インドネシアの富裕層のライフスタイル。ベールに包まれていて、なかなか実際の姿が見えてこないというのが実態ではないかなと思います。
日本の方と話をしていると、「インドネシアは遅れていて。でも日本は進んでいて」というイメージがあるためか、「インドネシアの人たちを助けなきゃ」という雰囲気の話を聞かされることがあります。たしかに実際にそういう状況もあるわけですが、インドネシアは日本以上の格差社会。上を見ると、日本では考えられないような富裕層ならではのライフスタイルがあったりします。
今回は、数日前にインドネシアの地元のレストランで経験した出来事をご紹介したいと思います。
【写真:ジャカルタのモールで開催されていたランボルギーニのキャンペーン】
目次
インドネシアのレストラン、えっ?というびっくり体験
十数年ぶりに訪れたインドネシアの地元のレストラン。ヨーロッパ料理をウリにしたお店で、末永く愛されているお店。娘の同級生のご両親をまじえて楽しく会食・・・。
オープンエアーのお店で、バイオリンの生演奏が心地よく。私が生活するマラン(Malang)は高原都市なので、クーラーがなくても快適に過ごせる場所。とてもいい雰囲気のお店でした。
さんざん食べて、さんざん飲んで。最後にみんなで写真を撮ろう!! と、店内のフォトスポットで写真を撮ってもらい・・・、と、ここまでは普通の展開。
その後、お会計をしようと店員を呼んだところ、「お客様、お会計はすでに済んでおります」と。
「ええっ?」と聞いてみたら、なんと・・・。
「あちらの奥にいらっしゃるお客様がお誕生日でして、当店にいらっしゃるすべてのお客様のお会計をお済ませでいらっしゃいます」って。
これ。実は「インドネシア、あるある」の現場です・・・。
インドネシアの富裕層、とまらない経済成長
インドネシアの富裕層の実態をめぐっては、今までこんな記事をブログで書いてきました。
まずは「概論」として、公開されているデータにもとづき、インドネシアの切実な年収格差と財産格差をご紹介したのが、こちら。
そうした環境の中で、「日本の物価って、ジャカルタより安くなったね・・・」なんて声も出て。
ジャカルタのショッピングモールに行けば、子供向けのおもちゃに「5万円」もの価格がついていたり。
また、豊かな社会になったことを反映して中間層も拡大。「ペットを飼う」という動きもますます拡大していることをご紹介してきました。
日本では想像ができないくらいの格差社会
もちろん、インドネシアの全てがこうだというわけではありません。お金に困っている人はたくさんいますし、「日本に行きたい!」と思いつつもお金がなくて、一生懸命に勉強しながら奨学金のチャンスを探っている人たちもたくさんいて。
でも、一方で富裕な人たちも確実にいて。先日インドネシアの富裕層の方としゃべっていた時、「あ、そういえば・・・」ということで質問されたことがあります。
「先日うちの娘が日本に旅行へ行ったんだけど、すっごいおいしい寿司屋があったみたいなんだよ」って。「どこですか?」と聞くと「銀座にあるって娘は言うんだ」と。
「娘がさ、あまりにもおいしいから今度お父さんを連れていきたいって言うんだけど、どんな店なんだい?」と聞かれました。このお店、正解を言うとミシュランの星をもつ世界の名店「すきやばし次郎」でした。
「娘によれば、1人あたり5万円くらいするみたいだね。今度行ってみたいと思ってるんだけど、どんな特徴があるの?」って。インドネシアの富裕層からすると、このあたりはもう普通なのです。
「持てるものが施す」というのが当たり前
もっとも「ご馳走しまくり、返礼は不要!」というのはインドネシアでは超富裕層に限った文化ではありません。「豊かな人が、そうでない人たちの分まで負担する」というのは、ある意味で「当たり前」という風潮があります。
これは、イスラムの教えの中にある「喜捨」という文化とも通じるところがあるのかなと。思い返せば私自身もまた、インドネシアの祖母からは次のようなことをよく言われてきました。
「人から食事をご馳走になってはダメ。できるだけ多くの人にご馳走してさしあげられるだけの人間になりなさい」 |
日本の風習からすると「割り勘を!」と申し出たくなるでしょうが、人によっては寂しさを感じる人もいるでしょう。お互いがお互いを気づかって、お互いがお互いを助け合って生きていく。そういう仲良し同士じゃなかったんだっけ? と。仲間なんだから金のことは気にするなって。そういう風土があることは事実です。
逆に言えば、ご馳走したい人はどんどんご馳走する。でもそれに返礼をしなかったからと言って立腹することはない。だってご馳走することが喜びなんだから・・・という理屈。だから、インドネシアでは誰かにおごってあげてもお礼を言われないことがあります。でもそれは普通なのです。
余談になりますが、きっとそれゆえなんですよね、お金持ちがどんどんお金持ちになっていくのは。
インドネシアが多様であるということの本当の意味
というわけで、今回はあまり知られることのない「インドネシアの富裕層のライフスタイル」の一側面をご紹介しました。
繰り返しになりますが、インドネシアは格差の大きい社会。だから、付き合う層を変えてみると、また違ったインドネシアが見えてきます。たまにジャカルタに赴任したばかりの駐在員が「ジャカルタって英語のできる人が多いですね」と言いますが、それはそういう人たちとしか交流していないからです。
一方で「インドネシアは、みんな貧しい中で頑張っているよね」という人は、インドネシアの富裕層との交流がないという可能性があります。この2つの見方。どちらが間違っていて、どちらが正解というわけではありません。なぜならインドネシアは格差社会。両方とも正解なのです。
私が見聞する中でも、貧しさの中で涙の出るような話があったりもしますし、かたや近所にはフェラーリを40台も所有する家族があったりと・・・。格差においても多様性のあるインドネシア。今回はその一側面をご紹介してみました。
こちらの記事も、ぜひどうぞ。