国民性の呪縛|海外体験で聞く「いい人ばかりでやさしくて」は本当か

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「国民性」という考え方について、どう思いますか? 辞書の「デジタル大辞泉」で調べてみると「ある国民に共通してみられる気質や性格」と書かれています。

簡単に言えば、国民性とは「●●人は●●だ」という考え方です。「アメリカ人だから●●なんだよね」とか、「インドネシア人は●●だからね」といった表現を耳にすることがあります。

しかし、この「国民性」という考え方は本当に妥当性があると言えるのでしょうか。私自身、日本人とインドネシア人のハーフとして生きてきて、こうした「国民性」の考え方に強い違和感を抱いてきました。今回は国民性に関するテーマでブログをまとめてみます。




国民性幻想を考える。インドネシアで子供の誘拐未遂のニュースを見て

インドネシアで流れていた子供の誘拐未遂のニュース【写真:誘拐犯への対処法を説明する、インドネシアの子供対策の専門家】

ちょっと前のことになりますが、ベトナムのホイアンに長期滞在していて、久しぶりにインドネシアに帰ってきた時のことです。

トランジットで訪れたジャカルタ。ホテルの部屋に入り、テレビで現地のニュース番組を見てみたら、さっそく流れていたのは、子供の誘拐未遂のニュース。ある小学校の近くに誘拐犯があらわれて、何人もの子供が声をかけられたと。

小学校低学年と思われる子どもたちが何人もテレビに出てきて、まだまだ声の高い男の子たちがテレビに向かって一生懸命に語っているんですよ。「犯人にこんな風に声をかけられた」とか、「バイクに乗って近づいてきて・・・」とか。

その姿を見ていると「ホントに怖かったんだろうなぁ」と思うわけです。ニュースのインタビューに答えることで、逆に記憶が定着してトラウマになるんじゃないか・・・なんて心配すらしつつ。

「現地の人はみんな良い人ばかりで、やさしくて」という感想が意味するもの

アジア 人々 やさしい

もちろん、どんな国に行こうとも、犯罪はつきものです。世界的に見て治安が良いとされる日本ですら、皆さんご承知のとおり、さまざまな犯罪が起きているわけです。

そこで本題になるわけですが・・・、

海外に旅行や留学に行った人たちの声を聞くと、いろいろな思い出を語ってくれますよね。そこでよく聞くのが、「●●人は、みんないい人ばかりで、やさしくて」というもの。ほんわかした話が多くて素敵な思い出もあって、本当に良いな・・・、いつか行ってみたいな・・・なんて感じたり。

日本の人たちからだけでなく、インドネシアの人からも同じような話を聞きます。「日本に行ったら、日本人はホントにいい人ばかりで」とか、逆に「インドネシアに来た日本人たちと交流したけど、日本人は素晴らしい人たちばかりで」とか。

もちろんインドネシア滞在中の日本人たちに意見を聞いても「インドネシア人は、いい人ばかりで毎日が楽しくて」とか。本当に素敵です。

悪い人たちによる犯罪は、どこかで毎日のように起きている

海外の犯罪 警備 治安

でも一方で、ニュースをつければもちろん犯罪のニュースが流れています。

外務省が運営する安全情報サービス「たびレジ」に登録をすれば、定期的に地域ごとの安全情報メールが届きます。「大使館からの注意喚起(強盗被害)」という題名のメールも来ます。未遂も含めれば、犯罪的な事象が起きていないというわけではありません。

外務省が運営する安全情報サービス「たびレジ」【画像:外務省が運営する安全情報サービス「たびレジ」ホームページより】

どこでも犯罪は起きています。「そんなことは、当たり前だろ」と言われるような、本当に当たり前のことです。

しかし、旅や留学の感想で聞くのが「●●人は、みんないい人ばかりで、やさしくて」という内容です。ではその人たちが暮らす国では犯罪が起きていないのでしょうか?

つまりはこういうことなんですよね。「私が交流させてもらった人たちは、みんないい人ばかりで、やさしくて」って。

そう。「私が交流させてもらった人たちは」なのであって、「●●人は・・・」ではないはずなのです。なぜなら悪い人たちによる犯罪は、どこかで毎日のように起きているのですから。

ホントに「国民性が素晴らしい」から?自覚すべき「幸せ」な環境

海外旅行 幸せ 交流 食事

だからこそ、海外に行く機会があれば、こういう自覚をもった方が良いのではないかなと私は思っています。

つまり、「もちろん犯罪的なことは起きているはずだけど、そういう目にあうことがなく幸せだったな」と。「もちろん犯罪をおかすような人たちもいるはずなんだけど、そういう人たちに出会うことがなくて幸せだったな」という自覚です。

「自分が接触した人たち」との良い思い出だけを根拠にして、「●●人はみんなやさしくて」って、国籍や民族を単位に決めつけのはおかしいですよね。これは、人種や国籍による「ステレオタイプ」(先入観、固定観念)とも言えます。

逆に考えてみたらどうでしょう? 例えばちょっと嫌な思いをしたりとか、たまたま財布をすられたりとかしたとしたことで、「●●人は悪人で・・・」っていう発想につながりかねないわけです。やさしい●●人だっているのに。

「交流して楽しかった」を根拠に国民性を決めつけることの危険性

インドネシア 駐在妻 パーティー

考え過ぎだろうと思われるでしょうが、こういう些細なことが、偏った「対外イメージ」を醸成していくんですよね。個人との交流での楽しさを根拠に、国民性を決めつけること。個人として見たときの感情を、国籍や民族の単位でも同じように規定してしまうというのは、誤った認識をもたらしかねません。

インドネシアに留学した人たちが言うんです。
「インドネシア人は、みんなやさしくて・・・」って。

でも、それは「インドネシア留学中に私が交流した現地の人たちはみんなやさしくて」であって、「インドネシア人全員と断定できるんですか?」という話。もちろんそれはそれで良いのかもしれないですが、逆を考えたら怖いよねという意味です。

そして、だからこそ感じることができるはずなんですよね。私が交流させてくれた皆さんは「私にいい思い出を与えてくれた素晴らしい方々だったな」と。民族や国籍を単位にするのではなくて、相手をきちんと一人の個人として見ること。一人の個人として触れ合おうということです。

国籍や民族というカテゴリーではなく、大切なかけがえのない個人として見る

ジャカルタ

民族や国籍を単位にするのではなくて、きちんと一人の個人として相手を見ること。そうやって個人と個人として交流していくこと。そうであってこそ、もっともっといろいろなことが見えてくるはずだし、偏狭な国家同士のいがみ合いも減っていくはずなのです。

以前と異なり、もっと簡単に海外に旅行できるようになり、もっと簡単に留学できるようになり、もっと簡単に海外就職できるようになり・・・という環境だからこそ。

だからこそ、「相手の人を、国籍や民族というカテゴリーでからめとるのではなく、大切なかけがえのない個人として見る」ということが、ますます重要性をもっていくのではないかなと。そして、そうであってほしい・・・というのが私の願いです。

「やさしい人たちばかりの●●人」という国民性幻想

イスラム女性 インドネシア

逆に言えば「現地の人は、みんないい人ばかりで、やさしくて」って言える人って本当はとても幸せなことなんですよね。「やさしい人たちばかりの●●人」なんて本当は幻想なんですから。あなたの人徳があってこそ、やさしい素晴らしい人達に出会えたはずなんですから。

そんな素晴らしい人たちなんだから、国籍や民族というフィルターで見るのではなく、その人をその個人として見ることができたなら、きっともっと素晴らしい出会いになるのではないかなと思うのです。

そもそも「国民性」の意味とは何か?

「●●人は●●だ」という考え方は「国民性」とも呼ばれます。「デジタル大辞泉」を見ると「ある国民に共通してみられる気質や性格」と書かれています。

しかし前述した通り、国籍や民族という単位で人物像を規定することには無理があります。それはおそらくですが、海外の人との交流が増えれば増えるほど、体感値でわかってくることなのではないでしょうか。

平凡社の「世界大百科事典 第2版」では、「国民性についての関心は国民国家の成立にともなう国民のアイデンティティ形成の必要から生じてきたと思われる」との指摘がされています。つまり「国民性」という概念は、国を一つにまとめるためのフィクションに過ぎないと言っても過言ではありません。

グローバルに広がる現代社会にあって、こうした旧来の「国民性」幻想から脱却すべき時が来ているのではないかというのが私の考えです。

【参考】国民性の意味を考えるYouTube動画とブログ記事

この件についてはyoutubeでも語っています。

また本テーマに関連するブログです。興味のある方はこちらもどうぞ。

日本のハーフ問題|ハーフはみんな悩みを抱えて生きているって本当?
私はインドネシアと日本のハーフです。日本で過ごしていると、初対面の人から時々聞かれることがあります。 こんなこと聞いて失礼だったらごめ...

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