「日本型のオレオレ詐欺が、だんだんアメリカでも広がりを見せてきた」とのニュースを見ました。英語では、Grandparent scam とか、Emergency scam と呼ばれているようですが、インドネシアでも一部で同様の手口が始まっているとの話を聞いています。
実例も聞いたのですが、インドネシアのケースは、まだまだ騙す側のレベルはお粗末のようです。しかし日本のようなプロ級の手口になっていくのも時間の問題かもしれません。被害が拡大しないことを祈るばかりです。
目次
インドネシアの黒魔術詐欺「ATM引き出し」まで!
しかしインドネシアの場合、「オレオレ詐欺」を超える「黒魔術ATM引き出し詐欺」というのも話題になっています。
通行人に催眠術をかけて、ATMに誘導して現金を引き出させ、お金を受け取ってから放置する・・・という、実に信じがたいテクニックです。
しかも、現金を引き出した本人も記憶にないようなのです。これは、本当なんでしょうかねー。「本人が引き出してお金を渡す」だんて、なかなか信じがたい話です。
インドネシアの警察も注目する黒魔術による詐欺事件
しかしこの「黒魔術による詐欺」は、インドネシアの警察もまじめに取り扱っているというのが驚きです。
ジャカルタにある「在インドネシア日本大使館」は、ウェブサイトで次のような文を発表しています。
2010年3月に開催された海外邦人安全対策連絡協議会において、ジャカルタ警視庁より最新のインドネシア及びジャカルタの治安情勢及び在留邦人の安全対策について情報提供がされました。その際に、提供された資料のうち、ジャカルタに安全に暮らすために役立つ情報を抜粋して、当館において訳しましたので、適宜ご活用いただければ幸いです。
ジャカルタ警視庁がとりまとめた「安全対策」で、しかも日本大使館向けに提供されたものです。そんな真面目なレポートの中に、以下のような記述を見つけました。驚きです!
主な手口は以下のとおり。
ATMから引き出し直後の者や、ショッピングセンターの買い物客の肩を触れ、黒魔術により催眠させることもある。
わざわざ項目にあげて解説をしています。ホントにびっくりです・・・。
黒魔術はインドネシアの刑法改正の論議にも!
ちなみにインドネシアの国会では、ちょうど今、刑法改正が論議されていますが、その中で黒魔術の扱いをどうするかが真剣に議論されているようです。
インドネシア刑法改正案の第293条に「黒魔術の禁止」規定が
法務人権省(刑法改正案策定チーム)が2012年末に国会に上程したもので、2013年4月から刑法改正案としての審議が行われています。その中の第293条で、なんと黒魔術を禁じる内容があるというのです。
報道によれば、
・超能力を持つと主張し、黒魔術を使うサービスを提供する者
・超能力によって殺したり、病気にさせたりする行為
について、最長で禁錮5年、罰金としては金額未定ではあるもの最高レベルの金額帯を想定しているのだそうです。
「こんなことをまじめに議論するのか!」とびっくりな内容ですが、大手政党グリンドラ党幹部のプルマディさんは「私は超能力をもっている」と名乗るなど、さらなるびっくり展開が続いています。
黒魔術を禁じる規定についてインドネシア国会の議論の内容は?
議論の中では「黒魔術の存在を科学的に証明して、犯罪として立件することは不可能」との批判もあるようです(ある意味では当然でしょうねぇ・・・)。
またインドネシアで汚職問題を専門に扱う捜査機関「汚職撲滅委員会(KPK)」の元幹部であるチャンドラ・ハムザさんは、「黒魔術を使って人殺しを代行するといった宣伝をした場合などが想定」と、広告規定に重点があるため、黒魔術の存在がどうのこうのと議論する必要はないとの立場を示しているのだとか。
インドネシアの最近のオレオレ詐欺の事例!黒魔術は?
なお「在デンパサール日本国総領事館」は、2012年6月4日付の発表で、オレオレ詐欺に関する注意喚起を行っています。5つの事例が取り上げられているのですが、インドネシアのオレオレ詐欺の手口がわかる内容になっているので紹介します。
(1) 警察官を名乗る者からインドネシア語で電話があり、「子どもが無免許運転で事故を起こし、所持品を検査したところ麻薬が発見された」として、示談のための送金を要求。
(2) 子供を学校に通わせている母親に、学校の教員を名乗る者からインドネシア語で電話があり、「子供が学校で怪我をした」と連絡があり、その後、医師を名乗る人物に代わり、「医療機材が必要なためすぐに現金を振り込むように」との要求。
(3) 外国にいる家族の事故等を名目にして送金を要求。
(4) インターネット上で知り合った人物から謝礼を払うので現金受け取りの代理人になって欲しい等の依頼を受け、事前の手数料などの名目で送金を要求。
(5) 個人売買において入金時に銀行員を装った第三者が仲介し、ATM で振り込み方法を指示する手口。(指示に従って ATM を操作すると本人が気づかないうちに多額の現金が振り込まれてしまう手口)
黒魔術に関する記述はありませんが、全体的には日本の基本的な手口と似通っているところもありそうです。今後だんだんと複雑なストーリーによる詐欺事例も出てくるのかもしれません。
【参考】黒魔術やインドネシアのミステリアスな世界に興味のある方へ
今回は「黒魔術」を扱いましたが、インドネシアでは他にも白魔術や占いなど、ミステリアスな世界の宝庫とも言えます。関連の書籍はたくさんあるはずですが、もし興味のある方は、こちらをオススメします。
書籍「現代インドネシアを知るための60章」は、合計60の項目からインドネシアの魅力がまとめられている本ですが、その第29章『民間信仰──もうひとつの世界』は要チェックです。
数ページしかないですが、きっとインドネシアのミステリアスな世界が、もっともっと知りたくなってくるに違いありません。
こちらの記事も、ぜひどうぞ。