ所の場所で爆破があったと伝えた。スリピとクニンガンとチキニの3つのエリアだ。爆発が起きたのはサリナだけだと警察の広報部がコメントしているにもかかわらず。

サリナ爆発に関係してデマを流したのは”TV One”だとネチズンからの非難
(Sebar hoax soal bom Sarinah, TV One dibully netizen)と題する記事。

同記事によれば、”TV One”が報じた「複数のエリアでの爆発テロ」とのニュース。その後、ガーディアンやAP通信、BBCのような大手メディアまでがこのニュースを引用するようになり、そこから英語記事等に広まってしまったのがきっかけとのこと。

大手メディアの誤報は、簡単に拡散する

事件発生直後から、リアルタイムに私がチェックしていたのは「インドネシアで信頼できるメディア」からの情報。それらの情報源からは、私の記憶が正しければ「複数のエリアでの同時爆発」というニュースは聞きませんでした。

(厳密に言えば・・・、複数エリアでの同時爆発を報じたのがTV-Oneだけだったのかどうか、は検証できていません)

11時前に起きた事件でしたが、12時台のニュースでも、「爆発は1箇所だけだ」と強調する情報が何度も流れていました。でも、ガーディアンやAP通信、BBCのような、大手メディアでも「複数エリアでの爆発か」と流れてしまうと、それが独り歩きしてしまうものなのでしょうかね・・・。

“TV One”は、2014年7月の大統領選挙でプラボウォ候補に対するあまりの偏向報道が有名で、プラボウォ勝利を報じたことでも知られています。

それを差し置いても、そもそもなぜ「複数箇所の爆破」と報じることになったのか、そこに至る取材の経緯がどうだったのかは、ぜひ知りたいところです。

ちなみにその後、”TV One”は、「爆発が起きたのはサリナだけです」というツイートを、わざわざ警察の広報アカウントにメンションするかたちで発信しています。事実上の訂正報道ということになりそうですね。

というわけで、「1箇所爆破」なのに「複数エリアでの爆破」のニュースが流れたのは、こうした事情が影響していそうです。

メディアにも誤報の可能性。常にメディアリテラシーを磨き続けよう

今後の残り人生の中では、おぼろげに不確かな状況の中にあっても、一定の情報だけをもとにして、判断や意思決定を瞬時に下さなければいけない局面はたくさんあるでしょう。

だからこそ、情報を見る目や、判断・決断する時の自分なりのやり方というものは、常に磨いていたいものです。

というわけで、今回のブログではジャカルタのサリナデパート前の爆発テロ事件で流れた「同時多発」という誤報の謎を取り上げてみました。自戒を込めて、備忘録としてまとめてみましたが、参考になれば幸いです。

ちなみに本ブログの趣旨は、「TV-Oneけしからん!」ということではなくて、報道内容を理解するためには二重三重に確認する等、一定のリテラシーが欠かせませんね・・・ということです。念のため。

【追記】誤報が確定。インドネシア放送倫理委員会が厳重注意へ

【1/15追記】
本日付のkompasの記事、「デマを流し不適切な映像を流したとして、3つのテレビ局がインドネシア放送倫理委員会から制裁」(Tayangkan Berita “Hoax” dan Visual Tak Layak, 3 Stasiun TV Diberi Sanksi KPI)によると、インドネシア放送倫理委員会は、この度、今回の誤報は人々の不安を引き起こしたとして、放送指針違反としての制裁(文書による厳重注意)を課す決定を下したそうです。

ジャカルタのテロ事件「複数エリアでの爆発」は誤報と認定。TVOneなど厳重注意へ
ジャカルタのサリナデパート前の爆発テロ事件について、先日のブログで指摘した「複数エリアでの爆発という誤報」の件の続報です。 前回のブロ...

サムスル
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
時の運と人の縁を極める日々の記録 】  渡邉 裕晃
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ブログの更新情報のチェックは、こちらからどうぞ!
時の運と人の縁を極める日々の記録 Twitter: @_samsul
時の運と人の縁を極める日々の記録 Facebook: /samsulcom
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

スポンサーリンク

あわせて読みたい関連記事










シェアしていただけると嬉しいです!

フォローする