「裏を返す」という、お礼のマジック

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「渡邉くんねぇ、君はね、裏を返したんだよ
ある料理店のご主人から、そう言われたことがあります。
その瞬間「はっ」と我に返り、
「うわぁ・・、なんか、失礼なことでも
やってしまったのだろうか・・・」
焦りまくったのを、今でもおぼえています。
だって、びっくりしませんか?
「君は、裏を返したんだよ」なんて言われたら。


きょとんとする私に、ご主人は説明してくれました。
「裏を返すというのはね、
気に入ったお店にもう一度来るということでね」
「はぁ・・・」
「私が思うに裏を返すというのは、
お客さんが料理店に対して示すことのできる最大の賛辞なんだよ」
「へぇ・・・」
何か申し訳ない失態をしたかのように感じた私は、
ただただ安堵するばかりでしたが、
次第にじわじわと、「ほぉ・・・」と感心させられました。
□     □     □
「だいたいのお客様は、会計をして、そのまま帰る。
おいしかったですよ、また来ますと言って帰るお客様もいる。
でもね、お客様には失礼な言い方になるけどさ、
おいしかったよ、とか、また来るよ、なんて、
発言すること自体は誰でもできることだよ。
実際に、また来てくれたということは、
心の底からおいしかったと思わなければ実現しないことだろう?
何事も、行動で示すということができるという人は、
意外と多くないものだよ。
だから、裏を返すということは、
料理店に対する最大の賛辞なんだ。ありがとうな。」
なるほど! と思いました。
□     □     □
でも、よく考えると、
これは、仕事の世界でも、プライベートの世界でも、
共通して当てはまることではないでしょうか。
誰かから何かをしていただいた時、
「ありがとう」とか「役に立ちました」とか、お礼を伝えることは大事です。
(というか、お礼は最低限のマナーですが:笑)
でも、「お礼を声に出して言いさえすればいいや」という気持ちが
あるのだとすれば、その言葉には何の重みもない
ことになります。
伝わる人には伝わるものです。
□     □     □
たとえば「役に立ちました!」ということであれば、
その後、それを実践してみて、
自らの行動の結果として役立ったことを、
後日ご報告さしあげること。
これほどのお礼はないでしょう。
お礼は、口頭で示すだけでなく、
行動でも示すべきもの
だ、と思うのです。
「おいしかったよ」の口だけで終わりよりも、
「おいしかったので、また来ちゃいましたよ」の方が、
たしかに、「料理店に対する最大の賛辞」ですよね。
□     □     □
また、お礼は、ご本人に対して直接行動して示すだけではなく、
他の方に対して示すことでご本人に間接的に示す、
ということもできると思います。
「先輩からのアドバイス、ありがとうございました。
それがきっかけで、後輩をより適切に指導することができ、
チームの成果が上昇したんですよ!」
たとえば、そんなことでもあれば、
ご本人に対して何かをしてさしあげてはいないものの、
ご本人に対する最大のお礼になるように思います。
「言う」に加えて「行動する」!
「裏を返す」ことのできる人間でありたいものです。
■追伸:ちなみに「裏を返す」の語源は遊郭!にあるそうです。
関心のある方は、ぜひ調べてみてください。

このコラムは、2007年9月8日に配信したメールマガジンを転載したものです。

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2007年9月26日            渡邉 裕晃

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