いやぁ、びっくりしました・・・。モロゾフさんが創業したチョコレート会社が廃業していただなんて。
昨日は、8月15日。終戦(敗戦)記念日です。ちょうどその夜、調べたい会社があって、ウィキペディアにアクセスしてみました。昨年、2006年の8月15日、その会社は神戸での80年もの歴史に幕を閉じ、廃業をしていたのです。
美しい神戸の街で、ひっそりと。ホントにびっくりです。
目次
モロゾフ一家が再創業した「コスモポリタン製菓」の歴史
By Bittercup – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
その会社は、コスモポリタン製菓。創業者は、ヴァレンティン・フョードロヴィチ・モロゾフです。神戸市中央区にある老舗の洋菓子メーカーとして知られていました。社名は「モロゾフ」ではありません。
歴史をたどると・・・。元々は、ヴァレンティンのお父様であるフョードル・ドミトリエヴィチ・モロゾフが、神戸のトアロードで1926年に「モロゾフ洋菓子店」として起業。その後、1931年に法人化して「神戸モロゾフ製菓株式会社」となります(代表取締役は葛野友槌、父フョードルは取締役、息子のヴァレンティンは専属技術者に)。
しかし共同経営者との争いから法廷闘争に発展し、モロゾフ一家は会社から追い出されてしまいます。しかも裁判の結果、モロゾフ一家は「モロゾフ」の商号を利用することをすら許されない状況になってしまうのです。
1941年、息子であるヴァレンティン・フョードロヴィチ・モロゾフは「バレンタイン製菓店」という名前で事業の再スタートを切ります。空襲で焼けてしまいますが、終戦後の1945年、ヴァレンティンは菓子店「コスモポリタン」を再興します。これが今回の「有限会社コスモポリタン製菓」の歴史です。
つまり、モロゾフ一家無き「神戸モロゾフ製菓株式会社」が、現在の「モロゾフ株式会社」(東証一部上場)ということになります。
モロゾフ一家の深い歴史を伝える書籍「コスモポリタン物語」
どうしてびっくりしたかと言うと、先週の夏休み期間に私が読んだ唯一の本が、「コスモポリタン物語」だったからです。同社の歴史をまとめた自費出版本。なので、流通に乗っていません。
1991年3月に出版された本で、別名は「コスモポリタン物語:since 1926」。作家の川又一英さんが書かれたものです。
そして、今回私が読んだ本、実はサイン入りになっています。誰のサインか。それは、フョードル・ドミトリエヴィチ・モロゾフの息子さん。つまり、1941年に「バレンタイン製菓店」として再出発させた、ヴァレンティン・フョードロヴィチ・モロゾフです。
■ヴァレンティン・フョードロヴィチ・モロゾフさん (Valentine Fedorovich Morozoff) (1911年3月1日 – 1999年1月23日) [wikipedia へのリンク] |
【写真:「コスモポリタン物語」を読む私】
ちなみに日本のバレンタイン・デーの発端は、同社が1936年、日本国内の英字雑誌に対し、「バレンタインチョコレート」の広告を出したことが最初だそうです。
モロゾフさんとの不思議な出会い
なぜサインが入っているかと言うと・・・、
私の妻が、以前、神戸を歩いていた時のこと。鳩にエサをあげている白人のおじいさんがいました。
私の趣味は「時の運と人の縁を磨くこと」ですが、縁をつかむことにかけては、私に負けず劣らずの妻。妻は、そのおじいさんと親しくなり、「私の工場を見るか?」と言われ、見てみたところ、なんとモロゾフさんだったのです(笑)。
こういう出会いって、面白いですよね・・・。そうしてモロゾフさん御本人からいただいたのが、この本です。ちなみにモロゾフさんは、1999年1月23日にお亡くなりになっています。その後は長男であるヴァレンティン・ヴァレンティノヴィチ・モロゾフさんがコスモポリタン製菓の経営を引き継がれました。
モロゾフ一家の苦労の連続、言葉にならない
「コスモポリタン物語」は、以前から妻から読んでみるようにと言われつつも放置していた一冊でした。夏休みを利用して読んでみたところ、モロゾフ一家のご苦労がしのばれて、もう、ひきつけられるように、一気に読み上げてしまいました。
それこそ、家族ぐるみで困難に立ち向かうという姿。ロシア革命の難を逃れるようにして中国、日本、アメリカ、そして日本へ・・・という家族の大移動。仕事でどんなに困難なことにぶつかっても、どこまでも楽観さを失わずに闘う姿・・・。
もう心の底から感銘を受けました。
(社史なので、若干割り引いて読まないといけないのでしょうが)
闘う経営者、モロゾフの名言
苦労の数々を経た上で、モロゾフさんが語ったと言う言葉、
「もう人生おしまいだ!というような時であっても、まだ50%の可能性は残されているものだ。一生懸命に考えて、できることにチャレンジせよ」
彼らの苦労の歴史と重ね合わせると、もう、涙が出そうになりました・・・。強い経営者ですね。闘う経営者。惚れました。
あらためて注目されるべきモロゾフ一家の存在
ここの歴史。本当にすごいのですよ。流通に乗っていないので、書店で購入できないのが残念です。
【写真:「コスモポリタン物語」を読む私(しつこいですね:笑)】
至るところに、いろいろな歴史があるのだなぁと思うと同時に、もっともっと視野を広げて、たくさんたくさん見てまわらねばと思う、そんな瞬間を与えてくれました。
今回の廃業のニュース。実印残念です。もっと早く「コスモポリタン物語」を読んで、お店におうかがいしてみるべきだったな・・・と悔やまれてなりません。ちなみに、一方のモロゾフ株式会社は東証一部の上場企業ですよ。皮肉なものです。
モロゾフ一家のことがわかる本
なお、1991年に「コスモポリタン物語」を書かれた川又一英さんは、1984年に「大正十五年の聖バレンタイン―日本でチョコレートをつくったV・F・モロゾフ物語」という本を書かれています。ただし希少本となり、だいぶ高値がついていて入手が困難。
今回ご紹介した「コスモポリタン物語」は自費出版本なので、これまた入手が困難・・・。ただ実に嬉しいことに、2018年にモロゾフさんを取り上げた本「チョコレート物語: 一粒のおくり物を伝えた男」が出ています。参考までに、こちらもどうぞ。
【参考】バレンタインに関するブログ記事
バレンタインをテーマとするブログ記事をまとめてみました。こちらもどうぞ。
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【 時の運と人の縁を極める日々の記録 】 渡邉 裕晃
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