インドネシアはイスラム教徒が圧倒的な多数を占める国です。世界で最も「イスラム人口」が多い国がインドネシアです。
イスラムといえば「土葬」ですが、そんなインドネシアでも「火葬」の文化があります。しかし少数派ゆえに、バリ島を除けば、実態調査もほとんどされていないのが実情です。
今回「インドネシアに現存する火葬場の予察調査」(Preliminary investigation of Active Crematoriums in Indonesia) という「報告」(レポート)を書きました。学会誌に掲載されたので、以下に紹介させていただきます。
インドネシアに現存する火葬場を富山大学の遠山和大先生と共同調査
今回のレポートは、火葬文化の研究を行う学会「火葬研」の年報『火葬研究』(第24号:2020年11月発行)に掲載されました。富山大学の遠山和大先生との共同で調査したものです。
具体的には、インドネシアに火葬場がどれくらい存在するのかを調べ、いくつかのタイプへの類型化を試みました。
野焼きのような原始的形態の火葬場はカウントしていませんが、メインとなる現役の火葬場について調べたところ、インドネシア全土で48ヶ所あることがわかりました。今後少しずつ、その実態を調べていきたいと考えています。
なおこれは、昨年発表した論文「東ジャワ・マランの火葬場 – イスラム圏の華人社会における火葬文化」(Crematorium in Malang, East Java – Cremation culture in Chinese society in the Islamic area)に続く、第2弾となります。
昨年の論文の詳細は以下の通りです。
共同発表とはいえ、私は単に名前を連ねているだけで何の貢献もしていない存在ですが・・・、でもこうしてインドネシアの火葬文化が共有されるだけでも、私としてはとても嬉しいです!
インドネシアの火葬文化は、もっと調査されるべき
冒頭に記したとおり、インドネシアの人口の87.2%はイスラム教徒です。イスラムの場合は「火葬」ではなく「土葬」が選択されます。
土葬が圧倒的なので、火葬は少数派。当然のことながら、その実態調査もあまり行われていないのが実情です。取り上げられるとしたら、バリ島の火葬文化が「観光」の観点から注目されるくらいでしょうか。
しかし一方で、キリスト教徒やヒンドゥー教徒、仏教徒などの火葬文化圏の人々が存在することも事実。火葬の文化や歴史は確実にあり、調査をすれば面白い事実もきっと見つかるだろうと考えています。
本当は今年の3月に、ジャカルタ、スラバヤ、マランの火葬場を追加調査する予定でしたが、コロナで延期に。この分野は非常に面白い領域なので、またコロナがあけた後に再チャレンジしたいな・・・と思います。
なお上の写真は、インドネシア東ジャワのマランにある火葬場です。大自然に囲まれた風光明媚な空間が特徴的です。
火葬に関する調査研究を行う学会「火葬研」とは?
参考までに、今回の学会「火葬研」について紹介しておきます。
「火葬研」は、広く「火葬」全般に関する調査研究を行う団体です。今から20年前の1999年、東京電機大学に設立された「火葬研究会」が前身です。
その後2009年10月には社団法人化されて、現在の「一般社団法人 火葬研」(ASSOCIATION OF RESEARCH INITIATIVES FOR CREMATION, FUNERAL AND CEMETERY STUDIES)という名前になりました。
というわけで、引き続きインドネシアの火葬文化を追求してまいります。また面白い事実などが見つかり次第、ブログで共有します。